第13話 [無生物テイマー、女の子をテイムする]
エリサと協力してなんとか明鏡草を手に入れ、泥魔棒を落とすスワンプツリーは簡単に討伐することができた。ついでに新スキルも獲得した。
あとはイータ崖の下を調査するだけのため、今度は二人で馬車に乗って移動をする。
「ねぇ、貴方なんの役職なの?」
「テイマーだ。少し変わってるけど」
「テイマーがあんな可笑しな動きするとは思えないのだけれど……」
姉の方が察しはいいか。わからないならわからないままで構わないだろう。こいつは純粋で真っ直ぐだ。だから逆に信用できない。
上からの命令で俺について話せと言われたらペラペラ話してしまうだろう。俺の能力は明らかに異端だし、公にバラすのはまだよくない気がするのだ。
エリサは翡翠色の目を細め、不服そうな表情を浮かべながら赤髪を揺らす。
「さて……あとは崖下の調査か。この調査は山賊の件が絡んでるのか?」
「ええ、そうなの。旅人や商人が襲われて金品が盗まれたり、人が誘拐されたりしてるのよ。だから早急に捕まえなければいけないの」
「だからといってなんの罪もない人を襲うのはどうかと思うぞ」
「うぐっ……ご、ごめんなさいって」
そうこうしているうちに崖下まで到着。
人の気配はないが、消している可能性もある。ここからは慎重に進もうとエリサに伝え、足を進める。
「調査っていっても、具体的には何をすればいいのかしら?」
「あたりに不自然な点が無いか、人の形跡があるか、誰がいたか、魔物や魔獣の様子はどうか……とかだろう」
「そうなのね! ありがとう、勉強になったわ!」
お礼や謝罪が言えるだけまだマシな人種なんだろう。
なぜ俺がこういった依頼について詳しいかというと、それはもちろん紅蓮の拳でアホほど依頼の用紙を作成したりしていたからだ。
閑話休題。
調査を進めていると、崖の壁に小さな洞窟があるのを発見した。人工物ではなさそうだが、そこを利用しているか、利用していたかもしれない。
「エリサ、行くぞ」
「わかったわ」
「【
人差し指にイグニを召喚し、暗い洞窟の内部に潜入する。
中は酒臭い。明らかにここで誰かが集団で生活していた匂いだ。
「もぬけの殻、ね」
「あぁ……」
机や椅子、コップなどがある。他にも誰をくくりつけていたのかわからない鎖や、血痕が残っている。
「ここらへんにはもういないのかしらね」
「ほんの少し前までいたのかもしれないな。……お、これは使えるかな」
地面に落ちていたものを拾い上げる。それは藍色の髪の毛で、山賊か捕まった人だと推測する。
俺はそれを【
「行こう。まだ近くにいるかもしれない」
俺たちは洞窟を出て、髪の毛が指す方角に歩き始める。
エリサは『なんで髪の毛で位置がわかるの?』とか『なんの力なの?』だとか質問責めだったが、躱して歩みを進める。
「あ、あれ!」
エリサが指差す先には、人が倒れていた。藍色の髪の毛を持つメイド服の少女だったが、これは……。
「手足首に鎖……山賊に捕まった子だろ。……少し暖かいが、駄目だな」
肩を揺すっても起きず、息もしていない。閉じている目を指で開け、
鑑定でもみた結果、この子――『ニヤ』は死亡しているとのこと。
「山賊が許せないわ。……けど、アレン、まだ少し暖かいってことはついさっきまで生きたたってことでしょう? じゃあもっと早くきていれば……。ワタクシがへんな勘違いをしていなかったら間に合っていたかも……!!」
「…………」
唇を噛んで拳を血が出んばかりに握りしめていた。ふぅ、と息を吐き、エリサに話しかける。
「エリサ、お前かさっきの団長は治癒系統のスキルを持っているか?」
「え、いや……持っていないわ……」
「じゃあどっちにしろ無理だったぞ。ここから街に戻るには相当な時間を要する。仮に生きていたこの子を保護したとて、連れて帰る途中に見殺しにすることになる。……だからまぁ、お前が気に病むことじゃねぇよ」
「そう、ね……。うん、ありがとうアレン」
「事実を述べたまでだ」
エリサ、お前の中で俺は良い人になりつつあるんだろう。だが俺は良い人を目指すつもりはない。なんせ今から、この子から奪うつもりだからだ。
使えるものは利用する。そんな人生しか知らないんでね。
「(……【
心の中でボソッと呟いてスキルを発動させた。
「――ケホッ、ケホッ!」
瞬間、息を大きく吸い込んで咳をした。
誰がした? 俺じゃない、エリサでもない……この、死体が……。
「え!? い、生き返ったの!!?」
「っ……!」
俺の能力は極力他言無用にするつもりだった。だが今この瞬間の出来事で、もっと気をつけるべきだと確信した。
死者を蘇らせることができてしまった……禁忌を犯してしまったからだ。
△ △ △
《獲得スキル》
【
(スワンプツリー)
《獲得者》
・ニヤ
▽ ▽ ▽
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