第20話 妖魔アルケニー
「ピーニ!ハサンの実が、金の実が無いぞ!強いアヤカシが出たらどうするんだ?化身しなかったら勝てないぞ!」
俺はピーニに突っかかる。
「私に言ってもしょうがないでしょ!ハサンに言いなさいよ!」
ピーニは霊体のままで怒鳴り返してくる。
「ちょっと!うるさいよ!拓海が寝てるのよ!静かにしなさい!」
嫁が、俺が独り言を言ってると思ってるようだ。
息子の拓海は二度目の新型感染症に感染していた。
いつも奇声を上げるくらい元気な長男はぐったりと寝汗をかいて
ん?!
臭い!
マスタード臭だ。
アヤカシ!!!
どこに?!
俺は辺りを見渡す。
いない!気配を感じない。
「雄一!拓海君から感じる!」
ピーニは我が子拓海からマスタード臭を感じると言うのだ。
ば、バカな。
拓海がアヤカシ?!
「違うわ。新型感染症のウィルスこそアヤカシなのよ。」
な!?
「どうやってウィルスと闘うのだ。」
俺は焦る。このままでは拓海の命が……。
『目に見えない物を感じるのだ。自覚すれば在るのだ。そして目に見えない物になれるのだ』
こ、この声はハサン。
そうか。
「ケルベロス!!」
俺は霊体のケルベロスを呼ぶ。
そして印を組む。
「トホカミエミタメ、トホカミエミタメ、トホカミエミタメ!
我を導き給え」
俺は肉体を霊体化することに成功した。
肉体の俺は布団に眠ったように倒れている。
「肉体との分離は5分が限界よ。
拓海君の鼻の中から体内に入るわよ!」
ピーニは霊体化のリミットは5分と告げてくる。
その時間を過ぎると、肉体の死を迎え現世での生は終わるのだと。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
鼻から伝い体の中から毛細血管を伝っていく……。
細かい網の目のような血管を通ると白血球=マクロファージが微妙に反応するも霊体なので触れることは出来ない。
「アヤカシの反応は?!」
俺はピーニに尋ねる。
「感じない。マスタードの臭いはするのに」
俺はハサンの言葉を噛みしめる。
見えない物を見る。
目を凝らす。
すると、心臓の近くに蜘蛛のような女のアヤカシが複数匹いるのであった。
「来たか!聖騎士!我が名は妖魔アルケニー」
アルケニーと名乗る女大蜘蛛のアヤカシは名乗るやいなや数本の針を飛ばしてくる。
俺は霊体なのですり抜け、ダメージを受けないぜ!
……と思いきや
血管に針が刺さる!
「実体化しろぉ!聖騎士め!」
そういうことか!
俺は実体化していく。
し、しかし化身無しで勝てるのか!
『雄一。自覚すれば在るのだ。ハサンの実はお前の心にある』
ハサンの声がする。
そうか。
「来い!!黄金の実!!」
ハサンの実を取り出すと、そこには光る黄金の実が出てきた!
キターーーッ!!
「ノウマクサーマンダー、
バーサラダンセンダー!
マーカロシャーナー!
ソワタヤウンタラターカンマン!
不動明王神!大降臨!!!」
眩い光が大きく照らす。
眠っている拓海の鼻の奥が光る!
さあ!勝負はこれからだ!
俺は三鈷剣を上段に構えた!
続きは次回
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