第10話 パイセン②

ケルベロスと共に霊体となり、ネット回線を進んでいく。


不思議だ。

アヤカシのオドを感じる。


俺は光の速度でパイセンの大阪のマンションまで辿り着く。


「おめーよ!じゃけんじゃねーよ!上等じゃねぇか!」


相変わらずの調子でパイセンはライブで毒づいている。


冷蔵庫の陰からリビングで酒を飲みながら配信しているパイセンを覗く。


し、瘴気だ……。


黒い瘴気が立ち昇り、ユラユラと周りに蜃気楼のような揺らぎを作る。


奴の目が赤く光る。


ピーニが叫ぶ!

「回線を切れ!」


俺は三鈷剣を出し、剣を振る!

波動を帯びたスラッシュが、WEBカメラとインターネット機器であるモデムを破壊する。


「だ、誰だ?!テメェ!何しやがるんだよ!」

目を見開いてヨダレを垂らしながら罵倒するパイセン。


「アヤカシは異世界に還れ!ここはお前達のいる世界じゃない!」

俺は金色の実と赤色の実を食べた。


眩い光が部屋を一面に照らす!

窓から外へおびただしい光が闇夜に閃光のように放出される。


光の中から現れたのは、降三世明王こうざんぜみょうおう


「降三世明王大降臨!剛力招来!!!」

三鈷剣を手にし、憤怒の表情でパイセンを慈悲の心で見つめる。


「き、貴様!聖騎士か?!おのれぇぇ!俺の機材を!俺の配信を邪魔したなぁ!」

パイセンは、見る見る姿を変える。


その姿は妖魔ガキ。

お腹は腹水が溜まりポッコリお腹。


頭はザンバラ落ち武者の顔。

目は生気が無く、ヨダレを流している。


「妖魔ガキよ。俺がお前を許す!」

三鈷剣は見る見るうちに光がかる。


命の輝き、ソウルパワーにより青白く燃え上がるように見えている。


「みすみす殺られるか!」

妖魔ガキは酸の胃液を吐く!


キーシャャャー!!!!

ビシュューー!


汚ねっ!

三鈷剣でガードをしようとしたところ

ケルベロスが魔法:アンチシールドを唱える。


ワォォォォーーン!

一声いななくと対物理シールドが雄一達の前に現れる。


ガチーン!!


「く、くそっ!」

パイセンは悔しがり、窓から逃走を図ろうとする。


「逃さぬぞ。パイセン。俺がお前を赦してやる!!ハサーーンクラッシュッッ!」


大上段に振り上げた青白く燃え上がるように光る三鈷剣を袈裟斬りに振り切る!


どぎゃぴー!


変な断末魔を上げながら、パイセンは金色の粒子を帯びて消えていく。正確に言えばパイセンに化けていた妖魔ガキが……。


リビングの隣には本物のパイセンが倒れ、既に事切れていた。


「これで良かったのか。」

アヤカシは人間社会に潜伏してきた。

最早俺個人の闘いでは無くなって来ているように感じた。


「雄一。」

心配そうに見つめてくるピーニ。


「大丈夫。お前も、俺の家族も守って見せる。邪神を復活させはしない。大魔司教ガリウスまで辿り着いて見せる」


雄一の闘いは、まだ始まったばかりであり、これは序章に過ぎなかった。


「あ!雄一!回線切ったからどうやって家に戻るのよ!」

「や、やべぇ!」

「アオーーン」


次回へ続く

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