第24話 真実へ辿り着く為に

 本日は学校が休み、との事で蓮燔、愁翔、煌溟の3人に手伝ってもらい、校内の案内がてら校内中に散りばめられた俺の魔力を集める事にした。

 校内に立派な病院が存在している事を知った時点で多少察してはいたが、あまりに広大過ぎるこの広さはしばらくの間昏睡状態だったが故に弱体化してしまったこの筋力では回り切れない。何度も休憩し、俺にしか分からない、この校内に散らばった俺の魔力を回収しては記憶を失う前の俺はこれを予測していたのか、分散されてしまった魔力を回収し。一時的に保管しておく為の容器に入れていく作業を繰り返す。

 幸い、大体の位置は俺にしか分からないが蓮燔達にも目の前にそれが現れれば視認出来るらしい。蒼い灯のような、その魔力の塊を。


「ここが……校長室。」

「まさか、こんな形で校長に合わせるとは思ってなかったよ、俺も。」

「校長ってどんな人なんだ?」

「アルバ・シェール・グラルドっていう人で、ハイエルフの爺さんだよ。」

「元は宮廷魔導士をしてた人で、実力はかなりの人だ。奏もよく話が合ってた。」

「そう……なのか。」

「んじゃ、俺がノックするから。」

「任せた。」


 コンコンコンッ。


『入り給え。』


 ノックするだけで相手が誰なのかを識別する魔法でも施されているのか、何も聞かれないままに入った校長室はかなり広い。とはいっても俺達の寮のリビングぐらいはあるだろうか。

 その奥、沢山の書類を淡々と捌きながらも此方をちらり、と確認するエルフ。

 日記に書いてある通り、見た目的には全く50代には見えない薄い黄緑色の長髪に、黄緑色の瞳を持つエルフ。そんな校長は松葉杖を突きながらもわざわざ近寄ってきてくれてはランタンの中に封じられた、明らかに俺の魔力と思われる物を差し出してくる。


「君の魔力だろう、これは。」

「わ、わざわざ……ありがとうございます。」

「いやなに、偶然見つけただけだからな。何も気にせんでええわい。それで……体調はどうかね。」

「多少不安定ではありますが、問題視する程ではありません。」

「そうか、それは何より。少しでも早く元気になって、また昔のように後者が1つ潰れるぐらいのやんちゃをしてくれたまえ。」


 昔の俺は一体何をしてたんだ。


 しかし、これは考えてみればかなり良い機会だ。相手が校長とならば、当然ながら俺がどんな状況や状態を経て2か月も眠り込むような事態になったり、これだけの大怪我をした理由だって分かるはずだ。

 勿論蓮燔達にも聞いてみた事はあれど、誰もが答えてくれずにずっと困っていたぐらいだ。少しでも良い、情報を聞き出さなければ。


「校長、何故俺が記憶を失い、このような大怪我をしたのか。それについてお話を伺う事は出来ますでしょうか。」

「残念ながら、私の口から話す事は出来ない。」

「……そう、ですか。」

「そして大変申し訳ないが、君が誰に問おうと返ってくる言葉は変わらないだろう。霊峰様が国中に口止めをされているのだから。」

「霊峰様……ですか?」

「この国の王様よりも偉い人。神すらも凌駕しうる、膨大な魔力を持った人だって言われてる。……会った事もないし、俺も書籍で読んだ程度の情報しかないけど。」

「霊峰様は神様のような物。冥綴蕾君が言うように、私ですらも会った事がない。」

「え、校長も!?」

「……その人に聞けば、教えてもらえるのでしょうか。」

「会う事が叶えば、それも夢ではないだろう。噂では賢者にさえなれば会っていただけるそうだ、もし会いたいのであれば賢者を目指しなさい。君ならなれるだろう、最も賢者に近しいのだから。」


 また、賢者だ。日記にも詳しい事が書いておらず、謎の多い賢者とやらについて、もっと調べなければならない。


「……分かりました。本日はお時間を下さり、ありがとうございました。」

「また何かあったら気軽に来るように。」

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