第28話 新入社員田宮さん

おはようございます!


今日も会社に出社。

同僚や後輩、先輩に挨拶。


いつもと同じルーティン。

自分のデスクに着く。


最近出世し管理職についた俺より年上のオバサンの佐々木さんと相性が悪い。


「お早う御座います」と言ってもスカされる。


まだ怒ってんのかな?

感じ悪いな。


以前仕事の進め方で、食い違いがあってそこからお互いギクシャクしてる気がする。


こっちはそんなに気にしてないんだけど。

よくあるでしょ。どちらが正しいとか正しくないとかではなく、解釈の違いから来る意見の相違って奴。


パソコンをカチャカチャ叩く。


その時!

は!!


マスタードの臭い。

アヤカシ……。


背中に汗が滴る。


まさか。ここで殺り合うのか……。

ゴクッ。


「皆!新入社員を紹介する。

田宮さんです。」

部長がスタッフである我々に声をかける。


新入社員?

この時期?


「美人!」

「素敵!」

「キレイだな」

あちこちから声が上がる。


顔を上げると黒髪の長髪美人がこちらをウインクしている。


あ!!!ヘケト神!


なんと、人間態のヘケト神がわざわざ会社に乗り込んできた。


「鏑木君。田宮君の指導係を頼む」

部長はヘケト神のお目付役を命じてきた。


ま、まじか。


「皆さん!鏑木さん!宜しくお願い致します!」


ワー!拍手に湧くオフィス。

やれやれだ。


    ◆◆◆


「ヘケト神に気に入られたみたいね(怒)。雄一ぃぃ。」

霊体のピーニが横にいながら囁いてくる。


心なしか声が震えている。


嫉妬してんのかな?

可愛い奴め。


横にルンルン気分で座るヘケトに俺は尋ねる。


「どういうつもりなんだよ!」


「だってつまらないじゃん。どうせこの世界に受肉したんだから楽しまないとね。

オフィスレディって体験したかったんだぁ〜。」


くぅ〜悪びれもなく。


ん?後ろに殺気!


振り向くと例の佐々木さんがこちらを冷ややかな目で見ている。


まずい。聞かれたか?今の会話……。


「雑談ですか?仕事なんですからメリハリ付けて下さいね。今からこの仕事頼めますか?」


「いや、すいません。この後から研修を彼女にしなくてはならないので。ちょっと難しいです……」


言い終わるか言い終わらない内に、佐々木さんは「分かりました!」

とスタスタと去っていき、俺の上長の須賀さんに何やら耳打ちしてる。


ハァ〜。

女って面倒いな。


そもそも研修を依頼してきたのは、須賀さんなんだよね。


佐々木さんが立ち去ったのを見計らったのを見て須賀さんが、こちらに駆け寄り話しかけてくる。


「須賀さん!無理すよ。研修でしょ?」

俺も納得行かずに須賀さんに詰め寄る。


「あー。大丈夫、大丈夫す。予定通り進めて下さいな」


全く茶番だよなーと思いつつ、

こういうやり取りも平和だからこそと思う俺だった。


「そいで。研修やるけど覚えるつもりあんの?」

俺はヘケト神こと田宮さんに話しかける。


「うん!楽しそう!」


 ◆◆◆


ヘケト神は優秀だった。

周りのコミュニケーションも上手く、何より仕事熱心でみるみる社のムードメーカーかつ功績を上げていった。


「さあ、田宮たみやさん。飯でも行こうか」

俺はヘケトに声をかける。


「ごめん、雄一、いや鏑木さん。他の人に誘われてるの」


あ、そうなの。


俺は昼休みのランチに裏口にある坂を登る。この上は高台になっていて、意外に社の誰も来ない隠れスポットになっていた。


春先は桜が満開になる。


ん?!

マスタードの臭い。


ヘケト?

いや違う!


見るとトンデモナイ大きな隕石が高台の向こうから降ってくるのが見えた。


次回へ続く


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