第3話 [無生物テイマー、スキルをテイムする]

 三匹中一匹は丸焦げになったので、俺は腰に携えていたナイフで捌き始める。いかんせん下働きや汚い仕事を長年続けてきた身。魔獣の捌き方くらいは知っている。

 ナイフでテキパキと捌いている内に、周囲に香ばしい香りが漂う。それを嗅ぎつけた俺の腹の虫はぐーぐー泣き喚いている。


「うし、こんなもんか」


 他二匹のフォレストウルフもいらない部分は切り取ったりして、下処理は完了した。

 内側の生焼けの部分はイグニに焼いてもらい、肉を頬張る。運動後の胃に染み渡る感覚がした。


「はむっ、うむ。……そういや、生きてるのは無理だけど、?」


 単純に考えた疑問だった。

 今までは木や武器、火といったものをテイムしてきた。だが、は果たしてテイムできるのか。


「物は試し、だな。【使役テイム】」


 フォレストウルフの死骸に手をかざし、スキルを発動させた。すると、頭に直接こんな声が響いてきた。


《フォレストウルフから【威圧プレッシャー】をテイムしました》

「ん? 『テイムした』って?」


 この脳内に直接響いてくるこの声は、スキルなどを獲得した際に聞こえるものだ。まだ解明はされていないらしく、謎に包まれている声だ。

 もう一度聴こうと思い、フォレストウルフにスキルを発動させたが、何も起こらない。


「んー? 別の個体だったらいけんのかなぁ……。【使役テイム】」

《フォレストウルフから【剛爪ごうそう】をテイムしました》

「おぉっ! ……んん? だからスキルをテイムしたってなんなんだ??」


 イマイチよくわらかないが、スキルを自分に従えた。言い換えれば、強奪したってことなのか?

 もし……もしそれが本当ならば、ちょっとヤバいかもしれない。


『グギャッ』

『ギーギャギャ』

『グガガガ!』

「……ゴブリンか」


 フォレストウルフの香ばしい匂いにつられてきたのか、ゴブリンが俺に近づいてきていた。

 緑色の肌にボロボロの布を腰に巻いており、充血した目と涎を垂らすその姿は、お世辞にも美しいとは言えない。


「丁度いい実験体が来た」


 俺はその場に立ち上がり、先程脳内に聞こえてきたスキルを発動しようと試みた。


「【威圧プレッシャー】」

『『『ギャッッ!!?』』』


 ゴブリンは先程の俺のように、体をガクガクと震わせてピタリと静止した。上手く行き過ぎたこの状況で、俺の口角はまた上がる。

 ゴブリンと距離を詰め、もう一つの方も試してみた。


「【剛爪ごうそう】!」

『『『ガッ――』』』


 自分の爪を立てながら横に薙ぐと、ゴブリンはいとも容易く切断されて絶命した。


「は、ははっ。他のスキルを奪うって……。魔王みてぇだな……!」


 自分の能力が恐ろしい。だが、それと同時に高揚感が溢れ出る。この能力があれば、できないことなんてないと思ったからだ。



 △ △ △


 《獲得スキル》


威圧プレッシャー】【剛爪ごうそう

(フォレストウルフ)


【棒術】【投石術】【弓術】

 (ゴブリン)


 ▽ ▽ ▽

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