第27話 パチンコ屋の攻防②
パチンコの客は一斉に俺の方に向く。
「聖騎士ってお前か」
「何なんだよ、聖騎士って」
ざわざわとザワつく店内。
時間は止まらない。
化身なんて出来ない……。
どうする?
どうすればいい?
ひたすら自答する俺。
「お前が聖騎士として戦わないのなら、ここにいる人間共を残さず皆殺しにする。」
ヘケットは半魚人のような元来の姿になり、一人の老爺を、その長い舌で絡め取る。
「ひゃあああ……」
入れ歯が外れて、カターンと床に入れ歯が落ちる音だけが響き渡る。
「雄一……」
ピーニは俺の目をじっと見つめてる。
俺はウンと頷く。
やるしかない。
「やめろ!俺が相手だ!!」
俺は叫んでいた。
この場でヘケットに勝てるのは、俺しかいない。
この人達を守れるのは俺しかいない。
「やっと、やる気になったようだな。しかし、この爺を殺さないとは約束してないぜぇ!!」
ヘケットは爺を放り投げると、口から物凄い溶液を鉄砲水のように、その爺の顔に吹き当てる!
ビシュッッ!!
その溶液は、爺の頭を吹き飛ばす!
主を失った爺の身体はビクン、ビクンと痙攣して動かなくなった。
血溜まりが床を覆っていく。
「また死んだ!お前のせいで皆死ぬんだ!」
「オッサン!状況が変わんねえぞ」
その時!屈強なスキンヘッドの男がヘケットに向かっていく。
「このサカナ野郎!いい加減にしろよ!クソバカ野郎が!!」
スキンヘッドの怒号が響き渡る。
「いくな!死ぬぞ!」
俺はスキンヘッドの男を止めに入る。
スキンヘッドの男はニヤっと笑いながらヘケットに突っ込んでいく。
ズバッッッ!!!
ヘケットの溶解液はスキンヘッドの胸を貫いた。
「あぐぅ……」
ドゴォンッバキバキ!!!
ガシャーーン!!!
その水流でパチンコ台に吹き飛ばされる男。即死だろう。
くそっ……。守れなかった。
俺は黄金の実と赤い実を食べる。
泣きながら、殺された人々の成仏を祈りながら。
眩い光が店内を照らす。
「ノウマクサーマンダー、
バーサラダンセンダー、
マーカロシャーナー、
ソワタヤウンタラターカンマン!
降三世明王!大降臨!
ヘケット。貴様は殺しすぎた。
聖なる降伏の剣をその身に、しかと味わうがよい」
おお!
仏だ!
明王だ!
店内はザワつく。
祈る人も出てきた。
「ケッ!聖騎士め!やっと出てきたか!これでも喰らえ!」
ヘケットは水流の溶解液を吐く!
しかし、俺は咄嗟に思った。
『
奴の溶解液は俺の身体に触れると、気化し煙を出したが俺のソウルパワーに阻まれてダメージは無い。
「な、何!くそ!くそ!」
ヘケットは溶解液を次々に出すが、俺には効かない。
三鈷剣を握りしめ、奴に向かう。
「よくも罪の無い人々を」
俺は心眼を見開き憤怒の姿で剣を振るう!
「雄一!ヘケットは邪神に操られてる!」
ピーニは驚きの言葉を告げる。
な!このカエルの化け物は本来の姿では無いというのか。
俺は心眼で奴の瞳の奥を見る。
「ヘケト神!出産の女神!
あい分かった。俺の剣は邪しか斬らぬ!
ハサーーンクラッシュ!!!」
ヘケットに救う禍々しい影を切り裂く!
『よ、よくも!聖騎士め!!』
どこからか、地の底から聞こえる悍ましい声がし、やがて消えた。
パキーーンッッ!
ヘケットの首に絡む紫色の水晶が割れた。
金色の粒子が、やがてエジプトの女神ヘケト神が現れた。
「ありがとうございます。聖騎士様。
本来の私の姿を取り戻しました」
店舗からはパチパチと拍手が起こる。
ヘケト神は続け様にこう述べる。
「特異点により、邪神の息吹のかかるアヤカシ達が、この三次元に干渉しようときています。ここはお任せ下さい。」
特別な呪文なのだろうか、聞いたことの無い言語を唱えたかと思っていたら、世界は変わり始めた。
◆◆◆◆◆◆
は!!
我に返ると、「ジャラジャラ」
「ピコピコ」いつものパチンコ屋の店内。
隣にはピーニが、そしてその隣には見たこともない黒髪の女性が座っている。
夢?凄惨な光景はどこにも無い。
黒髪の女性はニコニコして、こちらを見ている。
ピーニもニヤニヤしている。
ま、まさか?
「そうです。ヘケトです。私の人間態の姿を雄一様は見てます。そして特異点で壊される前の時間に戻したのです」
良かった。と言うことは化身の姿や戦いはこの人達は起こっていないし、知らないと言う事だよな。
「はー。良かった!」
その瞬間!何故か俺の座っているパチンコ台がキュインキュイン!!と鳴り出した。
「当たった!」
よし!今日は皆で焼肉だな!
次回へ続く
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