2023/4/8 土・雨・胃薬

 明日は弟の誕生日で、今日は推しの誕生日で、桜はもうすぐ咲きそうだけど、この日記を一度やめようと思う。

 これから「日記に書きたいな」と思うような毎日が続くんだろうけれど、今の私は実は日記なんか書いてる場合ではないのだ。誰にも見せない文章をひっそり温めるようなそんな時間が欲しい。ほしいというか、必要である。

 だから、


 誤解しないでほしいのが、決して「やめる」ってことではなくて、文字通りの距離を置くって意味だってことだ。毎朝七時にベルについてる新着パッチの赤丸を見付けて飛びつくような毎日をやめようと思っただけだ。単純なこと、評価されないことを嘆くよりもやることがある。ひとつ連載を終えてそれをひしひしと感じるわけである。私は今やるべきことをやるべきだ。

 これから本を読まなければならないし、書かなければならない。他人の評価軸から一度離れて、自分の物差しを作り直そう。地道に積んだ本を読んだり、懐かしい少女小説を開いてみたり、流行りの本を買ってみたりしたい。

 そういう一歩一歩が、のちの自分の糧になることを信じている。


※※※


 自分語りをする。

 実は、大学を卒業すると同時に筆をいちど折っている。

 母に「小説家は私にはできない」と告げた。四年間、文学を専攻して出した結論だった。私に人間の機微も深みも出せるとは思えない。私が研究してきた数々の名作、称賛される美しい文章を私には書けないと。今思えば生涯アマチュア宣言のようなものだった。

 しかし、新卒の時にメンタルも折れた。会社に行けなくなり、希死念慮にさいなまれてどうしようもなくなった。廃人同然になって実家で寝てばかりいる私を、母はどう見ていただろうな、と思う。いろんなことがフラッシュバックしてつらかったかもしれない。でも、私もつらかった。

 寝ている間、片手間にアプリゲームをやっていた。シナリオゲームである。一日に五枚チケットが補充されるので、一枚につき一話、チケットを使って、毎日ちまちまと読み進めていけるという、課金要素バキバキのゲームであった。でも私はそのゆったりした進行に救われていた気がする。

 チケットが補充されるから、続きを読む。物語が終わるまでは、読むために生きていようと思った。


 そうしたら、あれよあれよと物語に救われてしまった。


 今も忘れない。自分のことばかり責めて憂いて泣いたのではなく、物語に突き動かされて枕に顔をうずめて泣いたときのことを覚えている。私はたぶんあの時一度死んで生まれたんだと思う。間違いなく生まれたんだと思う。だって、おぎゃあと泣いたから。

 生まれなおしたので、狂ったように物語を書いた。それが、そのゲームのシナリオの二次創作だった。友人に読んでもらいながら十万字書いて、pixivに投稿したらあっという間におバズり申し上げた。たくさんの人に感想と承認をもらって、ようやく立ち上がった。今もその二次作品のファンはたくさんいてくれて、私の作品を待っていてくれて――でも、もうそのキャラクターたちを書くことはないなぁ、と思う。

 私のフィールドは別にある。私はいまこんな風になってるよって、みんなにいつか教えたい。それで、誰かがまた、私の書いた物語で癒されたり救われたりしてくれたらいいのになって、勝手に思っている。

 

 フォロワーへ。私が意味もなくシナリオゲームを勧めてきたときは、さきっちょだけでいいからやってみてね。多分それは私を形作っている三分の一とかに相当するからね。

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