第18話 少しずつ、前へ

「……ぅう。」

「か、奏! 奏、俺が分かるか!? また記憶なくしてたりしないよな!!?」

「……れん、や。俺……。……俺、失神……した?」

「あ、あぁ……。一応はお前が気絶してる間に先生に診てもらって、オーバーヒートだってのは分かった。……でも、何があるか分かんなくて俺、心臓が止まりそうで……。」

「……ひとまず、体を起こしたい。」

「そ、そうだな。あぁ分かった。手伝う。」


 多少の頭痛もそうだが、何より眩暈が治らない。少しでも安全に体を起こす為、蓮燔に支えられながら。俺が体を起こすや否や、率先して背もたれになってくれるレイに身を預ける。

 いつの間にか、先程確認出来た無数の魔法陣は確認出来ない。魔力が尽きたのか、それとも何らかの事情で完全に解除されたんだろう。

 それにしても、この変な不快感は一体何なのだろうか。あんまりにも気味が悪く、あんまりにも気分が悪くて膝の上に掛けられているレイの尾に触れてみれば頬に沿えるように尾が就けられて大分楽になる。


「大、丈夫か……?」

「あ、ぁ……。レイのお陰で、かなり。それで……オーバーヒートっていうのは?」

「医者が言うには、久々に魔法を使って体がびっくりしたって。」

「でも、俺……何度か使ってる……けど。」

「魔法の規模。普段、奏は練習がてらなのか、体に染みついてるのか知らないけど割と……。と言っても俺達にとってはって条件が付くけど、簡単な魔法を行使する分には問題ないけどさっき奏が行使してたのは普段使ってる魔法とは違って、かなりレベルの高い魔法なんだよ。魔力消費もかなり高いし、ずっと使い続けてた簡単な魔法とは違って膨大な量の魔力を一気に消費した所為で気絶したって。」

「有効な……対処、は?」

「多分、元々奏の魔力量は膨大だから少しずつ魔法を行使し続けている時間を伸ばしたりして、魔力を消費する。魔法を使うっていう動作に慣れないと駄目だってさ。……でも、何かあったら困るから俺達の家の中でやれよ。良いな?」

「……あぁ。それはそうと、蓮燔。」

「うん。」

「お腹、空いた。」

「了解、じゃあ持ってくるからここで休んでてくれ。」

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