第12話 大きな玉ねぎ
「お前何も知らないんだな!」
冠城浩志と、その隣にいる妖精が示し合わせたように指差して笑っている。
ムカッ。
もう大人だから、そんな安い挑発には乗らないけども。
しかしハデルの系譜?
強い……。
鎧は消えて空中から静かに地上に降りる一人の男。
年の頃は30前半?
まだ、あどけなさも残る好青年ぽい、そいつは『こちら』より事情通のようだ。
「ピーニ。お前は雄一に、何も教えてないのね」
ウサギのような身体に赤色の妖精がピーニに向かって、喋っていたと思いきや黒髪の長髪の女の子に変身した。
「宜しく。雄一。私は浩志の従者妖精ターニャよ。以後お見知りおきを」
え?!従者だったの?
ピーニャを見ると手を合唱のポーズをしてゴメンとしている。
対等だったよな。
タメ口?!
元自衛官だからだろうか、先輩後輩の区別が付かない奴はキライだ。
まあピーニは可愛いので許すが。
「雄一。お前は内在神の力をまだ理解していないな。自分の限界を決めるな。このままだとお前は死ぬぞ。いいな。毎回助けないからな。」
そう言うと奴は霧のように姿を消した。
そんな事もできるの?!
「ピーニ!どう言う事だ!」
俺はピーニに詰めよった。
◆◆◆◆◆◆
異世界マーラでの死闘。
聖騎士にはハサンとハデルという聖騎士がいた。
どうやら、二人共日本からの転移者だったらしい。
代々異世界から呼ばれた日本人又は現地で聖騎士になった者はハサンないし、ハデルと呼ばれ魔王と戦った。
数百年経過した後に、ハデルとハサン、歴代の元聖騎士が集い『最強魔法 ファイナルゴッドハサン』で魔王スマターと邪神を倒した。
ところが、邪神の欠片と呼ばれる邪神の片割れが生き残っていた。
大魔司教ガリウスだ。
奴はアヤカシと呼ばれる妖魔を次々に生んで、この世界で邪神を復活させる気らしい。
邪神の名前は阿修羅。
ん?
阿修羅神?
阿修羅も神だよね。
邪神なの?
太古の昔、天界で阿修羅神と帝釈天との闘いがあった。
何でも阿修羅神の娘が帝釈天に凌辱されたのをきっかけに天魔大戦に発展したらしい。
一族を上げて戦ったが阿修羅神は外界に堕ち異世界マーラの封印の洞窟に封印された。
たまたま見つけた村の少年シローヌとアドヴァンの内、アドヴァンに阿修羅神の魂が
「マーラの話は以前に聞いたがハデルの話は初めて聞いたぞ。……って事はハデルの系譜のアイツと手を組まなきゃ行けないのか。」
ハァ〜気乗りしないな。
元来俺は人と関わるのが苦手なんだよね。
「ところでさ。破壊された筈の街や建物や、殺された人々がアヤカシを倒した後に何事も無いように元通りに復活を遂げるのって何かあるの?」
ピーニは首を振る。
「分からない。邪神の力なのか。大魔司教ガリウスの力なのか。雄一の力なのか。ハサンの力なのか。」
そう言えば最近ハサンの声は聞こえないな。
「パパ〜!ちょっとどこ行ってたんだよ!」
長男のタクミが科学技術館から消えた俺を探しに来たのだ。
ピーニも人間態から妖精の姿に戻っている。
「ゴメン。ゴメン。邪竜がね。」
「邪竜?!幼稚だね。なんでオッサンなのに中二病なの?」
振り返ると破壊された武道館は、どこにもなくテッペンの「大きな玉ねぎ」も元通り陽の光を浴びてキラキラ光っていた。
◆◆◆◆◆◆
「だ、誰だ?!テメェ!」
パイセンが孤独死した。そのニュースはインターネットニュースに流れる。
しかし動画で拡散されているのはパイセンが最後に残した謎の声。
第三者がいたかのような発言なのだ。
暗闇の中にPCモニターを眺める男。
無言で、何度もその動画のパイセンの発言を繰り返し聞いている。
メガネの奥がキラリと鈍く光った。
次回へ続く
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