視察②
なんと今回の視察にアルスが同行することになったのには、セシルが絡んでいた。
アルスが今回の視察に同行するように進言したのだ。
セシルに推薦理由を聞いてみた。
「セシル、なぜ僕を父様に推薦したの?」
するとセシルは真剣な眼差しで語り始めた。
「はい、アルス様はとても聡明で、既に貴族の子息が学ぶべきことの全てを習得していらっしゃいます。アルス様は10歳にしてそれを成し遂げられています。このような奇才は他家には存在しません。サーナス家の宝であると勉強指導をさせて頂いた立場から保証致します!!」
セシルの熱弁にアルスは少し恥ずかしくなった。
「アルスが優秀である事はセシルから何度も聞かされているよ。正直、今回の水不足問題は私が出向いただけでどうこうできる問題ではない。そこで、アルスの力を借りるのはどうかと提案してくれたのがセシルだったんだよ。」
アルスは期待されていることにとても嬉しくなった。
アルスはこの世界を発展させるためにこの異世界に転生している。まだ地球の知識を検索できるスキルを使用することはできないが、全力を尽くそうと思った。
「父様、セシル!僕、力になれるように頑張るよ!」
アルスは意気込んだ。
サノスとセシルはアルスの姿を見てとても頼もしく感じた。
「期待しているぞ、アルス!」
「アルス様なら大丈夫です。」
サノスとセシルの言葉に心強さを感じたアルス。
そして今回の視察がこの世界で最初のアルスの大きな功績の一つとなる。
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馬車はあれから1時間ほど街道を進んだ。
するとようやく馬車からも農業都市カマが見えるようになってきた。
約5メートルの街壁が街を囲んでいる。街は8キロ四方で地方都市としては大きい部類に入る。領都スパムは10メートルの街壁で、街の規模は15キロ四方でかなり大きい。
農業都市の為、高層建築は少なく、平屋で横に大きい市場のような建物が多い。また、3割の作物を生産しているため、多くの人が行き来する街となっており活気があると聞いていた。
しかし、今は行き来する人はあまり見かけない状況となっていた。水不足の影響が目に見えてわかった。
カマの街に入る為の門にある検問所まで来た。検問所の兵士に止められる。
「サーナス侯爵家当主サノス様とご子息アルス様が乗っておられる。通ってもよろしいかな?」
セシルは兵士に話しかけ、貴族の証を見せた。
「ご領主様一行ですね。どうぞお通りください。」
事前に通告していた為か兵士はそう言うと門を通してくれた。
検問所は大きい都市や国境に配置されている。
王族や貴族は証を見せれば検問を受けなくて良いが、それ以外の人は全員検問を受けることで治安を維持している。
街の中に入ると石畳の大通りが敷かれていた。しかし、水不足の影響だろうか、人がほとんど歩いていなかった。
「アルス、本来この通りには多くの露店が普段はいるんだが、この有様だ。深刻さが分かるだろ。」
サノスが深刻そうにアルスに話しかけた。
「はい、これでは廃墟同然です。急ぎ対策を打たねば取り返しのつかないことになります。」
「あぁ、そうだ。まずはこの街の役所に行く。そこにこの街の代官がいる。セシル、すぐ役所に向かってくれ。状況をより把握するぞ。」
「かしこまりました。急ぎます。」
サノスはセシルに急ぐよう指示し、役所へ向かった。
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