第21話 [無生物テイマー、決戦前日に話し合う]
調理師(元)から情報を洗いざらい全て吐かせた後、部屋から出て俺も一息吐いた。正義に必要な
パチッとエリサと目が合うが、眉を顰めて微妙な顔をしていた。
「……ご苦労様だったわね、アレン。でもあのやり方は……」
「わかってる。最善のやり方もあっただろうが、時間がかかりすぎる。最速で終わらせなければ被害が増えるから仕方のないことだ」
「そう……ね。うん、それがあなたなりの優しさって受け取るわ」
どこか寂しそうな顔をしていたが、腑に落ちている様子だった。
俺は反吐がでるような劣悪な環境下で育った。だが俺は泥中の蓮にはなれず、朱に交わって完全なる赤にもなれない、中途半端な野郎なんだ。自分を鑑みる度に過去を呪う。
でも……どうせ堕ちるなら蓮の方がいい。
「エリサ、もし俺が道を踏み外しそうになったら、手ぇ引っ張ってぶん殴ってほしい」
「え、な、何よいきなり。でもワタクシよりあなたのギルドマスターとか前の女の子とかの方が信頼できるんじゃないのかしら?」
「いやぁ……なんとなくだが、あの二人は一緒に道を踏み外してくれそうな予感がすんだよ。
だから単純で馬鹿で、絶対折れない正義の芯を持ってるお前がいい」
一瞬、エリサの瞳の輝きが増したように見えて岩のようだった表情がスライムのように柔らかくなり、満面の笑みを浮かべる。
浄化されそうなほどの〝極光〟だ。俺には真似できない、羨ましいほどの。
「ふふっ、任せなさいっ! このエリサ・ルーメ、如何なることがあろうと必ず、アレンを引き止めてあげる!」
「……ありがとな、エリサ」
道を踏み外すつもりは到底ない。だがもしも、もしものことがあった時の保険だ。人を疑うのはこの世界に必要なことだが、もう疑うだけの人生は嫌になってきた。
俺はエリサを信じてみようと思う。
###
騎士団からの達しで、明日にでも山賊を壊滅させんと根城に出発をするらしい。どうやら転々と色々な場所で生活しているのは本拠地を誤魔化すためとのこと。
明日に備えて家(ギルド)に帰り、ベッドの上で寝そべっている。
すると部屋ドアがコンコンとノックされ音が耳に入った。どうぞと声をかけると扉が開き、そこからソフィが現れる。
「どうしたんだソフィ」
「うぅ……! 不安だよアレンくんんんん!」
「何がだよ。ってか抱きつくな!」
いきなり泣き出すかと思えば、いきなり俺に抱きついてきた。
必然的に、色入りとデカイソフィのアレが当たってしまっており、多感な時期真っ最中の俺には刺激が強すぎる。
「だってぇ、ドラゴンと戦った時もちょっと危なかったって言ってたしぃ……。明日もギルド存続させるために働かなきゃだし……。アレンくんいなくならないで〜〜っ!!」
「い、いなくならないから! だから早く離れてくれ……!」
「じゃあなでなでして……」
「っ、わかった。したら離れろよ」
頭を撫でた途端に泣き止む姿はまるで赤ん坊でも相手をしているようだった。
自分が強くても周囲が強いわけではない。だから失うのが怖いんだろうなと推測をしてみる。
そのまま頭を撫でるのを続行していると、再び扉が開く音がした。
「……ご主人さま」
「んッ!? に、ニヤ、これは違うんだ」
「んー……なるほど、わかった。今からイチャラブセッ――」
「何もわかっていねぇ!!!」
「危険へ向かう前、種を残そうとするのは必然って聞いたことある」
「違うっつってんだろうがァ!!!」
どこでそんな情報を仕入れていたんだ? あー……山賊どもか。何もされてはいないが、汚い情報は仕込まれてたってわけだ。
俺は深いため息を吐き、ソフィは何もわかっていないアホ面をしていた。
「まぁいいけど。ご主人さま、明日は絶対勝とーね。それだけ、おやすみ」
「あぁ、もちろん。……って、そこ俺のベッドなんだが」
「すやぁ……」
「こいつ……ッ!」
本当に明日が大事な日だってわかっているのだろうか。それゆえのリラックスなのか。
まだ理解ができないやつだが、信頼はしてくれているみたいだった。ソフィも俺を大事に思ってくれているようだし、明日の作戦は失敗するわけにはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます