第18話 [無生物テイマー、ドラゴンと戦う]
ドラゴンの咆哮でニヤはやっと目を覚ましたが、ピンチなのは変わらない。
ドラゴンは一度狙った対象は死ぬまで追い続けるという厄介な性質を持っているので、街に帰っても危険を持ち帰ることになってしまう。
いけるか……? さっき手に入れたスキルでコイツを倒せるだろうか……。いや、大丈夫だ。
「やるしかない、か」
「んー……なんか大変なことになってる」
「ちょっとピンチかもしれねぇ」
「えぇー? 山賊たちに復讐するまで死ねないよー」
「じゃあしっかりつかまっとけよ!」
強靭な前脚を振り下ろしてくるドラゴン。その巨体から繰り出されるものだというのに速い攻撃だ。
なんとかそれを躱し、ドラゴンの目にめがけて【溶解液】を発射。その後に【
『グルォオオオオ!!!』
ジタバタと暴れ回り始めたので、【跳躍】で高く飛び上がり、【風乗り】と【
脳天目掛けていつものこれを放つ。
「【
――ドガァァァァン!!!
まだ終わりじゃあない。
すぐにサクスムを解除して、鉄の棒を召喚する。思い切り振りかぶり、【
これによりドラゴンの骨が痺れ、一定時間動くことが不可能になる。
「まだだ……! 【
蔦で体を絡めて、指から鋼の糸を吐き、それを【糸編み】で強度を底上げする。手に入れた糸術によって蔦と同様にドラゴンを拘束する。
息を吐き、一瞬だけ休息をした。
「すごーい」
「はぁ……。疲れた」
まだこれは足止めに過ぎない。こっからドラゴンを討伐しなければならないのだ。
俺の技量でこの硬い鱗は切断できる自信はないので、ドラゴンが持っている〝逆鱗〟という弱点を探す必要がある。
「一旦鱗の隙間から……【
『グルルァアァ……!!!』
魔物に噛み付くのはちょっと気が引けたが背に腹は変えられない。鱗の隙間に歯を立てた犬歯を突き刺し毒を注入しておく。
あとは逆鱗探しだが、まぁ危険な作業になるだろう。鱗を一つ一つ叩いていき、柔らかい部分があったらそこを重点的に攻撃するといった具合だ。
少しでも動いて体に当たればそれなりの傷ができてしまうので、気をつけて行わなければ。
構造物内の空洞を探すかのように鱗を一つ一つ棒で叩いて回っている。
持って数分、最長10分といったところか。かなりの強度だが、ドラゴン相手じゃそんなに持たないだろう。だがまぁ、その間は安全だ。
……そう思っていたのは間違いだった。
『グォ、オ、オ、オ……!!!』
「地面が赤く……? ――まずいッ!!」
ドラゴンの頭は下を向かせていた。木々に炎を吐かれたりしたら困るからだ。木に放つ代わりに地面に放っていたのだ。
ドラゴンが放つ【豪火】。威力は土地を一瞬で焦土と化すレベルの炎。一瞬の見落としが命取りだった。
【跳躍】で避けようとするが、この距離じゃ肌が焦げ死ぬ。死にはしないかもしれないが戦闘不能なってしまう。
「ガチでやばいから働け! 立派な役職持ってんだろ!?」
「にひ、わたしの出番ねー。呪いも無くなったから自由に使える……」
ニヤはやっと重い腰を上げ、人差し指をドラゴンに指して呟いた。
「――【
一瞬、世界が止まったかと思うとぐにゃりと視界が歪んだ。そして、新しい世界が見えてきた。
ドラゴンが放ったはずの炎や、それによって生じた森林火災は無く、何もしていないドラゴンがそこにはいた。
ニヤが使ったスキル【
鑑定で見たところ、このスキルを使用したら目の前で生じた出来事を全て偽物の現象にすることができ、自分にとって都合のいい世界に作り上げることができるという、ぶっ壊れのスキルだった。
「ゔぅ……頭いたい……。ご主人さまぁ、さっさと終わらせよー?」
「そうしたいのは俺も一緒だっつーの」
「スキル……もう一つ都合よくしたことある。これからご主人さまが攻撃する鱗が弱点になるっていうことにした……。あとはよろし……ぐぅ」
「寝やがった……。さっきまでダメイドだったが、メチャクチャありがてぇ」
これから攻撃するのが弱点になるのならば、全身全霊を込めた、俺が今出せる最高火力の一撃を放とう。
「【鋼糸吐き】。【
吐いた鋼の糸で作った鋼の槍。そこに【強靭化】を施して
もう半分を槍を突き刺す時使い、逆鱗と接触すると同時に【
「喰らえ、天性のストーカー野郎!!!」
『グォォオオオォォ!!!!』
ドラゴンの瞳から光は消え、ズシィンと音を立てて地に伏せる。
「やっ……たか……。あ゛ーもう無理……」
俺も体力の限界で地面に倒れ、そのまま小一時間動けなくなるのであった。
△ △ △
《獲得スキル》
【
(ドラゴン)
▽ ▽ ▽
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