第4話 [無生物テイマー、返り討ちにする]
フォレストウルフ三匹とゴブリン三匹を討伐した後、街をぶらつきながら時間を潰した。
すっかり日は傾き始めた頃に冒険者ギルドの横に隣接されている魔物や魔獣を買い取ってくれる場所は向かい、無事に換金することができた。
「ひーふーみー……うぉ、こんなに大量の銀貨が手持ちにあるなんてな」
懐が暖かい。今夜はこの温もりでぐっすりと眠れそうだ。
とても気分が良かった。だのに、台無しにされる。険しい山頂を必死こいて登ったのに足で蹴られて突き落とされるかのような感覚だ。
「こんなとこにいやがったか……アレン!」
「げ……ガット」
こめかみに血管を浮かべ、イラつきすぎてプルプル震えている腕。相当キレていると、一目見ただけでわかるほどだった。
他にも、俺がテイムしたものに襲われた冒険者たちも一緒におり、集団リンチすると考えれる。
見たところ、ガット以外の冒険者は剣士や盗賊……あとは鑑定士? 結構レアな役職だが、俺のテイムしたものを鑑定する感じなのだろうか。
不幸にもここは人気の少ない道。助けを呼ぼうにも呼べない状況だ。
「今さっきの鬱憤ここで晴らさせてもらうぞゴラァ!」
「鬱憤? 鬱憤ねぇ……。どのクッセェ口が言ってんだか」
「あァ!? ンだとアレン!!!」
腹が立ってきた。今まで俺に向けられてきた仕打ちに比べれば、先程のものなんて可愛いもの。だのに、まるでこの世の絶望全部与えられたみたいに言いやがる。
本当の絶望を知らない馬鹿ばかりがここに集まっているみたいだ。
もう自分の力の使い方がわからない無能じゃあない。ガット、俺の方からやり返してやるよ。今までの仕打ち、全部。
「テメェら動けなくなるまでボコボコにしてやれェ!!」
「「「「オオォ!!!」」」」
「面倒だな。【
火と机に向かわせているが、一度目にした光景だからもう混乱はしないだろう。
動くはずがない物が襲いかかるとはいえ、精々そこらにある机やちっぽけな火の玉。タネがわかれば容易くあしらわれてしまう。
「いやー、手に入れてよかった」
俺は【
だが、この一瞬で構わない。
怯んでいる隙にイグニと机が暴れ、俺も距離を詰めて【
ゴブリンから奪った【棒術】がある。本来テイマーという役職にそんなスキルは得られないが、今の俺にはある。
「は〜いちょっと通るぞ」
「グァッ!」
「うゲェッ!」
「ゔっ……!!」
今まで手も足も出ず、無力な俺にただ暴力を行使し続けてきた冒険者どもが簡単に地に伏して行く。
【
「は、はァ!!? テメェら雑魚のアレンに何もやられてんだクソがァアアーーッ!!!」
「ツケが回ってきた。それだけだ!」
「うごっ……」
拳を振りかざしながら走ってくるガットに対し、棒を横に振るって後方に弾き飛ばした。爽快な音が響き渡る。
「まさか……こんな雑魚どもに虐められてたなんてなぁ」
逃げようとする冒険者を投石で逃さないようにしながらそんなことをぼやいた。
……っと、そうだ。まだ試したいことがあったんだ。
フォレストウルフやゴブリンは死骸を【
ここにいる冒険者どもには、俺の好奇心の的になってもらうことにした。これは罪滅ぼしだぞ。
「【
《ガットから『役職:
「っ!? あ〜あ。やっちゃった」
口を三日月のように不気味に湾曲させ、心の底から溢れ出る高揚感と、脳がパチパチと弾けるような今までに味わったことのない多幸感に満ち満ちた。
まさか役職さえもテイムできるとは思いもしなかった。
「ガット、チャンスやるよ。俺の手に【
「はぁ、はぁ……く、そっ! 舐めてんじゃねぇぞォアレンンン! 【
――ペチッ……。
スライムを手のひらで軽く叩いた時と同じような弱い音がした。ニッコニコの俺に対し、ガットはみるみる血の気が引いて顔面蒼白。呼吸が荒くなり、ガタガタと震え始める。
あっれ〜おかしいな、【
「な……な、何をした……テメェ……」
「別にさぁ、俺だけ集中的に虐めてんなら実験台にしようなんて思わなかったかもだ。けどなぁ、お前らこの国で好き勝手やってるらしいじゃん? 大勢の人が煙たがってんだよ」
「こんなクソカスのアレンに……! ぶっ殺してやるぞテメェ……!!!」
「最後までお前はお前だな、悪い意味で。罪を償え、無職野郎。【
「グバァッッ!?!?」
顔面を殴り飛ばすと鼻から血を吹き出して気絶した。
死んではいないから大丈夫だろう。この紅蓮の拳のギルドにいる冒険者なら、多少なりとも成敗されるべきだ。
「後から『鬼』だ、『クソ野郎』だとか言われても構わないな。寄ってたかって虐めて搾取するお前らの方がゴミだ。過程は変わんねぇよ」
冒険者全員の役職を【
△ △ △
《獲得役職》
・
・
・
・
・
《獲得スキル》
【拳術】【
(ナックラー)
【剣術】【強靭化】【袈裟斬り】
(剣士)
【
(盗賊)
【槍術】【乱れ突き】【
(槍使い)
【鑑定】
(鑑定士)
▽ ▽ ▽
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