第15話 その姿はまるで、

 カランカラン。

 軽く、それで居て心地の良い鈴の音が店内に鳴り響く。

 外見もアンティークでかなり好ましい風体だったが、その内装もかなり好ましい。ここの店主はさぞ、内装にもこだわったのだろう。

 魔道具屋、と聞いていたので魔道具しか置いていないのかと思いきや、その他にも色々と明らかに魔道具ではない物も確認出来る。もしかしたらメインは魔道具だけでポーションなども販売しているのかもしれない。


 店主は……不在か?


「あ、いらっしゃい!」

煉迦れんか君、こんにちは。」

「あ……! 奏兄ちゃんと蓮燔兄ちゃんだ! 父ちゃん、お兄ちゃん達が来たよ!」

「おぉ、久しぶりだな、奏。ん、蓮燔君まで。具合はどうだ?」


 白銀の髪に琥珀色の目をした12歳くらいの男に引き続き、それをそのまま大きくしたような屈強な男が奥からやってくる。見た目もよく似ているが十中八九、この2人は親子なんだろう。


 にしても、魔法師っていうよりは鉱山で働いていそうな店主だな……。


鷚軌りゅうきさんと煉迦君。親子でこの店を営んでてさ、鷚軌さんは一流の付与師でここにある商品の半分は鷚軌さんの作品なんだ。」

「え、ここの半分が?」

「……? 何だ奏、うちの常連さんなのに俺と煉迦の事、忘れちまったのか?」

「奏お兄ちゃん、何処か悪いの?」

「いや、その……。」

「奏なんですけど、実は2か月前の戦いで記憶喪失になっちゃってて……。丁度昨日昏睡状態から目覚めたばかりなんですけど、自分の名前すら憶えてないんですよ。」

「え、奏お兄ちゃん記憶落としてきちゃったの!?」

「……成程なぁ。確かに後で聞いた話、あれは未完成の大魔法って話だったもんな。それぐらいのリバウンドはそう珍しい事でもない、か。」

「それで今、2人揃って学校から公欠を頂いてまして。買い出しがてら、ちょっと街を案内してる所なんですよ。」

「……そうか。」


 そっと伸びてきた、力強そうな大きな手が優しく。わしゃわしゃと、やんわりと俺の髪を乱す。

 その時に見えた、何処か寂しそうだが安堵したような表情に不思議と魅入ってしまった。


 ……。


「俺はここのオーナーの鷚軌だ。そんで以て、こっちは息子の煉迦。」

「煉迦です! 奏兄ちゃん、宜しくね!」

「あ、あぁ……。宜しくお願いします。」

「奏、俺達に敬語は使わんでくれ。元々俺達がここで仕事を出来んのも、お前がここの宣伝してくれたお陰だ。何なら新しい商品を作る為のアイデアも幾つかお前が出してくれたくらいだしな、俺としてはお前に感謝してもしきれねぇぐらいなんだ。……それに、この国の英雄様に敬語なんか使わせちゃあ俺がご近所さん達に殺されちまうってもんよ。」

「そう……か。分かった。」

「あ、そうだ! 奏兄ちゃん! 僕、奏兄ちゃんにプレゼントしたい物があるんだ!」

「俺に?」

「うん! ちょっと待っててね!」

「あ、あぁ……。」

「それはそうと奏、長い間眠ってたんなら立ちっぱも辛いだろ。茶でも淹れてくるから2人でそこのソファにでも座って待っててくれ。」

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