貧民街で魂を売る天使は、胃腸がとても弱いし偏食だから。
人よりも高い知能と技術を持つ魔物と、病により50年ほどしか生きられない人間が共存する世界。
貧民街の旧市街に、住民の心に灯火のように存在する火葬場があった。
近代化による環境汚染で多くの住民が不治の病に冒されたこの街では、毎日のように引き取り手のない遺体が運ばれてくるのだ。
そんなある日、楽団の一座が、襲ってきた野盗ともども惨殺されるという事件が起こる。
人間の仕業と思えぬ凄惨な現場からは、密かに一人の少女が救出されていた。
時を同じくして火葬場に持ち込まれたのは、”燃えない遺体”。
事件は、数百年ぶりに魔物が起こした人間への虐殺と報じられるが……
火葬場の美しきオーナー、フラン。貧民街の天使と呼ばれる彼は、胃腸が極端に弱いうえに偏食。なのに体を酷使する生活を送っている。
専属料理人兼秘書のルゥは、何とかフランに食べさせようと試行錯誤の毎日。
オーナーの健康は誰にも邪魔させない!
しかし、そんなルゥの努力を全て泡にする『光の御子』ことエロ司祭デビッキに、
金目当てでフランに近づいているとしか思えない罪人兵士バルド。
よりによってこんな二人と共に、燃えない遺体の謎に巻き込まれるハメに。
それぞれに守りたいもののために、向かうは魔物の主が住む黒羽の館。
そこに待つ真実とは……!
ブロマンス×西洋ファンタジー
第9回角川文庫キャラクター小説大賞応募作品です。