第22話 音なき聲を響かせるかのように
「……本当に奏って常に酒強い訳じゃねぇんだな。」
「そう……みたいだな。」
酒盛りかつ全員で鍋を突き始めて大体2時間程で奏は力尽きた。
意識があるのか、それともないのか。うつらうつらとしており、酒を飲む事。奏が酒慣れしていない事を考慮し、いつものテーブルセットではなくソファとローテーブルの方で楽しんでいたのもあり、膝置きにぐったりともたれて完全に潰れてしまっていると見て良いだろう。
とりあえず奏の部屋から持ってきた枕を顎の下に滑り込ませてやったり。肩の辺りまで毛布を掛けてやっても身動ぎ1つしない。
ソファは他にも余っている為、腰を持ち上げた後。そっと足もソファの上に乗せてやり、怪我の事もあるのでもう1枚毛布を掛けてやっても反応はない。
「どうする、向こう連れてくか?」
「いや、しばらくここで良いよ。このままここで休ませてやってくれ。」
……あれ?
奏が体を横たえているのもあって、転がるようにソファに転がっているロケット。確か、昨日昼間に魔道具屋で貰ったロケットだ。
蒼く光り、そこから溢れ出す魔力が奏の辺りを飛び回っている。ただ奏自体にはそこまで影響の類はないようで、本人はかなり落ち着いた様子で休んでいるのが確認出来る。
「……あれ。これ確か、前に奏が持ってた奴じゃ……?」
「え?」
「蓮燔、説明してくれ。」
「これ、前に奏が “俺にはもう必要ないから” って手放した奴なんだ。確か……ここに入学する前、だったかな。昨日寄った魔道具屋で見つけたんだけど、そこで見つけたんだ。煌溟、ぱっと見で何か分かったりするか?」
「……かなりの魔力保有量である事、奏の魔力循環を手伝ってる事、何かが中に居る事ぐらいか。ただ中に居る何かは無理矢理そこから出る事を望んでいる訳じゃなくて、今は奏の事を気遣ってるように見える。」
「気遣う?」
「俺にも詳しい事や正確な事は分からないが……少なくとも、奏に対して敵対ではないし、俺達の事はそこまで気にしてない。だからといってなるべく触らないようにはした方が良いと思うけど。」
「そう……か。」
「現状、そこまで警戒しなくて良いって事か?」
「頭の悪いお前でも分かるように言うならそういう事だな。」
「言い方。」
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