第15話 妖魔キャラスンと白桃サーティワン

今日は体調が悪くて仕事を休んでいた。

ベッドで横になっていたら、

隣に誰かいる?


嫁さんかな?

いや、やけにスベスベしてるなー。


娘?

いや?やけに足が長いな。


うん?


よく見ると裸の人間態のピーニが横で寝ている。


「おわー!!」

思わず大声を出す俺。


今は昼の十二時。

奥さんは仕事に行っており、

子供達は学校に行っている。


「ゴメン、からかっただけよ。

そんな事より、アヤカシよ!雄一!」


アヤカシよ、雄一よと裸で言われてもなー。目のやり場に困っちゃうんだよね。


元々妖精だからか、あまり羞恥心が無い感じなんだよね。


それに、風邪気味で頭も重いしアヤカシどころじゃないんだよね。


「ピーニ。体調が悪いんだよな。

昨日から鼻水や、くしゃみが止まらないんだ。」

そう返す俺に、ピーニは淡々と話す。


「何言ってるの?雄一。『病は気から』よ。それに緑の実を食べなさい。緑の実を食べれば、直に風邪なんか治るわ」


まあ、そうか。緑の実を食べてみる。


カリッ。

コリッ。


ほんのり光が射して、体の疲れは取れて生気が戻る。クシャミは止まり、鼻水も止まる。


一瞬で体力は回復し、動けるようになる。


「ピーニ!状況を伝えて。

ってその前に服を着ろ!!」


ピン小太刀しながら、服を着ろってのも我ながらアレだなーと思う今日この頃だ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


渋谷ドームの会場は大荒れだった。

あんなお祭りムードであったのが、

突如地獄の様な様相を表していた。


鬼の顔をした岩の目と口から赤い河が流れている。


その岩はあまりに大きく、

まるで最初から渋谷ドームに置かれていたかのようなオブジェのようにも見えた。


しかし巨大すぎる岩の下には、

10周年ライブを楽しみにしていたファンの遺骸の上にあるのだ。


【それ】は空から降ってきたのだ。


テレビやネットでは、その惨状が報道されている。


テレビ局のヘリコプターや、メディアがどっと押し寄せる。


今までに無いパターン。


「雄一。転移の術を使うのよ」

ピーニが転移の術を使えと言ってくる。


「だって下北沢の時は、無我夢中だったからさー。自信無いよ」

と俺。


ハァ〜と呆れるピーニ。

「雄一。この世界は想いの世界なの。念ずれば叶うのよ。出来ると思えば出来るのよ!」

目が血走ってる。


そうなのか。

いや、そうなんだ。


ハサンの実を食べてから想いが具現化するスピードが早くて気付かなかったが、元来そういう事なんだ。


よし!

目を閉じて渋谷ドームを思い浮かべる。


……!!


目を再び開けたら、そこは渋谷ドームの真上。


おぞましい鬼岩の下には血溜まり。

そして、目と口からは大量の赤い河。


血の噴水に煽られて、白桃サーティワンの5人がぐったりしながら、地上20メートルほどまで上昇していく。


ザザザーッッ


五本の赤い水流は、まるで曲芸のように、甚振いたぶるかのように上下に、かつ交互に浮き沈みしている。


舐めやがって!


その時!唐突に笑い声が聞こえた、


「ウハハハハ!私の名前は妖魔キャラスン。何がアイドルか。私より美しい者はいないのだ!」


赤いハーピー族のアヤカシだ。

半鳥半人長い羽と長い爪を持つ。


「俺は絶対にお前を許す!許してやるぞ!いくぞ!」

怒りを抑えてハサンの身をかじる。


勝負だ!キャラスン!


次回へ続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る