第14話 [無生物テイマー、お持ち帰りする]
調査は切り上げ、急いで街に戻って医療施設までこの少女を運んだ。
様々な検査をしてもらったが、特におかしな点は無し。強いて言うならば栄養失調状態だったことだけだ。
自分の頭の中では様々な考察が飛び交っているが、考えすぎて頭がペンで黒塗りにされたみたいに何も思いつかない。
椅子で待機しているとナースの方が声をかけてきた。
「彼女の容体は安定しており、健康的な食生活を続ければ大丈夫かと思われます。けれど、精神面での問題が発生するかもしれませんのでお気をつけください」
「わかりました」
「入院も可能ですが、如何されます?」
「うーん……。少し不明瞭な点があるのでうちのギルマスにも診てもらいます。なんで、一旦連れて帰らせてもらいます」
「了解致しました。お大事に」
スヤスヤと寝息を立てる藍色の髪をした少女。今まで見てきた中でかなりの美形だが、山賊達に傷つけられたりした痕跡は無いとのこと。
そこのところの謎は山賊達をとっ捕まえればわかる話だ。
エリサは彼女を含めた報告を上にするから、本格的に山賊退治が始まるだろう。捕まるのは時間の問題だろうが……俺も同行したい。
悪人は善良や人から搾取をするんだろう? なら逆に搾取されてもいいってことだ。それに、二度と罪を犯すことのできないできない体にしてやりたいのだ。
「……とりま、この子をどーすっかだなぁ……」
できれば山賊に捕まる前の元の生活に戻ってもらいたい。しかし、俺が関与して生き返ったということは、この子をテイムしてしまっているということ。
その時点で今後の人生に俺が強制的に関与してしまう。それは避けたい。ソフィならなんとかしてくれるだろうか。
積み重なる俺自身の謎と、向き合わなければいけない課題。それを抱え、背中では少女をおぶり、ギルドに足を向かわせた。
###
ギルドに戻り、この子をベッドで寝かせて数時間待っているとギルマスが帰って来た。
「アレンくんただいま!」
「お帰りソフィ」
「えへへ、誰か待ってるって嬉し〜……って、アレンくんが女の子連れ込んでる!?!?」
「言い方どうにかできねぇのか。保護したんだよ」
今日起こったことのを詳しくソフィに教えた。俺の役職については昨夜話していたので、そこからソフィは一つの説を推してくる。
「えっと、もしかしたら〝魂の殻〟が関係してるかも」
「魂の殻……。確か人間とかごく一部の魔物しか持ってないやつだったか?」
「そうそう! 魔獣や魔物は大抵魂を厳重に保護する殻はなく、膜で守ってる。だから死んだらだいたいすぐ消滅しちゃう。けど人間なら死後魂は抜けても殻は残る。
君の〝無生物に魂を吹き込む〟という説があっているなら、その殻に君が魂を吹き込み、彼女が蘇ったかもしれない」
「なるほど」
魂を注いでのテイム。有力な説だが、なぜ役職やスキルもテイムできるのか。それとこれとは全く別問題なのかもしれないが、取り敢えず腑に落ちた。
「ソフィは死者蘇生とかできるのか?」
「んー……できる。けど、進んでやろうとはしないかな」
「そりゃまたどうして」
「なんかね、一回死者蘇生した時に何かに背中を逆撫でされる感覚がしたんだ。それがトラウマでもうしなくなったの」
「ソフィにも怖いもんあんだな」
「失礼な〜! 私だって怖いものは怖いよっ! 今は、そうだなー、アレンくんがいなくなったら怖いよ」
「ッ、そ、そうかよ」
無自覚か? そんな恥ずかしいことを堂々と言えるなんて。……いや、まぁ久しぶりにできた友達なんだし、感覚が麻痺ってるのかもな。
なぜかこの室内の気温が上がった気がし、少し顔が熱くなる。
それが理由かわからないが、ベッドで寝ている子が少し唸り、ゆっくりと瞼を開け、桃色の眼を見せてきた。
「ん……ここ、は……?」
さて、事情聴取のお時間だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます