第25話 声なき導に従って

 校長室での用はもうなく、校長に挨拶をしてその場を後にした。

 しかし、全く収穫がなかった訳ではない。俺がどうしてこうなったのか、以前何があったのかは記憶を失う前の俺が夢に思い描いていた賢者とやらになれば霊峰様とやらから真相を聞き出せると。

 そもそもとして何故そんな情報統制を敷いているのかも分からないが、もしかすると知られてはならない何かがある可能性は大いにある。それこそ国力に関する何かがある……とか。


 とりあえず、優先事項は賢者について調べる、だな。蓮燔にはもう聞いたし、少なくともあれ以上の情報があるとは思えない。本屋に行ったり、図書館で調べたりして情報を得る必要がありそうだ。


「にしても意外だな、校長が奏に執着しないって。」

「言われてみれば……確かに。」

「記憶がないからその程度で良かったとか。」

「お前、絶対悪い意味で言ってるだろ。」

「あぁ、勿論。」

「 “あぁ、勿論” じゃねぇよ。」

「相手は校長、ないとも限らないだろ。しかも、知識に貪欲なあのエルフなのに。」

「それは……そうだけど。」

「普段はどうだったんだ?」

「貴族の打ち合わせとか会合によく一緒に行ってた。日付が変わるまで魔法に就いて議論してたりとか。」

「先生としてどうなんだ、それは。」

「そういや、校長が口頭であんだけ喋るのも珍しいよな。」

「は?」

「いっつもモールス信号とか魔法で空中に文字書いて会話してたから、てっきり喋れないのかと思ってた。」


 それもそれでどうなんだ、と口を開こうとした。ただそれも首から下げたロケットによって邪魔されてしまったが。

 魔力を集めた事によって反応してしまったのか、魔道具屋で貰った霊獣の封じられているというロケット。それが淡く光っては勝手に浮いており、どうやっても開かなかった蓋が開いて中の羅針盤のような物が何処かを指しているのが確認出来る。

 少しばかり興味で針をずらしても緩やかに1周してからまた元の位置に戻る。


「え、何それ。」

「何処かを指差してる……みたいだけど。」

「中の霊獣が……?」

「……恐らく。とりあえず、行ってみよう。校内から出るようであれば諦める。」

「了解、じゃあ行ってみるか。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る