第26話 [無生物テイマー、死霊術師と戦う]
一番早く動いたのはエリサだった。
感情が篭った剣はいつもの数倍もの威力を発揮してギルに襲いかかる。しかし暗黒騎士が目の前に立ちはだかり、エリサの剣を漆黒の剣で受け止めた。
「っ! フォルテお姉様やめてよっ!!」
『…………』
騎士は何も答えず、ただギルの命令を遂行している人形のようにしか見えない。
この騎士の『
「エリサ、お前の姉ちゃん? はお前しか止められねぇと思う。悪いがそっちは任せていいか?」
「ふ、ふふ……任せなさい。ワタクシはお姉様を目指して今の今まで努力をし続けてきたのよ。ここで勝って、お姉様を超えるわっ!!!」
「了解、んじゃあこっちは任せとけ。きっちりきっかり復讐を果たすからな!」
「ん、やるよ、ご主人さま……!」
背中は託した。同時に託された。勝たねば。
リーダーのギルと向き合い、予め色々な物を召喚させておく。相変わらずニヤは背中に張り付いているが、そちらの方が吉かもしれない。
「ニヤ、やれるか?」
「んー……スキルの連発はきつい。最後の一撃で戦闘不能になるつもりだからよろ」
「オッケーだ。じゃあ隙ができたら合図するから、それまで背中にちゃんと捕まっとけよ」
「にひ、りょーかい」
今日の日のために山ほど魔物や魔獣からスキルを奪ってきた。因果を改変する味方もいる。だが、勝率は決して高いわけではない。
俺と同様に、相手だって手札を隠している。それら全てを凌駕するほど力は、まだ俺たちは手にしていないからだ。
「テイマー……? いや、無生物のテイマーだと? くひ、楽しめそうだなぁ。【
『ヴァァ……』
『イダイ……イダイ……』
『助、ケ……』
ギルがスキルを使用すると、地面から人が生えてきた。腐乱した肉体や爛れ落ちる眼球、剥き出しの骨や飛び出す内蔵は見るに耐えないものだった。
「随分と悪趣味なスキルだなぁ。スキルが性格に反映されてることがよくわかる。性根腐ってる面だし」
「クヒヒッ! ガキにしては良い言葉のナイフを持ってらァ。悪趣味で結構、強けりゃいいんだよ強けりゃ。
人の死体を操れる……それは動作だけでなく、スキルまで使えるのさァ! だから実質、俺ぁ何十もの役職を持ってんだぜェ!!?」
奇遇だな、俺も役職はたくさん持ってるんだ。
そうは言わず、口を動かさなかった。なるべく手の内を明かすことはよしておきたいからな。
……同じ土俵、か。どちらがあらゆる役職を自分のもののように扱えるかが勝ちへの道筋だ。
「行けェ! 俺の
ギルの声かけにより、死体たちは一斉に俺たちに襲いかかる。地面に手を当て、俺もスキルを発動させる。
「【
地面から蔦を生やして死体たちの動きを静止させる。同時に【跳躍】を上ではなく前に使い、一瞬でギルのもとに飛ぶ。
剣を召喚して首を斬ろうとしたところ、地面にいる死体に向かって命令をしていた。
「【シールド】」
――ガギィィンッ!
「まぁそうだよな」
「理解してんなら対策しろよなァ!」
「対策あるんだよなぁ!」
半透明なバリアに剣が弾かれるが、俺は次の手を打つ。【竜鱗纏い】を右腕に使用して思い切りバリアに向かってぶん殴る。パリンッという音を立て、それが崩壊する。
そのまま殴り抜けようとしたが、今度は巨大な尻尾が地面から生えて鞭のようにしなり、俺の腹に直撃した。
「ぐっ!!」
「惜しかったなァ」
【鋼糸吐き】で体制を整え、【
ギルの方を見るとそこには、血肉が垂れるドラゴンの姿があった。
「おぉっと、言ってなかったか? 魔物の死体だって俺の駒にできるんだぜェ」
「ケホッ、そうかよ。じゃあ俺も自慢してやんよ。【
あの時テイムした巨大な丸い岩……だけでなく、大中小の様々な岩を召喚する。
それに命令をすると、岩はゴロゴロと動いて人の形を模る。岩の
本来存在するゴーレムは体のどこかに弱点となる核がある。だが俺のゴーレムには核がない。どれだけ岩が破壊されようと、分裂したものは使役下にあるので意味がない。
「デカイものにはデカイものをぶつける。合理的だろ?」
「それはどーかと思うご主人さま」
「はぁ? なんでだよ」
「いや、別にいーけど……」
納得いかない様子の背中のニヤ。そのニヤの顔に納得のいかない俺。
取り敢えず後からじっくりニヤと話すとし、今は自作ゴーレムを腐乱ドラゴンにぶつけた。
『グ、ガガガァア……!!!』
『ギギギ……ゴゴゴゴ!!!』
二つの存在が攻撃し合う度、衝撃波が飛んできて鼓膜が破れそうになるが、無視してギルに直行。
姿勢を低くして全身を捻り、会心の一撃を脚で炸裂させる。そっくりそのまま、ギルの腹に一撃決め込むことができた。
「ゴハッ! ッ、バケモノかよクソガキが!」
「ハッ! それはお互い様だろうがよ!」
まだ戦いは始まったばかりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます