第23話 [無生物テイマー、テイマーと戦う]

「「【召喚サモン】」」


 相手のテイマーはフォレストウルフやゴブリン、オークやボーンボア。そして、一番強いであろうのはワイバーンだ。

 対して俺は机や椅子、馬車に剣を持った甲冑、イグニアクアといった、イかれた編成だ。


 俺としてはもう当たり前だが、見慣れていないであろう山賊のテイマーは瞠目した様子だった。


「お、お前なんなんだ……!?」

「ただのテイマーだが?」

「……ふんっ。だがそんなので僕の子たちに勝てるわけないんだよなー! 行け!」


 一斉攻撃を仕掛けてくる魔物らに対し、俺もテイムした無生物たちで対抗させる。


 フォレストウルフは椅子と机に追いかけ回され、最終的に椅子に追い詰められたところを上からの机で圧死。ボーンボアとオークが馬車に突進するが、機動力で圧倒して轢き殺す。その他の雑魚は剣を持った甲冑がひとりでに歩き、薙ぎ払っていた。


 その際、暗殺者が首をかっ切ろうとしていたが、ポケットのナイフが飛び出して弾き返す。


「は、はァ!!? おッかしいだろそれ!! こうなったらもう上から焼き殺してやるよ……!!」

「ただのナイフが我の斬撃を弾いた……ッ!?」


 悉く手段を潰された相手のテイマーはワイバーンの背中に乗り、空高く飛翔した。上から炎を吐いて焼き殺す手段をとったのだろう。


「ご主人さまー、わたし暗殺者倒すから上のやつやっといてー」

「できるのか?」

「わたしを誰だとー? 任せて」

「まぁお前なら死なねぇか。俺の方も任せとけ。【召喚サモン:羽】」


 大量の羽を召喚すると、それが背中に一斉に集まり始める。この羽は森の中を駆け回っていた時、逐一テイムしていたものだ。

 理由は簡単、空を飛び回るためだ。


「よっ!」


 【跳躍】で高く飛び上がり、ワイバーンと距離を縮める。口は煌々としており、今にも炎が吹き出そうだった。


「ッ!! 空も飛べんのかよクソ! ワイバーン、【猛炎】だッ!!!」

『グァァア!!!』


 羽は危険を察知して勝手に俺の体を動かしてくれている。だが、相手のワイバーンも炎を吐きながら俺を追尾していた。

 アクアを手に乗せ、命令をした。


「相殺しろ」


 手のひらサイズの水の塊だが、それは氷山の一角に過ぎない。川の水をこれでもかというほどテイムしたので、実質無限の水源を手に入れているのだ。

 だから、ワイバーンの炎程度ならば相殺できる。


 激しい蒸発音と白い水蒸気が瞬く間に上がり、視界が遮られる。だが俺は【鑑定】で場所を特定して、イグニを構える。


 ドラゴンと戦ってからというもの、イグニがおかしかった。今まで以上に活発になり、高みを目指そうという意思がなんとなく感じ取れた。

 感情が生えた火がドラゴンの火に感化されたのかと考察をし、俺はイグニの可能性を信じてこう命令する。


イグニ――〝豪炎〟」


 ――ゴオオオオオオッッ!!!!


 刹那、白い空間が真っ赤に染め上げられ、空中の水分が一瞬で気化する。ワイバーンの炎とは比べ物にならない火がテイマーに襲いかかる。

 もうイグニは火ではない、〝炎〟になったらしい。


「ァ……ガ……――」


 死んではいないが、丸焦げになって地面に墜落した。

 テイマーより、無生物テイマーの方が優れているということが証明されたようだな。

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