第17話 床屋①
「いいか。雄一。俺達は平行世界に生きてるんだ。仕組みは知らない。しかし平行世界のアヤカシに蹂躙される前の世界に移行している。」
浩志は驚きの事実を話す。
そう。色味を無くし、時間が止まり、アヤカシを倒す。
アヤカシを倒し、時間が戻ると『アヤカシが存在しない世界』に世界は構築され直すとの事だった。
「俺達は孤独な闘いを強いられる事になる。しかし、先の渋谷ドームの犠牲者もいなくなった訳では無い。犠牲者が存在した世界も平行世界には存在する。
ただ俺達は、違う世界を見ているに過ぎない……」
意味が分からない。
平行世界?
パラレルワールドの事?
アヤカシが蹂躙しても、アヤカシを倒せばアヤカシが存在しない世界に構築され直す?
どう言う事?
「そんな世界を構築し直しているのは、誰がしているんだ?!」
俺は浩志に尋ねる。
「知るか。ともかく邪神の復活を阻止すること。大魔司教ガリウスを倒すことが先ずは先決だ!」
どうやら、浩志もそこまで深い情報は持っていなさそうだ。
「東京はお前に任せるぞ。俺は俺の場所でガリウスを探す」
浩志はそう言うと、靄のように姿を消していった。
薄暮に染まる町並み。
ゾロゾロと駅に向かう人々を見つめながら、自身の無力さと孤独さ、虚空な思いを募らせる雄一だった。
◆◆◆◆◆◆
今日は久々に嫁さんとラーメン屋で、ラーメンを食べる。
リモートワークの嫁さんの仕事が一段落終わるのを見計らい、近所のラーメン屋で、つけ麺を食べる。
魚介の出汁が利いた美味しいつけ麺。
旨い!これは幾らでも食べれちゃうね!
お勘定して店を出る俺達。
「じゃあ、私家に帰って仕事だから」
と嫁。
「そしたら、髪切ってくるよ」
と俺。
3ヶ月ぶりに行きつけの床屋に向かう。
少し待っていよいよ俺の番だ。
「ツーブロックお願い致します」
「あいよ!もみ上げは自然な感じで?横は刈り上げますね。」
店員からの呼びかけに目を閉じて。、ハイハイと頷く。
その時!店の前に大きな隕石が!!
ドゴーーン!!!!
駅前の駅ビルが轟音と共に爆発する。
黒煙と炎が立ち上る!
巨大な隕石が、駅舎に突き刺さっている。
キャー!!
駅舎から人が大量に押し寄せる。
正にパニックだ。
人程もある巨大な蚊が、何匹も駅から飛んでくる!
グサッ!
ブシュー!!
目をグリグリさせながら血を吸っている。
「この野郎!!」
ガタイのいい若者が巨大な蚊に掴み掛かる。
その蚊のような化け物の腕がムキムキに盛り上がり、その若者に向けて大振りのフックを繰り出す。
グチャ!!
若者の頭は吹っ飛ばされて、力無く倒れた。
そこにもう一匹の蚊の化け物が現れて、首の無い遺骸から血を吸っている。
計5匹の巨大な蚊の化け物は次々に逃げ惑う人々から血を吸い上げる。
アヤカシ!!
ここでか!
ピキーーーン!!!
時間が止まる。
髪切られてる途中なのに!
髭剃りの途中なのに!!
次回へ続く
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