第18話 床屋②

髪をいつも通り、ツーブロックに刈り上げて貰い、いよいよ楽しみの髭剃りだ!


その瞬間に目の前の駅舎に巨大な隕石が赤い熱を帯びて落ちて来る。


凄まじい爆音。


半径500メートルが吹き飛ぶ!

駅舎には巨大な岩石が汽車と線路に突き刺さっている。


その反動で駅の窓ガラスから、火に包まれた人々が燃えながら落ちていく。


駅ビルが爆発する!


ドゴーーン!!

黒煙が黒龍の如く天に登っていく。


「ここでか!」

思わず叫ぶ。


だってそうだろう。

髭剃りとシャンプーとマッサージは、

床屋の至福の喜びだろう。


何故か床屋の前は、駅の近くと言うのに無事のようだ。


床屋の店員のオジサンと、若い女の人はアタフタしている。


「な、何なの?!」

「え?!店長!!」


ピキーーーン!!


来た。時間が止まった。

闘いのゴングだ。


「ピーニ!いるんだろ?!闘うぞ!」

ピーニは霊体の姿から人型の姿に変化する。


「聖騎士よ!出てこい!居るのは分かっている!」

上空から声が聞こえる。


赤いハーピー!


キャラスンは倒した筈!


「私はキャラスンの姉。シャラプ!

妹の仇を取らせてもらう!」


あの渋谷ドームの大破壊を行った美しい赤いハーピー妖魔キャラスンの姉か。


「お前に恨みは無いが、受けてたとう。

俺は変わらずお前を赦してやるぞ!」

俺はハサンの実を食べようとした。


!!!!


無い!

金色の実が無い!!


どうする?化身の力が無くて勝てるのか?

浩志を呼ぶか?


「ケルベロス!!」

金色の粒子が、光り輝きみるみるケルベロスの形を作る。


ワォォォーーン!


「来い!三鈷剣!」

同じく右手に金色の粒子が三鈷剣を形作る。


「聖騎士よ!化身せぬのか。見縊みくびられたものよ!」

妖魔シャラプは鋭い足の鉤爪で俺に襲いかかる。


「危ない!雄一!」

ピーニが叫ぶ。


ガキッ!

バチーン!!!


三鈷剣で受けるが、その瞬間に吹き飛ばされる。


駅ビルの壁に吹っ飛ばされる。

ボゴッッ!!バラバラ……。


グハッ!痛ぇ!


今のであばら骨と肋骨がイカれた。


クゥーン、クゥーン。

ケルベロスが心配そうに飛んでくる。


「緑の実を……」。

緑の実も出ない!!


ヤバい。


何の実があるんだ?


青の実?

青の実を食べる。


確か、青色の実は知性向上じゃなかったか?


長男に期末テスト当日に朝食のパンに粉末として混ぜてあげたら、その日のテストが平均点以下のテストが上がっていた。


嫁さんも子供も喜んでた。


知性向上させてどうするんだ?

しかし、このままなら殺られるのを待つのみだ。


よし!

俺は意を決して青い実を食べる。


「ええい!ままよ!」

ガリッッ


青色のオーラが出て頭がスッキリする。

同時にスピードが上がる。



イケる!

俺は瞬時に三鈷剣を持ち、ダッシュする。


それは影分身のように残像を残すかのような速さ!


貰った!

奴の真下に潜り、三鈷剣を真上に構えてジャンプする。


ジャキッッ


……掠った!


「ギャアアア!クソがッッ!」

奴は身が泳いでる俺に鉤爪で捕まえる!


グァアア!!


鷲掴みされた爪が身体に食い込み、血が滴る。


もう駄目だ。意識が……。


ウォーーーン!

その時、ケルベロスが高速で突っ込み、シャラプに体当たりをかます。


「グハッ!」

奴の爪が緩んだ。


い、今!

俺は三鈷剣を奴の心臓目掛けて突き立てる!!


グサッ!!


ドブシューーー!!


鮮血が吹き散り俺の顔にかかる。


「ガァアア!!」

奴は怒りで目まで血走らせ、上空まで登ると、高速で地上へ叩き落とす。


ヒューーン!


あ、終わった。

その刹那、ケルベロスの背が俺を拾ってくれる。


「ハハハ……!勝負はこれからだ!」

全身傷だらけなのに、この勝負を楽しんでいる。


そう、俺は昔からヒーローになりたかった。

俺は楽しんでいる。

この絶望的危機を。


「こしゃくな!聖騎士めが!瘴気泰残獄握爪しょうきたいざんごくあくそう!!!」


シャラプは胸から血を流しながらも腕の鉤爪を灼熱に染めて上空から襲ってきた。


避けれるか?

これを受けたら間違いなく死ぬ!


『雄一。お前ならやれる』

こ、これはハサンの声。


父のように兄のような優しくたおやかな声。


「俺なら避けれる!」


大丈夫!ハサンだけじゃなく、

心から俺は俺を信じれた気がした。


続きは次回

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