第34話 たまにはやり返さないとな
「あぁ……久しぶりだな、奏。本当に久しぶりだ。また顔を見れて実に喜ばしい。」
騎士団長、ソーラによって案内されたのは広い食事場。俗に言う、上座に腰を下ろしている国王陛下は……はっきり言って、俺によく似てる。
こんな事を言うのは不敬かもしれないが、珍しい紅色の髪だけでなく、その黒い瞳。更には骨格までかなり似ているような気がしないでもない。
偶然……だよな?
「ぇ、っと。実は俺は記憶喪失になってまして。蓮燔……あぁいや、悠祇飅達に促されてここに……来ました。」
「そうか、そうか。怪我の方はどうだ?」
「い、一応少しなら魔法とかも使って良いそうです。体育の授業とかはまだ禁止されてますが……。」
「まぁ、それが一番だろうなぁ。今は元気に見えるが足とか……まだ痛むだろう?」
何で知ってんだよ。
「まぁ……それなりに。」
「何かあれば遠慮なく好きに頼りなさい。必要な物は何でも強請ってくれて構わない。」
「あ、ありがとうございます。」
「む? どうした、随分と顔が強張っているな。」
「え、いや……その。」
「……奏。この国の王様はお前の叔父だぞ。」
「……え。……ええっ!!?」
「ぁあ、成程。知らなかったのか。これは失礼、俺は
「……叔父。俺の。」
「あぁ。……すまん、奏。今も昔も、まともに守ってやる事すら出来ない愚かな私をどうか許さないでくれ。」
「い、いや、別に。……別に、俺は俺がやりたいようにやってるだけだ。謝る必要なんて……何処にもない。」
「そうか。……おっと、もうこんな時間か。誰か居ないか!」
「お呼びでしょうか、王よ。」
「直ぐに食事の用意を。奏、蓮燔君、煌溟君、愁翔君。君達も食べて行くだろう?」
「「はいっ!」」 「はい。」
知ってたなら教えろよ。
「ふふ、頭抱えてるな奏。」
「今直ぐお前の顔面にパンチでも入れてやろうか。」
「まぁまぁ落ち着けって。」
「ちなみに、奏以外は全員貴族の家系だ。」
「えっ。」
「そもそも俺達が通ってる学校は名門学校だからな、在校生の8割程は何処ぞの王族か貴族が大半だ。」
「……何か、嵌められた気分だ。」
「奏、せめて君が眠っている間に贈った私の贈り物をどうか受け取ってくれないか?」
「……分かっ、た。」
「ふふ、何故そうも頑ななんだ。」
「いえ、叔父とどう喋ってたのかな、って。」
「敬語でもため口でも好きにしなさい。君は私の唯一の血縁者なんだ、何も遠慮する事はない。」
……。
「……うん。」
「あ、そうそう。あの屋敷だが奏1人で住むには寂しいだろう、奏の好きにすれば良いが……どうだろう、蓮燔君達と住むのも良いんじゃないか?」
「……うん、そうする。」
いつぞやの約束は夜空の向こう 夜櫻 雅織 @guitarandcat
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