第2話 [無生物テイマー、魔物を狩る]
ギルドを荒らしに荒しまくった後、キッチンでの仕事もバックれて国の門の外に出た。
倒木の上で俺は自分の本当の力について確かめてみた。
「【
俺がそう唱えると、手のひらから小さな火が現れる。
【
役職によって獲得できるスキルは限られているため、良いスキルがあったとしても普通なら獲得できない。隣の芝生が青いだけで、自分の芝生を違う色に染め上げるなんてできない。
「お?」
手のひらの火は俺の指に近づき、スリスリと顔(?)を擦り付けていた。熱くはないので、力加減をしてくれているのか?
……ちょっと可愛い。『イグニ』とでも名付けてやろう。
「物質……無生物に感情を持つという事例は遠い東国で伝わってる付喪神ってのがあるが、それに近いのか? テイムをしたら物質に感情や生命を吹き込むみたいな……うーん」
いかんせん今まで見たことない事例だ。自分でも何が何だか全く分からない。
今わかっていることは、魔物や魔獣などの生きている存在がテイムできない代わり、剣や火などの無生物はテイムができる。
テイムしたものは感情or生命が吹き込まれ、自立して行動ができると推測する。
「この力がありゃ、あんなゴミの掃き溜めみたいな空間で働かなくていいってこったな」
だが今の俺はほぼ一文無しと言っても過言ではないほど金欠だ。働かざるもの食うべからず。何かしなければ生きていけない。
今の俺の地位的に考え、騎士やら門番やらといったものには就職できない。やはり冒険者で依頼をこなしていくしかない。
「うーん。今更あそこには帰りづらいし……魔物を狩って売り捌くのは有りよりの有り有りだ」
魔物の素材買取ならば長時間人と顔を合わせずに金が手に入る。
そうと決まれば早速魔物討伐だ。俺がいるオルトゥス王国の外にある森にフォレストウルフという狼がいる。其奴らは強いわけではないが、討伐するが難しいから素材が高く売れる。
「思い立ったが吉日……いや、吉秒。早速森に行くか」
軽い足取りで森へと向かった。
###
『グルルルル……』
「いたが、流石に嗅覚でバレるか」
森の奥に進むと三匹のフォレストウルフの群れを発見したが、こちらを警戒しながら退路を確認している様子だった。
あまり好戦的ではないが頭は切れる、中々厄介な魔獣だ。
「【
『キャウンッ!!』
一匹に向かって槍を投げる。すると微調整をしながら飛んで行き、一撃でフォレストウルフを絶命させることができた。
勝手に追尾し、弱点にクリティカルヒットした……というか、させたのかもしれない。
「もう一匹も逃さねぇよ。行け、イグニ」
『アヴヴヴヴァアァ…………』
手のひらサイズの
余談だが、フォレストウルフはなんでも食べるが草食傾向にある。故に肉が美味しい。一匹は命に感謝して食べさせてもらう。
「〝
『ガルルルル!!!』
逃げたと思った最後の狼は俺の前に立ちはだかり、牙をむき出しにして唸っている。殺意剥き出しのその瞳で少したじろぐ。
仲間を殺されて怒らないはずない、とでも言っているかのようだった。社会的な魔獣だこと。
「……【
剣を召喚し、中腰でフォレストウルフと睨み合う。数秒の駆け引きの後、先に仕掛けてきたのはフォレストウルフの方だった。
『アォオオオオンッ!!!!』
「ッ!!?」
狼が咆哮すると同時に俺の体はガクガクと震え出し、その場からピクリとも動くことができなくなった。
冷や汗が止まらず、本能が『やばい』と告げてきている。
「(フォレストウルフのスキル【
『ガヴァアーーッ!!!』
「ッ!」
終わった。そう思ったのも束の間。
――ズバッ
フォレストウルフの首が宙を舞っていた。ボトッと首は生々しく地面に落ち、フォレストウルフは痙攣した後動かなくなった。
「ア……?」
一瞬何が起こったかわからなかったが、段々と理解が追いついてきた。
俺の体は【
「スーッ……。これ、最強能力だろ」
三匹のフォレストウルフの亡骸を見ながら、ポツリと言葉を零した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます