合否


 入学試験から十日程が経過した。

 この十日間の過ごし方と言えば食事と睡眠をただ繰り返すだけの日々だった。

 いや、もちろん他ごともしていたけど。

 呼吸とかいう面白く無い冗談ではなくーー体を鍛えたり、剣の腕を磨いたり、剣自体を磨いたり。だけどそれらの行動は俺からしてみれば、いつも通りの変わり映えしない日常の一部であって、これといった思い出にならないわけだ。

 今日という日はそういう平凡な毎日に終止符を打つ、大切な日になるはず。

 だからこうして、食事もなし訓練もなしに俺はダイニングの椅子にただ座っていた。

 いや、これも違うな。

 ただ座ってはいないか。

 そわそわしながら座っている。頬杖を付き、明後日の方向を見つめ口笛を吹く。上手に吹く事ができず掠れてしまっているけれど、まぁそれはご愛嬌といったところだ。

 俺の様子は、さながら小便を我慢している人の様、に見えたのだろうなーー。


「お手洗いなら部屋を出て右。階段があるからそのまま上がって、突き当たり右手のお部屋だよ」


 そんな事をナノカは言った。


「別にトイレは我慢してねえよ。しかも場所なら知ってるよ。さらにそこはお手洗いじゃねえ。俺の部屋だ」


「あれ? そうだっけ?」


「惚けるならもっと真面目にやれ。"あれ、そうだっけ"ってのは惚けるにしても最悪手。知ってましたと教えてるようなものだ」


「一概にそうとも言えないんじゃない?」


「今まさにそう言って惚けた張本人が反論するな。お前が俺の説を実証してくれてる体現者なんだよ」


「張本人であり、体現者であるーーだって。なんかカッコいいね」


「大事なところを省くな。話も逸らすな。いいか? 俺の言葉は要約すると、すっとぼけ間抜け野郎って事だからな」


「私は女の子だからね。野郎じゃなくてアマだよ」


「それでいいのかお前は……」


「別にいいよ? 本気で言ってるなら噛み千切るけど」


「どこをですか!?」


手羽てば


「美味しそうな部位を選択したみたいだけど、人間にそんな部位は存在しないよ!?」


 くすくす、とナノカは笑う。

 楽しいのなら何よりでございます。

 まったく、朝っぱらからツッコミでエネルギーを消費させやがって。

 お前はアード・ラムローか。


 そんなこんなで下らない会話を交わして時間を潰しながら待つこと凡そ一時間。

 ちりんちりん――と。

 不意に自宅備え付けのベルが鳴った。


「「来た!」」


 俺たちは同時に立ち上がり玄関へと向かう。

 何が来たのかと言えば、ハスファルク高等魔道学校からの合否通知である。


 この家に届く郵便物の受け取りに際して、俺たちが何かを受け取ったという試しがない。

 寂しい事に自分たち宛の何かが届くということが一切なかったから。

 初体験という意味でも、合否通知の受け取りは中を見るまでもなく『自分たち宛に何かが届く』というそれだけで何となく嬉しい出来事だった。


 大して広くない家の造り、玄関へと到着するのにそう時間は掛からなかった。


「お兄ちゃん出てよ」


 玄関の扉を前にしてナノカは言った。


「え、お前が出るんじゃないの?」


「いや、私はお兄ちゃんに付いてきただけだから受け取りとかはちょっと……」


「俺もなんて言うの? 受け取りの"目撃者"になりたいだけであって、受取手になりたいわけじゃないっていうか……」


「目撃者! それは私の役目だと思う。だって私は張本人であり、体現者でもあるんだから……ほら、私が目撃者に相応しいと思わない?」


「なんだその斬新な言い草は。そういう意味で言うならあれだよ? そう名付けたのは俺、みたいなところがあるだろ? だからその功績を讃えて受け取り目撃者の称号は俺に譲るべきだと思う」


