第27話 定められた宿命は静かに寄り添って
「ご馳走様。」
「お粗末様でした。早速見つけた本を?」
「あぁ。少しでも情報は多い方が良いし……正直気になって仕方ないんだ。」
「そうか、分かった。あぁでもちゃんと睡眠は取れよ?」
「分かってる分かってる。」
確約はしないけど。
日中、何とか閉館時間ギリギリまで粘って見つけた、霊峰様とやらに関連のありそうな本。それもこれも俺がベッドに腰掛けるや否や、「早くもたれて!」と言わんばかりのレイのお陰で見つかったのだが。
特に気にした様子もないレイはこのまま俺がレイに背中を預けないとかなり機嫌を悪くしてしまう為、仕方なしに体重を預けて。本を開けば俺の膝に顔を置いて眠り始めてしまうのだが随分と自由で我儘な奴だ。
期待は裏切らないでくれる……か。
この本曰く、霊峰様とやらは別に偉そうにお高く留まっている訳でもなく、何処か特別な場所で生活している訳でもないらしい。
老若男女、血族関係なく突如として “世界を形成し、維持している全て” の寵愛を受けて突如霊峰様としての能力を発揮する。“世界を形成し、維持している全て” と言うのは精霊や霊獣達が住まう黎明の苑、神々が住まう天界、調律と浄化を司る煉獄、そして人間達が住まう人界の4つの世界の代表格と言うか、【世界その物の化身】なる者の事らしく、霊峰様とやらはその気があればこの4つ世界に限定して好き勝手に移動する事が出来るらしい。
しかし、だからと言って良い点ばかりではないらしい。
霊峰様と言うのは本来、世界を救う為の最終トリガー。霊峰様として、世界を救う為の最終トリガーとして世界に必要とされない限り自身が霊峰様だと言う事を自覚しないまま、周りに知られないままに寿命を終えたり、病気になったり、はたまた事故に巻き込まれて死ぬ事も珍しくないらしい。そして、他の世界に行けるとは言え、長く自身が生まれた世界から離れ過ぎるとそれぞれの世界の影響を受けて異才だったり、異形になる事も可能性としてはあるらしく、前例も勿論ある。
その為、自分が霊峰様である事を知らない場合。更にはその霊峰様と対して、霊峰様の存在を認識。または識別出来る能力を持った雪巫女という物が存在らしく、その人物にしか誰が霊峰様なのかを識別する事が出来ないらしい。
これは勿論仮説ではあるが、誰かがその雪巫女を偽れば全く関係のない人物を霊峰様とやらに見立てる事も出来る訳だ。
結果、災厄ばかりが訪れると。
霊峰様は生きているだけでも国力に影響するそうで、他国からの侵略に対する抑制にもなるらしい。
何だったら霊峰様とやらが五体満足であり、清らかな精神を持っている限りは精霊や大地から溢れ出してくる魔力の純度がかなり上がるんだそう。その為、作物の実る速度が安定したり、その質が向上したり。自然災害が格段に減ったりするらしい。
それ故、霊峰様を不当に名乗った者。雪巫女を不当に名乗った者は必ず死刑になるそうだ。
まぁ、それだけの影響力がある事を考え見ればそれも常なのかもしれないが。
他にも、深海の奥底に眠ると言う先の4つの世界のどれにも属さない超常的な存在。虐殺と浄化と戒律と調律を司る化け物と契約している事もあるらしく、その際には契約自体がかなり危険な行為らしく必ず早死にするらしい。
別に長生きに興味がない奴ならそこまで苦じゃないかもしれないけどな。
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