第8話 内在神

妖魔カサブランカが長い爪と舌舐めずりしながら近づいてくる。


「雄一!しっかり!」

ピーニの声は全く聞こえない。


頭は真っ白。冷や汗が止まらない。

足はガクガク、手は、震えてくる。


だ、だめだ。

殺される。


途端に怖くなった。

三鈷剣の力が弱まる。


『雄一……!』

ハサン!


聖騎士ハサンの声が聞こえる。


『雄一。お前の内在神を信じるのだ』


ブルブル震えていた俺の心に、

その力強く温かな声は不思議と落ち着きを取り戻す。


そして俺の帰りを待っている妻や子供達の顔を思い出した。


ケイコ……

タクミ……

ショウコ……。


はっ!!!

俺は「今」に立ち還る。


そうだ!負けるわけにはいかない!

俺は倒れる訳には行かないんだ!


三鈷剣が見る見る光り輝く。


そして、第三の目が開く!

剛力招来ごうりきしょうらぁぁい超力招来ちょうりきしょうらぁぁい!」


白炎のソウルパワーのオーラが出る。


「ギョギ?!な、何ですか?」

妖魔カサブランカは慌ててたじろぐ。


「俺は負けない!何故なら、そう決めたからだ!」

俺はその言葉を言うか、言わないかの一瞬でカサブランカの前に躍り出る!


「ぐお!」

奴は慌てて長い爪でストレート気味に突き出す。


しかし!


長い爪は俺の体に触れた途端に折れて消えていった。


「ドギャ!?何ですと!」

カサブランカは、この変わり様に驚きを禁じ得ない。


「雄一の勝ちね!」

ピーニは拍手している。


間髪入れず、俺は大壇上に三鈷剣を振りかざし袈裟斬りに斬り付ける!!!


「ハサン!クラッシュッッ!」


脳天から縦に切り裂かれ

「ベチョーーー!」

という断末魔をあげるカサブランカ。


血飛沫が上がり、やがて金色の光が粒子となり浄化していく。


終わった……。


俺は人間の姿に戻る。


その瞬間、街はいつもの様相を取り戻す。


「あーー!壁が壊れてる!!」

カレー屋から店主の声が聞こえた。


    ◆◆◆


「スラットハートバブル!イエイ!決まった!」


人気ライバーのパイセンが今日もネット上のライブ配信で枠を盛り上げている。


今や動画配信やライブ配信は、一大コンテンツとなり、芸能人も次々に参加してきていた。


パイセンは50代のオジサンのライブ配信者だがカリスマとしてインターネットニュースを席巻する人気ぶりだった。


酒を飲みながら、人生相談したり旅行先で配信したり、今では当たり前の事を先駆けて行ったレジェンドだった。


ある日、ピーニがインターネットニュースのパイセンの顔を指さして叫んだ。


「こいつ!アヤカシだよ。」


確かに髪がダラーンと落ち武者のような感じで目が窪んで、口からヨダレを垂らしてる写真ではあったが、パフォーマンスかな?と思っていたが、 臭い。


インターネット上の写真から、

アヤカシのマスタード臭がするのだ。


こ、これは。


しかし刺客ではなくライブ配信をするアヤカシ。目的は何なのだ?!


次回へ続く



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