 二人揃ってコミュニケーション障害を発症していた。

 おそらく扉向こうにいる配達員は人の気配を感じ取っているであろうに、俺たちは出るに出られないでいる。


「じゃあこうしよう。私が扉を開けるから、お兄ちゃんが『どちら様でしょうか』って言うの、そしたら何かしらの返答が来るはずだから二人で臨機応変に答えて、二人で受け取るの」


「な、なるほどな。コミュニケーション能力の不足分をコンビネーションで補おうってわけか。よし、そうしよう」


「じゃあ……開けるよ」


 ごくり、と。

 俺たちは唾を飲み込んで扉を開けた。


「遅えよ!」


 と、開けるや否や、扉の向こうに佇む男が言った。


「ひっ! ごめんなさい! どちら様でしょうか!」


 予定していた文言をそのままに俺は言う。


「配達員だよ! 分かってて開けたんだろ!? お前たちの会話全部、丸聞こえだったからな!?」


「ひっ! ごめんなさい! 何のご用でしょうか!」


「ひっ、ごめんなさいーーってのをまず止めろ! こっちが脅してるみたいじゃないか! 用もわかってんだろ!? 魔道学校からの合否通知を届けにきたんだよ! ほら、受け取れ」


 俺とナノカは顔を見合わせて、互いに頷く。


「せーの」


 ナノカの掛け声の後。


「「ありがとうございます」」


 揃って手を伸ばした。


「愉快か! 長いこと配達員やってっけど、こんな受け取り方をする奴らは初めてだよ! 初対面の、それもお客様に対して! かなり声を荒げて喋っちゃってるし!」


「ねぇ。お兄ちゃん。この後どうすればいいのか話してなかったね」


 顔を少し寄せてから声量を抑えてナノカが言った。

 合わせて、俺も顔を寄せる。


「受け取りが済んだのに帰る気配が無いな……そう言えば、聞いたことがある。受け取り上級者は長々と世間話に興じるらしい」


「え? 世間話を? 知らない人と?」


「ああ。なんでも、ご近所付き合いの延長線だそうだ」


「うそ。みんな凄い。どうしようお兄ちゃん。私、世間話は得意じゃないよ」


「よし、ここは俺に任せろ。世間話のスペシャリストであるこの俺にな」


 背筋を伸ばして配達員と向き合う。

 コホンッ、と一つ先払いを打ってからニヤリと口角を上げて。


「いやー、それにしてもいいお天気ですねー」


 両手を擦りながら俺は言った。


「…………」


 いい天気のはずなのに、この場の雲行きはやけに怪しい。

 なぜなら、配達員からの反応がないからだ。彼の様子はまるでただの屍のようだった。


「……すぅー」


 配達員は深く息を吸った。


「世間話なんてしねえよ!?」


 えー!?

 しないのー!?


「お前たちの内緒話も全部聞こえてたよ!? 馬鹿なのか!? アクリスタ兄妹は馬鹿なんだな!? お父さんそっくりで安心したよ! 俺はもう帰るから! さっさとそれを開封しなさい! いいね? それじゃ!」


 バタンと勢いよく扉を閉めて足早に配達員は去っていった。


「嵐みたいな人だったな」


「そうだね」


 締め切られた扉に遮られて見えなくなった配達員、彼を思いながらに俺たちは言った。


 その後、ダイニングに戻った俺たちは一度ゆったりと腰を落ち着けた。

 手元には学校から届いた封筒がある。

 無言で封筒と見つめ合う謎の時間が少しあってから、どちらともなく封を切った。

 中には二枚の紙が入っている。

 緊張するな。

 合格と書いてあれば良し。

 不合格と書いてあれば死ぬ。


 いざ!


