第23話 問題が起こる前に

 コンコンコンッ。


「奏、おはよう~。起きてっか~?」

「ほら、奏。……起きてくれ。」

「うぅ……?」

「朝だ。具合は……どうだ?」

「……大丈夫。」


 昏睡状態ではあれど、あれだけ深く眠り込んでいる状態を長く続けていた癖に眠くなるらしい。

 朝だと言われて体を起こしたのは良いが、睡魔はずっと強いまま。それとも元々俺は朝に弱いタイプだったのだろうか。

 体を起こした後、しばらくはゆっくりしていたが何やら予定があるらしい。ぐいっ、と多少力強く腕を引かれ、直ぐに自由となっている左腕も捕まえられては愁翔の肩に回され、そのまま廊下へと歩いていく。


「……何。」

「何じゃねぇって、飯食うぞ、飯。昏睡状態で栄養状態がったがたなんだからちゃんと食わないと。」

「折角体調も安定してきてるのにここで崩したら意味がないだろう。」

「……。」

「駄目だ、こいつ睡魔に負けてやがる。煌溟~何とかしてくれ~!」

「はぁ……。ほら、奏。早く起きて一緒に魔法の研究でもしないか。記憶がない以上、色々調べたい事とかもあるだろう?」


 調べたい、事……。


「……そうだ。煌溟、ちょっと確認したい事があるんだが。」

「おっ、ようやっと起きたか?」

「あぁ、何だ。」

「昨日……夜中に目が覚めて、なかなか寝付けなかったから魔力探知魔法とやらを試したんだが、どうもこの校内に俺の魔力と思われる物が大量にあったんだ。」

「……何処から突っ込んだら良いんだ、これは。」

「大体何だよ魔力探知魔法って……。ほんっと、記憶をなくす前の奏は何でも出来過ぎて何やってんのか分かんねぇよ。」

「いや、そもそもとして記憶がない今の奏がちょっと資料読んだ程度でマスターしてる辺り、ちゃんと奏だと思うんだが。」

「確かに。つーか、自分の魔力が校内に分散してるって何だよ、魔王か何かかよ。」

「お前が知らないだけで、それを当たり前のようにする生物は沢山居るから。」

「マジかよ。」

「……ただ今言ったように、そういう事を当たり前のように生物は存在するが人間はそれに該当しない。そもそも、魔力っていうのは本来1か所に。それこそその魔力の持ち主の体内にある物で、よっぽどの事がなければ分離しない。それが奏の言う通り、仮に本当に分離したのであれば今のお前には無用の長物だと精霊が判断し、奏に悪影響が出ない内に分離したって事になる。なら……このままの方が良いんじゃないか?」

「悪用の危険は……ないのか?」

「……。」

「ほら、やっぱり。なら集められるうちに集めて手の内に置いておくのが1番だろ。」

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