第12話 [無生物テイマー、純白の羽のギルマスと会う]

 死んだと思った。容赦無しのスキルを発動させた騎士。殺すことはないだろうよと思いながら、意識を沈ませていく。


 ……沈まない。


「あ?」


 目が開いたので。自分の体をペタペタと触って確認する。そこに傷はなかったが、目の前に見知らぬ人が立っていた。

 さっきまで戦っていた騎士と瓜二つの容姿をしていたが、右目に縦の傷があったり身長が190くらいありそうなほどでかかったりと、違う点が多々ある。


「ふぅ……駆けつけてみればこれか」

「ステラお姉様!? なんでここに?」


 ステラお姉様と呼ばれた女性は俺の身長くらいありそうな大剣を地面に突き刺し、ため息を吐いた。

 どうやらこの人が助けてくれたみたいで間違いなさそうだ。


「エリサ、この子は山賊ではない。お前の先走りだぞ」

「えっ!? ち、違うの……!?」

「昔から人の話を聞かずに突っ走っては迷惑をかけて……! いい加減にせいッ!!」

「痛ぁああああ!!!!」


 頭にチョップをされてもがき苦しむエリサ。いい気味だと思っていると、団長と呼ばれる人が俺に話しかけてきた。


「私はオルトゥス王国聖騎士団団長兼、純白の羽のギルドマスターのステラ・ルーメだ。うちのメンバーが迷惑をかけてすまなかった」

「はぁ、別に大丈夫っすよ。死にかけましたがね……」


 深々と頭を下げて謝罪をしている。

 ギルドマスター、こう見るとそれぞれ個性があるものだ。陰キャでぼっちだったうちのギルマスに、ブラックすぎで横暴な紅蓮の拳。この人のギルドはうまくいってそうだ。


「君のことは知っているよ。紅蓮の拳でも珍しく真面目に働いているアレンくんだろう? よく頑張っていると思うよ」

「あー……そのとこなんすけど、つい先日辞めて蒼黒の心臓に加入しました」

「蒼黒の心臓に!? あー……。ふむふむ、確かに君ならいずれ、あの厄災の魔女カラミティ・ウィッチに対抗しうる力を手に入れれそうだし納得だ。

「っ……。さいで」


 そういえばソフィも『同類』と言っていた記憶がある。その時は何が何だかよくわからなかったが、団長の言葉から推測すると俺もいずれ厄災の魔女並に強くなれるということだろうか。

 というか、やはり格上の人は人を見ただけで実力が測れる能力を持っているらしい。役職奪ってるのバレた。


「今回もどうせうちのエリサが吹っかけたものだろうし、それ相応の対応を取らせてもらう。アレンくん、今私は忙しいが、何か力になれることなかったら言ってくれ。なんでもするからな」

「……まさか1日に二回も聞くとは……」

「ん? なんだって? もしや厄災の魔女からも……?」

「…………」

「へぇ〜〜? 詳しく聞きたいなぁ?」


 口を滑らせてしまったので、この話を切り上げてさっさと退散させてもらうことにした。


「んじゃもう行っていいですよね。まだ依頼の途中だったんで」

「ふむ、そうだったか。じゃあエリサ、一緒について行ってあげて」

「……んぇ!? わ、ワタクシですか!?」


 団長に叱られてからシュンと落ち込んで空気と同化していたエリサは、素っ頓狂な声を上げて驚いていた。

 ジトッと嫌そうな目線を俺に送るエリサ。俺だって真っ平御免だ。厄介なやつを押し付けるんじゃあない。


「断ると言うなら特訓メニューを3倍にするからな?」

「ワタクシ、エリサ・ルーメはアレン殿の依頼の補助をさせていただきますっ!」

「うん、よろしい。じゃあ私はまだやり残したことあるから頑張って。アレンくん、私も君に興味が湧いた。いつでも会いに来ていいからね。それじゃ」


 団長はヒラヒラと手を振って踵を返し、この場を立ち去った。そして俺たち二人が残され、沈黙が数秒続いた。


「……アレン、さっきはごめんなさいだけど、ステラお姉様は渡さないわよ」

「狙ってねぇよ。……そんでもって、嫌だったら帰っていいぞ。話は合わせるから」

「誰が帰るのよ! 一度決めたことはやり通すのよワタクシは! ほらさっさと行くわよ!?」

「はぁあ……ソロの方が楽な気がする……」


 本当に姉妹なのかと思うほど違う性格だったな。姉と妹どちらが好みかと聞かれたらそりゃまぁ前者だな。


 一気に重くなった足を動かし、依頼を達成するために進み始めた。

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