「「…………」」


 手が震えてうまく紙が取り出せない。


「お兄ちゃん早く見てよ」


「……なんで俺なんだよ。お前が先に見てくれ」


「なんで? さっきはカッコよく引き受けてくれたのに」


「世間話は得意だから引き受けたけども合否通知の確認は初めてだからな、軽々しく引き受けるわけにはいかない」


「私も初めて。だからここは"ジャンケン"で決めるって言うのはどう?」


「いいだろう」


 ジャンケンーーそれは、掛け声と共に片腕を突き出し、お互いの手の形、選択した出し手の優劣で勝敗を付ける、簡易的闘争手段の一つである。

 出し手は、手を丸めたグー、二本指を立てたチョキ、全ての指を開いたパー、の三種類。

 グーにはパーが、パーにはチョキが、チョキにはグーが優勢となる三すくみ構成。お互いの出し手が同じだった場合は合いの手 (あいこ)となり、勝負延長プラス一回戦となる。


 我が家においての闘争を平和的に解決するためナノカの手によって発案された闘争手段の一つであった。


 俺たちは封筒を机の上に置いて席を立つ。


 ふしゅー、と謎の呼吸音がダイニングに響く。


「行くよ?」


「来い」


「「朝からじゃんけん、夜までホイッ!」」


 掛け声に合わせて互いに右手を突き出した。

 出し手は、お互いにグー。合いの手となった。延長戦突入である。


「「昼来てホイッ!」」


 次いで、お互いにパー。再び合いの手となる。延長二戦目に突入である。


「……ナノカもやるようになった」


「お兄ちゃんには負けたくないからね」


「ふっ。だが、次で決着が付くぞ? もちろん俺の勝ちでな」


「ふふ、それはどうかな? 私の出すパーティクルシャワーに勝てる手をお兄ちゃんが出してくるとは考えられないよ」


 パーティクルシャワーってなんだ。

 なんとなくの聞き心地だとパーっぽいけど、俺を騙そうっていう魂胆か? 若しくは三つの手とは別の手を出す反則技を使おうってつもりじゃあないだろうな。

 相手の出方がよく分からないままに延長戦へと臨むのはキケンすぎる。ここは一旦、探りを入れてみよう。


「駆け引きはよせ、例えお前のその、パーティクルシャワーが炸裂したとしても俺の出す、ぐ、ぐ、グゥラビティコブシーズには勝てないんだからな」


「グゥラビティコブシーズ……どうやら成長したのは私だけじゃなかったみたいだね。まさかお兄ちゃんにも必殺技が出来ていたなんて……」


 え、は、なに? 技? 必殺技?


