ユース商会

アルスはノスタ公爵家の騎士専用の訓練所で訓練をしている。なぜこんな事をしているのかと言うとなかなか商人が来ないからだ。

時間を潰すため訓練に励んでいた。


(一体、何時になったら来るんだよ...)


アルスはひたすら素振りを続ける。

そして、商人が訪ねてきたのは夕方であった。


「アルス様、ユース商会の者が来ております。」


メイドが伝えに来てくれた。


「ありがとう。ユース商会ね。ユース商会..ユース商会......ユ、ユース商会だって!?」


アルスはユース商会の名に驚いた。

何故ならユース商会はマリアナ王国一の大商会であり、知らない人はいないほどだ。

他国とのパイプも持っており、国からも重要視されている。


「旦那様は政務で忙しいため、サイル様とリエラ様に対応していただいています。」


「わかった、すぐ向かうよ。」


訪ねてきたのはまさかのユース商会であった。

アルスは急いで応接室に向かった。


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応接室に向かうと扉の前にはボディガードらしき男2人が立っていた。かなり鍛えられてるのが分かる。かなり厳重な警備だ。

アルスが近づくと男2人がこちらをじっと見てくる。


「あっ、あの入ってもいいですか?」


アルスは尋ねた。

すると、男たちは尋ねると無言で頷いた。

どうやら仕事中の他人との会話は禁止されているようだ。


確認が取れたためアルスはノックをして、応接室に入った。

応接室にはサイルとリエラ、その対面にロフと同い歳くらいの赤髪イケメンの男性とリエラより少し歳上に見える赤髪の美少女が座っていた。


「アルスくん、こっちにおいで。挨拶を。」


サイルに呼ばれ、アルスはサイルとリエラに挟まれる形で座った。話のメインがアルスであるため、サイルが気遣ってくれた。


「初めまして、アルス・フォン・サーナスです。今はショッピングモール建設の件でノスタ公爵家にお世話になっています。」


アルスが挨拶すると赤髪の男性も挨拶をしてくれた。


「初めまして、ユース商会会長のシリル・ユースです。今日はこのような時間に伺うことになり申し訳ありません。」


シリルは頭を下げた。隣に座る美少女もだ。


「実は商会の荷馬車が魔物に襲われたとの連絡がありまして、情報収集をしていたところこのような時間になってしまいました。」


「そうでしたか。被害はどうでしたか?」


アルスは心配になりシリルに被害状況を尋ねた。


「心配頂きありがとうございます。幸い人的被害はなく済みました。アルス様は気配りのできる方なのですね。」


シリルはアルスの優しさに感心した。


「すいません、このような話をお聞かせして...あぁ、私の娘も紹介します。...ほら、挨拶をしなさい。」


シリルに言われ、赤髪の美少女が席を立つ。

彼女の動くととても甘いいい匂いがしてきた。香水をつけているのだろう。


「初めまして、アルス様。シリルの娘、アンナと申します。18歳です。よろしくお願いいたします。」


アンナはとても丁寧に挨拶をしてくれた。商会の娘だからかとてもしっかりしているとアルスは感じた。そしてアンナの美しさに釘付けになった。


すると、隣から鋭い視線を感じる。

恐る恐る隣を向くと、リエラが睨みつけてきていた。


(こ、怖い...)


あまりの怖さにアルスは震えた。


「そ、そう言えば僕に用があると聞いているのですが、どういった話でしょう?」


アルスは話を変えた。


「実はアルス様と商談がしたく参ったのです。」


「えっ、商談ですか?」


「はい。昨日の"焼きそば"の商談をさせて頂きたいのです。」


シリルの目的は焼きそばについてだった。

どうやら昨日焼きそばを食べてとても感動したらしい。


「私たちユース商会は各地で飲食店の経営をやっております。ぜひそこで焼きそばを販売できないかと考えております。焼きそばには可能性を感じました!きっと莫大な利益を得ることができると思います!」


シリルは次第に熱くなっていく。本気のようだ。


アルスは考えた。

焼きそばが大ヒットすれば多くの資金を獲得でき、この世界の発展に注ぎ込むことが出来る。これはアルスの使命の実現の力になる。

断る理由はなかった。


「構いませんよ。ぜひ販売して下さい。多くの人に食べてもらえるのはとても嬉しいので!」


「ありがとうございます。必ず大人気になると思います!」


シリルは胸を張って言う。さすが国1番の商会である。

店だけでなく販路も沢山あるのであろう。

こうして、ユース商会での焼きそばの販売が決まった。


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