第3話 本当に見知らぬ天井

目が覚めたら、病院のベッドだった。

ワールドポーターズの警備員が、全裸で倒れている俺を見つけてくれて、

急遽救急車に載せてくれたようだった。


驚くべき事は、あの大火災が全くニュースになっておらず、まるで無かった事になっている事。 


更に言えば嫁や子供の前で、

不動明王に化身したにも関わらず、

子供達も嫁すらも不動明王に変わった姿を覚えていないのだった。


だが、あの小瓶はしっかり手に握られており、意識を失った後でさえ吸い付くように離れなかったとの事。


「パパ〜。この小瓶何なの?」

「あなた。どうしたの?何故ワールドポーターズの屋上にいたの?」

「おー。気付いた。びっくりした。

死んだかと思った〜」


各々嫁も、長男も長女も好き勝手にベッドの周りで、ぺちゃくちゃ喋ってる。


あの小瓶が、ほのかに光る。

俺は又意識を失った。


    ◆◆◆

どのくらい時間が経過したのだろう。


白い天井。病室の天井だ。

大分寝入ったらしい。


目が覚めると、矢張り手には小瓶が握りしめられていた。


あのトレンチコートの男は?

謎の声の正体は?


そして敵の正体は?


『雄一聞こえるか?敵は横浜を攻撃したのでは無い。お前を狙っていたのだ。』


だ、誰だ!!


『私の名はハサン。かつて聖騎士と呼ばれ異界で邪神を倒した者だ。』


ハサン?


「何故俺が、この闘いに巻き込まれるんだ?!俺は静かに生活したいだけなんだ」

俺はハサンに訴える。


ハサンは問いには答えなかった。


『お前は選ばれたのだ。因果律に。

邪神を倒せ。邪神を倒せ……』

 

何が選ばれただ。

どうして俺なのだ?


コツコツ……。


ガチャ……。


真夜中の病室に入ってくる人影あり。


キラッ

暗闇。消灯している病室。

その者は白衣を着ている。

 

な、なんだ。看護士さんか。 


「雄一!危ない!」

青色の生き物が、電撃を放つ!


「ギャー!!」

看護士だと、思いきや白衣の中は黒い渦の人型がナイフを持っていたのだった。


黒い渦は泡のように消えていく……。


青色の生き物は、ウサギのような長い耳で魔法使いが持つような杖を手にしていた。


「オレっちの名前はピーニ!危なかったなー!あのアヤカシはバンドイーター。

オレっちにかかりゃ雑魚だよ、雑魚!

ハサン様から雄一の護衛とサポートを仰せ遣ったんだ!ヨロシクな!」


ピーニ?!

変なウサギだな。


「おいおい!オレっちはウサギじゃない!妖精なんだ!」


え?意思が読めるのか?

口にして無いのに!


「兎に角アイツらは必死だよ。

常に身を護らないとね!」


ピーニ。変な奴だが頼りになりそうだ。


「は!俺の家族が危ない!」

俺は包帯を剥ぎ取り、真夜中の病院を出ようとした。


「雄一!瞬間移動だ!オレっちに触れて!」


えい!!


アパートの前に瞬時に着く俺。


「ピーニ。どうしたらいいんだ?」


「このドアの前に結界を張るよ!」

ピーニは杖を振るうと、ドアに星印の結界を張った。


「雄一。明日までは大丈夫。

取り敢えず今日は寝よう。疲れた〜。」


ピーニの転移で病室に戻る。

また明日考えよう。








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