第10話 積み上げられた軌跡をなぞって
「あ。」
「何だ?」
「そろそろ夕食の準備してくるから、奏はもう少し探索しててくれ。」
「……あぁ。」
執着なのか、それとも独占欲なのか。
蓮燔が部屋から出るや否や、直ぐに顔を出したレイがするりと甘えてくる。
そのまま毛並みに呑み込まれてしまいそうな勢いながら、ちゃんと怪我をしている場所には尾を絡めてくれたり。常に撫でてくれるので痛みはない。
そんなレイは、俺に何かを教える事も目的として顔を出してくれたらしく、爪すらも綺麗な右前足でそぉ……っと机の下にある三段棚の1番下を開ける。
試しに中を除けば真っ黒な錠前の付いた箱があり、箱が大き過ぎて何も入れられそうにない。
手を伸ばし、実際に触ってみればかちりと言う音がして。その後直ぐに現れた無数の魔法式のような物と共に現れた「他言無用、情報漏洩禁死」と血のように赤い文字で書かれた術式すらも数秒そこに表示された後に溶けるように消えていき、小さく声を出して読めば勝手に扉が開く。
中には真っ黒な本が幾つも綺麗に並べられている。よく見てみれば背表紙には日付が刻まれている。
日記、か……?
一番古い本を取り出し、開けば小さなICチップのような物が日付の掛かれた袋ごとに仕舞われている。
どうやら、外見は本だが中はカードを仕舞うファイルのようになっているらしい。その中から1つICチップを取り出して、机上にあるこれまた真っ黒なPCの電源を就け、アクセスしてみると中には容量の小さいメモ帳のような物が記録されている。
【〇月〇日 〇時〇分
今日はF組の奴等蓮燔を虐めたらしい。あいつ等、本当に学習しない奴等だな。そろそろ吹き飛ばしてやろうか。
そうそう、新しい魔法が出来たんだ―――】
その後も幾つか長々と魔法式らしい物や説明等々が記載されており、時間はかかるが少しずつ目を通していく事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます