本当の爆弾は直ぐ傍に

第33話 何か、大事な事を見落としているような

「……うわ、ガチで城だ。」

「……? 王様の所に行くって言っただろ?」

「いや、そもそも何で友達の家に行くレベルの感覚でそんな事言ってるんだよ。お前の方が異常だろ。」


 リムジンでわざわざ学校前まで迎えに来てくださった、白髪の執事に連れられてきた王城。当然と言えば当然ではあるのだが、王城というのも相まって高いしでかい。

 振り返ればニコニコとその綺麗な笑顔を剥がさない、長身だが高齢で。多少白髪も見え始めた運転手さん兼執事さんがそこに居る。

 しかし、役職自体はそうなのだが見た目的に見れば普通に戦場で大剣でも揮っていそうなぐらいには筋肉質な方で、実はバトラーなんじゃないかと勘繰ってしまう自分が居る。


「あ、騎士団長さーん!」

「あっ、おいっ!」

「おや、いらっしゃいませ。燈魁䴇様。冥綴蕾様。悠祇飅様と……、そ、湊澪胤おぼっちゃま!?」


 え、何で俺だけおぼっちゃまなんだ?


「ど、どうも……。」

「すみません、奏の奴……目が覚めたのは良いんですけど、記憶喪失になってて。」

「なん、と。これは失礼致しました、湊澪胤お坊ちゃま。私はユーティレクト・ソーラ。お坊ちゃまの武術の指導をしておりました。」


 俺の武術の指導……?


 おかしい。もしかすると俺はそれなりに良い貴族の出なのだろうか。

 それにしても虐待があったり、虐殺があったり、身寄りもないのにここまで来たり……。いや、身寄りがあったからこそわざわざ故郷から遠く離れた王都に来たのかもしれない。

 しかし、仮に良い貴族の出だとしてもまさか騎士団とかいうほぼ近衛隊の隊長クラスに武術を鍛えてもらう事などありえるのだろうか。そもそも、俺だけおぼっちゃま呼びなのもかなり引っ掛かる。


 とりあえず……挨拶しとくか。


「……えっと。い、いつもお世話になってます。」

「お気になさらないでください、おぼっちゃま。これが私の役目でもございますので。それでは皆様、国王陛下の元へどうぞ。……ふふ。私も特別なお客様がお来しになられるとは聞いておりましたが……まさか、おぼっちゃまの事だとは。」


 俺は本当に一体何なんだ……?

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