第13話 人の温もり

「え、こんなに貰って良いんですか!?」

「良いの良いの、うちは旦那と2人暮らしだからね。」

「奏君、ほら、見てって見てって!」

「あ、あの……おやじさん。」

「もー、堅苦しいなぁ奏君は! おやっさんで良いよ、おやっさんで。うちにはこんな優秀な息子は居ねぇや!」


 がははと豪快に笑う八百屋のおやじさんはかなりご機嫌が良く、端から見れば力が入っていそうなのに優しく頭を撫でてくれるこの人の手はかなり大きい。

 だがその間にもどんどん八百屋のおばさんによって、蓮燔の鞄に本来であれば商品である物が詰め込まれている。一応は蓮燔も抵抗をしているというか、遠慮をしている様子だがあまりそれが功を成しているようには思えない。


「変な質問かもしれませんが俺が好きだった野菜、とかよく買ってた野菜とかってあったりしますか?」

「ん? そうだな……ああ、これとかはよく買ってたな。」

「大根、唐辛子、ほうれん草、ラッカセイ。……苺とメロン? これ、果物じゃないんですか?」

「実は野菜なんだ。」


 へぇ……。


「高菜、白菜、水菜、ネギ、生姜……ですか。結構多いんですね。」

「他にも幾つか買いに来た物はあるけど、大体メモを持ってくるから蓮燔君にお使いでも頼まれたんだろうねぇ。あ、蓮燔君を待ってる間に苺でも食べるかい?」

「え、い、良いんですか?」

「なぁに、英雄様に献上するくらい、許さない奴なんて居ないさね。」


 これが一番美味しいんだとか、綺麗だとかって言われて渡された苺は確かに美味しい。

 お恥ずかしい事にそれはおやっさんにも見て分かる程のリアクションを知らず知らずのうちにしてしまったようでまた優しく頭を撫でられて顔が赤くなるのを感じる。


「……美味いです。」

「そら良かった。奏君、他に何か見ていくか?」

「おやっさん、果物見せて下さい。」

「果物だね、こっちだ。」

「いつの間に帰ってきてたんだお前。」

「ん? ついさっき。何々? 俺に聞かれたらまずい話でもしてたぁ?」

「別に。……あ。」

「ん?」

「今日、寒いし夕飯は何かあったかいもん作ってくれよ。後、あの苺も買って帰ってくれ。」

「おう!」

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