第29話 ダークエルフの魔将軍

高台のベンチで座り、

ため息を付きながらコンビニの弁当を開けた途端に感じる違和感。


いや、マスタード臭!


はっ!!


顔を上げて遠目に見えるいつもの高台の景色では絶対にある筈の無い物が眼前に飛び込む。


巨大な隕石が空から落ちてきて、

且つ白熱化した、その隕石は縦から横に向きを変えて一直線にある場所に向かっている。


「俺の会社!!」


その方向は俺の勤めている会社がある。


隕石は重力を無視して、会社に突っ込んでくる。


や、やばい!


俺は青色の実を食べて会社にダッシュする!


カラァン。


後ろの方でコンビニの唐揚げ弁当がベンチから転げ落ちるのを遠くで聞きながら走る。


な、何で?

どうして?


会社の人達は関係ないだろう。


エレベーターなんて待っていられない。


猛ダッシュで8階まで駆け上がる。


は、ハァハァ……。


エレベーターを出て、カードで扉を開ける。


「皆!にげ……が!!」


ドゴォオオオ!!!

バキバキッ!!!


ガッシャーン!!!


俺の目の前で隕石が窓を突き破る。


部長の後ろの座席から、巨大隕石が高速で突っ込み、部長は粉々になり吹っ飛んだ。


「キャーーー!」

あの佐々木さんの声だ。


た、助けないと。


佐々木さんを見たら手遅れだった。


隕石に引っ付いていたのは、

『巨大タガメ』。


巨大タガメは、次々に隕石から剥がれ落ちて、巨大な長い爪で佐々木さんの頭からズドンと刺した。


ドビュッシー!!!


脳天から滝のように血飛沫が舞う。

爪が刺さった衝撃で、佐々木さんは目と舌を飛び出す。


そして巨大なタガメは佐々木さんの体内の血液を吸い出す。


チュー!チュー!


目をグリングリンさせて、佐々木さんを飲み干すタガメ。


絞りカスのような皮をポイっと捨てる。


タガメは次々に仕事場の人間に襲いかかる。


「やめろ!やめろォォォ!!!」

俺は怒りに震えた。


やめろ!俺の日常を壊すな。


「雄一。ここで神化するの?」

「雄一。やれ。いいのか?やられっぱなしで。お前の力を見せてやれ」


ピーニとヘケトは各々の意見をぶつけてくる。


関係ねぇ。許せねぇ。

俺が神罰を与えてやる!


「てめぇら!皆殺しだ!」

俺は金色の実を食べる!


カリッ。

コリッ。


ピッカァァァンン!!!


眩い光が、圧倒的な光が周囲を照らす!


光が止むか否かの刹那、

俺は不動明王に化身し三鈷剣でタガメを斬り捨てる。


ズバッッ!!


「ギャーーー!!」


ビチャビチャ。


袈裟斬りに斬られたタガメからは紫の液体と内臓が飛び散る。


返す刀で、反対側にいるタガメを、

そして切り捨てるや否や、更に反対側にいるタガメを横一閃で斬り捨てる。


ズシャ!

バチャ!

ジャキン!!


次々に斬り捨てる。


辺りには紫色と赤い血溜まり。

そしておびただしい臓物が散らばり異臭を放つ。 


ハァハァ……。




「鏑木さん?」

「鏑木さんなの?!」

「鏑木!どういう事だ?」

「お前!その姿は?」


生き残った同僚や後輩、先輩は震えながら俺に次々と質問をぶつける。


「お前がやったのか?鏑木。」

「鏑木さん?あんた……」


助けた筈なのに、皆は俺を化け物を見るような姿で見てくる。


「ちょっと!雄一はあなた達を助けたのよ!」

ピーニは援護し声を張る。


「私も鏑木さんが皆を助けてくれたように見えたわ」

ヘケト神こと田宮さんも皆の前で弁護する。


「お前らグルか?」

「田宮さん。あんた、鏑木さんと知り合いのような感じだったな」


しまった。

田宮さんこと、ヘケト神と仲良く喋っていたのを聞かれたか。


ピキーーーン!!!

こ、これは。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


時が止まった。


そしてマスタードの臭いが強くなる。


「人間は醜く、そして美しい。

そして面白いものよな。」


タガメが剥がれ落ちた隕石の奥から黒のローブを纏いし、細い男が現れた。


耳が長い。エルフ?


「エルフでは無い。ダークエルフだ。

俺は魔将軍メロス。聖騎士よ。因縁の戦いに終止符を。」



次回に続く

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