第21話 妖魔アルケニー②

妖魔アルケニーは、蜘蛛型のアヤカシ。

人間体の身体に足が六本。


そして、尻穴から糸を垂らしてぶら下がっており、その顔は怪しい笑みを浮かべている。


「聖騎士よ。お前の技はこのアルケニー様の領域では全て効かぬぞ!」

アルケニーは結界でも張っているのか、大層な自信で、そう言いのけた。


「上等だ!この不動明王の姿の最大の技ハサンクラッシュを喰らうがよい!」

俺は息吹の呼吸と共に三鈷剣に手を添える。


鞘から剣先にソウルパワーを込める。

すると、三鈷剣は青白い光と炎を帯びて光る。


「行くぞ!ハサーーン!クラアアッシュュ!!」

俺は大上段から袈裟斬りにアルケニーに向けて剣を振るう!!


ドシュー!!!


「ギャアアアャア!!!」

アルケニーは真っ二つに切り裂かれる。


決まった!


「フフフフ……効かないんだよ」

真っ二つに切り裂かれた身体は元に戻る。


直後、奴の長い針が俺を貫く!!


ブシュー!!!


「な!ば、バカな……グハッ」。


三鈷剣の力が弱まっていく。

不動明王の力も透明になっていく。


「雄一!!」

ピーニが叫ぶ。


「勝った!聖騎士に勝った!

大魔司教ガリウス様!やりました!」


アルケニーの声が聞こえた気がした。

俺の意識は失っていった。


『いかん!』

どこからかハサンの声が聞こえた。


    ◆◆◆◆◆◆

「ハサンクラッシュが敗れた……」 


は!

俺はベッドで目覚めた。


ど、どうやって?!


隣の部屋では元気よく拓海がご飯を食べていた。すっかり元気だ。


ピーニが後日話してくれた。

あの時腹を貫かれて瀕死の俺。

意識は既に無く、白目を剥いて泡を吹き倒れたのだという。


例の如くハサンに助けられた。

覚醒したハサンの意識の俺は、結界を諸共せずに、アルケニーの足を次々に斬り、後止め寸前のところで逃げられたのだという。


「また、ハサンに助けられたのか!」

俺は猛烈に情けなく悔しかった。


自分の子供すら守れないのか?!

しかもウィルスに紛れてピンポイントで家族に手を出してきた。


これはどういう事を意味しているのか?

いつでも殺れるんだ!

という一種の挑戦とも言えるのだ。


ウィルスのように小さいアヤカシなら、ケルベロスでは対処出来ない。


「くそ!!」

無力感に駆られて壁を勢いよく叩く。


「ちょっと!いい加減にしてよ!」

「パパ五月蝿いよ!」

「パパやめて!」


幾多のアヤカシとの闘いで、力が上がったのか。壁に少しヒビが入る。


「こらー!ふざけんな!立ち退く時にお金取られるだろ!」

嫁さんが途端に不機嫌になるが、俺の心は焦りで囚われていた。


次回へ続く

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