「二人が聞いたら喜ぶよ」


「お、おい。一体なんの話をしてんの?」


「え? お兄ちゃんにも出し手の技名ができたんでしょ? グゥラビティコブシーズはグーの事だよね。私の好みとは違うけどいいんじゃないかな?」


「いや、待ってくれ。俺は適当に合わせて言っただけで、技名とかそういうのは『ちょっと何を言ってるのか分からないです』ってなる」


 あれ? そういえば、ナノカは二人が喜ぶよって言ってたな。


「もしかしてなんだけどさ……デイネスとアネットの二人も出し手に技名が?」


「うん、あるよ? あれ、お兄ちゃん知らなかったんだ?」


「知らねえよ――というか知りたくなかったよ。なんなんだよ技名って……それで結果が変わるのか?」


「変わるわけ無いでしょ? ただの気分だよ。技名があった方がさ、なんかこう、ぐおおおって盛り上がるんだよね」


「そ、そうですか……」


 すごい恥ずかしいことをしてるんだな。にしてもデイネスはそんなことを考えてる暇があったら仕事をしろよ。いや、してるのかもしれないけどさ。不安になってくるよ。


「これを期にお兄ちゃんも付けてみたらどうかな?」


「いらねえ! ホントに要らねえ!」


「……そっか……」


 ナノカの表情の雲行きが怪しい。

 先程までの楽し気な空気が消え去っていく。


「……お兄ちゃんは私たちのことを寒いって思ってるんだね……いい年してバカじゃねえのって蔑んでるんだ……」


 うおっ、的確すぎて心に来る。

 やめてくれ、そんな目で見るな。これじゃあ俺が悪い奴みたいじゃないか。


「……私たちは子供……私たちはおバカ……私たちは可哀想……私たちは恥ずかしい……私たちの頭はパーティクルシャワー……私たちは――」


 ぶつぶつと呪文を唱えるみたいに自分を卑下するナノカさん。私たちの頭はパーティクルシャワーっていうのはちょっとよく分からんけども。流石に見ていられない。


「あーもう、分かったよ。分かったからその呪言をやめてくれ……」


「いいの!? やった!」


 先程までの暗雲は何処へやら。ナノカの表情は一変して華やいだモノへと変わる。


「お兄ちゃんのグーはグゥラビティコブシーズでいいの?」


「出来ればそれも変えてくれ。恥ずかしくて聞いていられない」


「そう? 私は結構好きになってきたよ、グラビティじゃなくてグゥラビティって言うところが可愛いよね」


 イキイキしてんな。

 なんなんだ、コレは。

 俺は今から自分の拳に名前を付けようとしてるのか? 気持ち悪すぎるだろ。

 だけど付けると言った手前もう引き返せないし、少しでもダメージを減らすために無難な名前を付けたいところだ。


「あー、参考までに聞きたいんだけど……お前たちの技名を教えてくれ」


「うんうん、それじゃあまずは私から――」


 聞くに堪えない寒き名称をつらつらと述べていくナノカ先生はとても楽しそうで――横槍を挟めないでいる俺はこの時間が一刻も早く過ぎ去ってくれと願うしかなかった。


 ◇


「……負けた……」


 その後行われたジャンケンの勝敗は十数回のあいこの末、俺の敗戦で決着を見る。

 

「ふっふっふっ。お兄ちゃんもまだまだだね。次もこうなりたくなかったらもっと精進しなさいな」


 俺の出し手、"ライフライン(パー)"に対してナノカの出し手は"ピストルピース(チョキ)"。

 手のひらに走る生命線が長いという理由から命名したのに勝負の生命線はずたずたに斬り裂かれてしまった。


「くっ。俺のライフラインを負かしたくらいで調子に乗るなよ。俺の"第二関節アピアーズ(グー)"が飛び出していたらお前のピストルピースはへし折れていた」

 

「良しなさいなお兄様。負け惜しみは見苦しいだけよ?」


「くっ……」


 膝を付いた俺の頭上でナノカは高らかに笑う。

 どの道、合格通知は見なければいけないのだから先に確認する事自体に問題はない。だけど今回の場合は自主的な確認ではなくてジャンケンで負けてしまったからという強制によるもの。

