第8話 [ガットら五人、力を失う]
アレンに敗北し、役職を奪われ無職となったガットら五人。彼らは医療施設まで運ばれ、そこで目が覚めていた、
ガットは瞼を開けて昨夜のことを思い出すと、フツフツと怒りが湧いて近くにあった物を殴り飛ばして怒号を放つ。
「クソッ! クソガァ!! この俺らがアレンごときにやられるなんて!! ッアァア!!!!」
「ガットさん落ち着いて!」
「お、俺らが負けたのはありえねぇーっす!」
「アレンのことだから狡いことしたんすよ!」
「次会ったらボコればいいだけだよ!」
ガットをなんとか宥め、これ以上の破壊を阻止した。
ガットの鼻はへし曲がっており、アレンの【
「お目覚めですか。これは請求書です。ではさっさと出て行ってください」
白衣を着た女性が不機嫌そうに五人にそう語りかける。目は塵芥でも見ているかのように死んでおり、深々とため息を吐いていた。
ガットら五人は請求書に目をやるが、それを破り捨てた。
「ケッ! 俺たちゃあの紅蓮の拳のギルドメンバーだぜ? この俺たちを治せたこと、それを光栄に思うがいい! ガッハッハ!!」
「はぁ、関係ありませんが、期限以内に支払ってくださいね。請求が増えるだけなので」
ガットたちは聞く耳持たずで女性を無視し、この場を後にした。
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ガットらはギルドに戻り、昨夜の醜態を無くすために依頼を受注した。
内容は『テテルツリー三匹の討伐』。森の中にいる人を襲う木の討伐だが、道中でゴブリンに襲われることが多いため厄介な依頼だ。
「パパッと終わらせて酒飲んでやるぜ……」
意気揚々と森の中に入る五人。自分たちの役職が奪われ、スキルも全て失っているとも知らずに……。
『グギャッ』
『ギャッ?』
『ギーギー!』
『ガガガッ!』
「チッ、雑魚のゴブリンか」
目の前にいるのは四匹のゴブリン。
昨日アレンが森の入り口近くで肉を焼いていたので、森の奥からゴブリンが出てきていたのだ。
「雑魚の群れが。昨日は不発だったが、今ならできるぜ。【
『グギャッ! ……ギギャ?』
「なッ!!?」
ガットが放った拳でゴブリンの頭が吹っ飛ぶことはなく、少し鼻から青い血が出るくらいの威力だった。そう、ただのパンチだった。
唖然としていると、ゴブリンが高くジャンプをし、ガットに棍棒を振るう。
「ぎゃぁっ! 痛ェ! 痛ェよぉ! テメェら助けてやがれェエ!!!」
仲間の方に目を向けるとそこには……。
「け、剣が重くて……うわぁあぁあ! や、やめてくれぇえええ!」
「槍が自分に刺さった! なんでぇ!? 上手く使えねぇ!」
「気配隠してんのになんで見つけるんだよぉおおお!!?? やばいやばい死ぬ死ぬ!!!」
「み、みんな何が起きてんだよ! 【鑑定】できないし!」
ゴブリンにタコ殴りにされている四人の姿があった。
低ランクのゴブリンと高ランクの冒険者。だのに、ゴブリンが圧倒的に優勢。この事実への焦燥感と死の恐怖で、ガットは叫ぶ。
「嫌だァァアア! こんなゴブリンになんか殺されたくねぇよぉおお! だっ、誰か助けてくれぇえええええーーっっ!!!!」
無様に泣き散らしながら助けを請う四人の姿が他の冒険者に見つかり、なんとか助かったという。
命は助かったものの、高ランク冒険者というプライドはズタボロにされていた。
紅蓮の拳が、次第に力を失ってゆくきっかけとなる事件だった。
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