第25話 [無生物テイマー、ボスと暗黒騎士に出会う]

 無事に二人とも山賊のメンバーを倒せたらしいが……暗殺者の様子が少しおかしいような気がする。

 ずっともがき苦しんで叫び続け、ニヤに助けを求めている。


「……ニヤ、何したんだ?」

「んー? 復讐」

「うーん……。詳細は聞かないでおこう」


 俺とエリサが倒した他3人にもニヤは何らかのことをした。すると同様にもがき苦しみ初める。

 怖いからさっさとこいつらの役職をテイムし、高速をすることにした。


 △ △ △


 《獲得役職》


銃士ガンナー

付与士エンチャンター

暗殺者アサシン


 《獲得スキル》


狙撃スナイプ】【銃術】【弾丸生成クリエイト・バレット

(銃士)


武器付与ウェポン・エンチャント】【身体付与フィジカル・エンチャント

(付与士)


【気配隠蔽】【暗器使い】

(暗殺者)


 ▽ ▽ ▽


 やはりテイマーのはテイムできなかった。これで普通に魔物もテイムできるかと思ったが、そうとはいかないらしい。

 俺に何か問題があるのだろうか?


「急ぐわよっ。逃げ出そうとしてる可能性もあるし!」

「そうだな」

「はーい」


 山賊の本拠地に向かうとそこには、酒を浴びるように飲む不衛生な髪をしている男の姿があった。

 後ろには闇夜に紛れる黒騎士が佇んでいる。あれが調理師がゲロった『切り札』だろう。詳細は知らなかったらしいが、異端な力を感じる。


「よぉ〜早かったじゃあねェか……」

「……なんで逃げなかったんだ」

「本拠地バレちゃあもう戦うしかねぇ。しかも3人って報告なら、勝てると思ったからよォ〜。ヒック」


 随分な自信だ。けど数はあっちの方が多いのは確かだろう。〝数〟か〝質〟、どちらが勝つか、だな。


「ってオイオイ! そこにいんのルーメ家のだろ!? そーだろ!!?」

「……えぇ、ワタクシはルーメ家の者よ。何か文句でもあるのかしら」

「くひひっ、コイツァ傑作だァ! テメェの相手はコイツにやらせよォ!!!」


 ガチャガチャと音を立てて、後ろにいた黒い騎士が動き出す。エリサは嫌な予感を感じ取っているらしく、汗が吹き出ていた。

 リーダーは大笑いしながら説明をしだす。


「この真っ黒な騎士はなァ……テメェんとこの長女なんだぜ!? フォルテ・ルーメ! 聖騎士の血族の中で生まれた『暗黒騎士アン・パラディン深淵アビス』という役職ッ! 迫害されていたが努力で登りつめ最高地位を獲得。同時に殉職、そして俺の手駒となったァ!」

「フォルテ、お姉様……?」

「そーだぜ!!? お前の姉に当たるやつだなァ! 今じゃスキル名をボソボソ呟くだけの傀儡人形だがな!!」


 なんとなく、察していた。あの黒い騎士がエリサと似た何かを持っていると、直感で感じ取っていた。これは少し、エリサにダメージが入ってしまったか?

 そう思ってエリサを横で見ると……。


「ふー……ふー……!!!」


 激怒の表情をしていた。こめかみに血管を浮かべ、瞳孔が開いており、息が荒くなっている。

 悲壮感にくれることはなく、姉を悪に利用する山賊を許せない感情が勝っているみたいだった。


「許せねぇか? 許せねぇよなァ! 俺もなぁ……お前たち騎士が死ぬほど許せねぇんだ! 無罪の両親を騎士に殺され、弟までも無関係なのに殺されたァ! お前らも俺の手駒としてやるよ。そんで始めるのさ……をッ!!!」


 ――これは、各々の復讐劇だ。


 兄が殺され鎖に繋がれた日々からの復讐。

 一人の少女の主人としての復讐。

 親愛なる長女を悪事に使うことへの復讐。

 騎士への蓄積された恨みによる復讐。


 さぁ……鬼を心に宿した四人から織り成す、復讐劇の幕開けだ。

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