第32話 [無生物テイマー、終止符をつける]
なんとか山賊どもを倒し、切り札も全て対処してようやく決着がついた。
「うわぁああああんアレンくんんんん!!!!」
「落ち着けってソフィ……。もう大丈夫だから」
泣き噦って俺に抱きつくソフィをなだめながら、周囲の様子を確認した。今現在は王都から大勢の騎士が来ており、状況見聞が二人にされている。
ちなみに俺はソフィの隠蔽スキルで隠されている。ソフィ曰く「恥ずかしいから」とのこと。家でやってほしいものだ。
「うん? そういえばアレンくんがいないな。おーいアレンくーん?」
現場に来ていたエリサの姉もとい、純白の羽のギルドマスターのステラさんが俺を呼んでいた。
ソフィを引き離してスキルを解いてもらったあと、自分でゆっくりと歩いてそちらに向かう。足がひんまがったりしていたが、ソフィにかかればお茶の子さいさい。すぐに治してもらった。
「あ、いたいた。無事だったかいアレンくん」
「えぇ、まぁなんとかっすけどね」
「まさかここまでの力を隠し持っていたとは……。はぁ、しかもお姉様が使われていたなんてね。少し見誤ってしまった」
「……あ、そうだ。ステラさんとエリサ、ちょっと山賊のボスと暗黒騎士さんのとこまで行っていいですか?」
やり残したことがまだあった。
エリサとステラさんだけを呼び、山賊のボスであるギルの元に向かった。
「どうしたのよアレン」
「……二人にはちゃんと許可が必要だと思ってたからですよ。
俺はテイマーだけれど、無生物をテイムすることができる。それは物質にとどまらず、スキルや役職さえもできてしまいます。二人の姉に当たるこの人の役職は勝手にテイムするのはどうかと思って、聞きたかったんすよ」
以前に、エリサは逆に信用できないと心の中で言ったことがある。けれど、信用してみたくもなってしまった。
しかも、今後この暗黒騎士のスキルを使えば二人に見られるのは必然的だ。なぜ使えるのかと問い詰められる未来が目に見えるため、もうバラしたほうがいいと考えたのだ。
「成る程、だから君は混じっているんだねぇ」
「や、役職をテイム!? とんでもないわねアレン……」
「……まぁ、私は構わないよ。お姉様だってそれを望んでいるだろうしね」
「わ、ワタクシも良いわよ! お姉様の力は、然るべき人に使ってほしいの」
二人から許可が降りたので、俺は横たわる暗黒騎士に手をかざす。そして一言、呟いた。
「……【
《フォルテ・ルーメから『役職:
「……? な、なんだ」
脳内に響いてくるいつものアナウンスがブツブツと途切れ始める。淡白ないつものアナウンスだのに、今回は何かおかしい。
そう思っていると、聞きなれない声が響いてくる。
《…………妹、たち、ヲ――お願い――しま、す――…………》
「…………。はぁ……呪いかけてきやがったな」
紛れもなく、この役職の持ち主の仕業だろう。わざわざ縛りつけるような呪いをかけなくてもそうするつもりだったぞ、フォルテとやら。
ため息を吐いたあと、空に想いを馳せた。
だが、まだ終わりではない。次は気絶状態のギルの前に立ち、手をかざす。もう一度目を開けた時、二度とこんな被害を出さないためにも、俺が回収する必要がある。
もう二度と、目が覚めなくても構わないがな。
「【
《ギルから『役職:
「よし、今度は普つ――」
《『
…………。
あれ、なんか変なのが獲得されたんだが。タナトス……もしかしてソフィが倒したあのやばそうなやつなのか……? それを自由に使えるようになったってことか??
うーん……やばいものを手駒にしてしまった感があるが、まぁ切り札として取っておこう。
「はぁー……。やっと終わったんだな」
こうして、俺たちの復讐劇には幕が下された。
「ん、ご主人さま」
「アレンくん」
ニヤとソフィに呼ばれる。
「帰ろ」
「私たちのお家に、ね?」
「…………あぁ、そうだな。帰ろうか」
ずっと一人だった。虚しさが積もりに積もっていた。けれど今はもう違う。「ただいま」って言える家がある、人がいる。
帰ろう。
帰ってパーティーでもしよう。
そして、明日に備えてまた寝よう――。
[あとがき]
「役職、無生物テイマーです」 完。
と思ったんですけど、どうしましょうね?
実は3、4章程度くらいまでは考えてますけど、完結させたい欲もあるんですよねー。
まぁ「続けてほしい」っていう声がめちゃ多かったら続ける……かもね?
と、いう感じでね。一旦終わりということで、この作品を読んでいただいたり、感想を書いてくださった方々ありがとうございました!
海夏世もみじでした!また別の作品か、この作品の続きで会いましょう。
役職、無生物テイマーです 〜テイマーなのに魔物が使役できなかったが、物質やスキルなどの無生物がテイムできました〜 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1
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