 納得はできるけど俺の心の根底が受け入れを拒絶してくる。

 なにか、何かないのか。この敗戦を覆す最善の一手はーー。

 約束を違えることなく状況を打破してくれる。そんな最善策を俺は探す。

 そして一つの答えに辿り着いた。


「ナノカ……負けた俺が最初に封筒から紙を取り出して合否を確認すればいいんだったな?」


「え? うん。そうだけど……」


「ふふふ、ふふふふ……はあーっはっはっは!」


「え、急にどうしたの? 負けたのが悔しすぎて壊れちゃった?」


「……いいや? 俺は至って正常だ」


 ジャンケンに負けて膝を付いた、数秒前の自分はどこ吹く風に、俺は思い付いたアイデアの天才性に身震いを禁じえないでいる。

 よろけながらも起き上がりテーブルに手を伸ばす。


「ふっふっふっ。良いだろう……先に確認しようじゃないか。この! ナノカの合否通知をな!!!」


 そう言って俺は自分のものではなく、ナノカの合否通知書を手に取った。


「な、なんだってー……!」


 数秒の沈黙。壁に囲まれた屋内なのに緩やかな風が吹きつけタンブルウィードが足元を過ぎ去った……そんな気がした。


「って馬鹿なの? アイデアが姑息すぎる」


「馬鹿? 姑息? そんなことを言って良いのかな? こいつがどうなっても知らないぞ?」


 ヒラヒラと見せ付けるようにして封筒質ふうとうじちを揺らす。

 ナノカの合否通知が入った封筒。封だけは切ってあるその封筒。

 それが逆さになっているとも知らずに俺は揺らし続けた。

 そう時は経たずしてヒラリと紙が落ちる。


「「あっ」」


 その紙の中央には大きく"合格通知書"の文字とナノカの名前が記されていた。


「やったぁぁぁあああ!!!!」


 ナノカの歓声が家の中に響き渡る。

 同時に、俺は膝から崩れ落ちた。ジャンケンで負けた時と同様の崩れ様だった。膝の皿が割れそうだ。


「なんで倒れたの!? 妹の合格が嬉しくないってこと!?」


「合格枠一枠が。一枠が……」


「何その理由。まあ気持ちは分からなくも無いけどさ。もう合否は出てるんだから私が合格したからって確率は減らないよ?」


「そうなんだけどさ、なんか減った気がするじゃんか」


「ししし」


 ナノカは悪戯にはにかんでから。


「お兄ちゃんも私のを見たんだから私も見ちゃおっと――」


 そう言って机の上に乗った通知書に手を掛けた。

 両手両足が床についた無様な姿勢を維持しながら俺はナノカを見上げる。


 俺の合否通知を持つナノカの手は大きく震えていた。

 え……それってどういう反応ですかナノカさん。


「ふ、ふ、ふ……」


「……ふ?」


 ふってことは、もう答えいってますよね、それ。


「不合格…………」


 倒れた。

 何とか膝で持ち堪えていたけれど、それを聞かされては残りの気力が失せるのも明白でーー涙が出そうだった。

 なんのために頑張ってきたのか。

 ここ数週間若しくは、数ヶ月ーーその努力の全てがたった今、水泡へと帰した。


「ーーっていうのは、うっそー!」


 絶望する俺の耳にナノカの声が届いた。

 しかし"ウッソー"なる言葉の意味を俺は理解ができない。

 ウッソーってなんだろう。

 ウッソー、それともテイウノワウッソーかな。

 分からん。もう、どうでも良いや、何もかも。


「あれ、お兄ちゃん。聞いてる?」


「……はぁ……もう、死のうかな」


「え! なんで? 合格が嬉しくないの?」


「……不合格を喜べるわけないだろ」


「不合格? それは嘘だって言ったでしょ?」


「ウソ。うそ……嘘? 不合格が嘘?」


「うん、嘘。だから言ったじゃない、うっそーって」


 ああ、ウッソーは嘘のこと。新種の動物じゃなくて、うっそーか。

 なるほどなーー。


「って! 嘘!? 不合格が嘘!? 合格!?」


「そうだってさっきからずっと言ってるじゃない。ほらっ」


 その紙の中央にはトーヤ・アクリスタと氏名が記載されていた。そして少し上には"合格通知書"の文字が大きく記されている。

 俺は無事に合格を果たした。


「……ふざけるな! 本当にもうダメかと思って、死んで人生やり直すしかないとか思ってたんだぞ!」


「え、ああ。それで呆けてたのね。お兄ちゃんが先に私のを見たから意地悪したくなったの。恨むなら馬鹿なことをした数分前の自分を恨んでね?」


「……いや、その必要はない。合格したんだし」


 そうか、合格か。良かったーー。

 そんなことを思い仰向けになって床に寝転ぶ。

 とにかく、これで一安心だと思うと自然に口角が緩むのが分かった。


 来年度ーー時間にして十日後に晴れて俺たち二人は王立ハスファルク高等魔道学校の生徒となる。


 季節の変わり目に相応しい新たな生活が幕を開ける。


「楽しみだね」


「そうだな」


 開け放たれた窓からは、暖かな光を伴って暖かな風が部屋の中へと、吹き込めるーー。

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