第4章 ディストピア飯脱出計画と森への第一歩
第21話 調理実験(1) ~まずは試作程度。ディストピア飯から脱出する為に
試射をして、標的を片付けて、そして恩恵の地の周囲を1周。
なおエリとマキ、試射では結構個性が出ていた。
エリは射撃そのものはあまり上手くない。
その代わり
標的紙を横方向に切り裂くような感じで、2回も弾を使い切るまでやっていた。
一方でマキは狙撃派という感じだ。
2射目から全部、中央の黒丸に着弾していた。
その代わり連射では銃がブレるようだ。
的に当たらないのも結構あった。
こうやって2人の違いがわかると嬉しいというか何となくほっとする。
人間っぽさを感じるからだろう。
その後、西側と北側をぐるりと回った。
北側では朝の外出時にも捕った大型のトカゲをもう1匹確保。
どうやらこのトカゲ、そこそこ数がいるようだ。
出没地点も大体この北側一帯の模様。
なら1匹くらい試しに食べてみていいだろう。
あのディストピア飯だけというのはそろそろきつい。
そんな訳で帰って着替えた後、今まで使っていなかったキッチンへ。
包丁、まな板、鍋・皿各種、その他食器・カトラリー等は既に取り寄せてキッチンに収納済み。
まな板と包丁、平皿、小皿、箸、鉄串を出して、調理を開始する。
『
『わかりました。内臓の一部は洗浄すれば食べられますがどうしますか』
ハツとかキモみたいな部位だな。
なら試してみよう。
『
『わかりました』
次の瞬間、まな板の上に肉が出現した。
骨を外したせいかスーパーで売っているパック入り鶏肉に近い状態だ。
血抜きまでしっかりやってくれている模様。
それでは最初の料理、開始。
とは言っても調味料は塩、味の素もどき、酢だけ。
だから今日やるのは焼き鳥、塩味だ。
まずは本日の調味料から。
『
『わかりました』
混ぜればアジシオだ。
肉の場合はアジシオではなく普通の塩の方がいいのだろうか。
よく知らないけれど、気にしないことにする。
肉を適当な大きさに切りそろえる。
肉のかけらはほどよい大きさのものが8個で、あとは薄かったり細かったり。
薄かったり細かったりする部分は、丸めたり薄い肉で包んだりして、何とか鉄串に通す。
串を回しながら適当に作ったアジシオをパラパラとふりかける。
この串の端を手で持ったら調理開始だ。
『
『わかりました』
肉がゆっくり色を変えていく。
僕は脂や肉汁が落ちないよう、回したり傾けたりしながら肉を焼く。
うん、美味しそうだ。
色といい形といい焼き鳥にしか見えない。
『加熱、完了しました』
それでは最後の仕上げだ。
『
時間は適当だ。
料理はしない方だったからよく知らない。
『わかりました……完了しました』
これで焼き色も匂いもまさに焼き鳥だ。
こうなると付け合わせも欲しくなる。
ならばこんなのはどうだろう。
でも肉を使ったから、まずこの処理が必要だな。
『
『わかりました』
一瞬で手まできれいになるのは便利でいい。
それではツユクサを調理しよう。
まずは深めの鍋を出してと。
『
『可能です』
『
『わかりました』
湯がいて、水を絞って、アジシオを少し加えてまぜれば手抜きおひたしの完成。
味見をしてみると悪くない味。
厳密にはあとひと味たりない気がするけれど贅沢は言うまい。
おひたしと串から外した焼き鳥、厳密には焼きトカゲを皿に盛り付けたら試食メニュー完成だ。
なお今回は小皿3枚に1人分ずつ、両方を盛り合わせた。
量が少ないのが少し悲しいが、それでもディストピア飯脱出の偉大なる第一歩だ。
これは人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な一歩である。
なんて言うのは言い過ぎだけれども。
強いて言えば主食も欲しい。
ディストピア飯の微妙な甘さがこの味とあわない気がする。
よし、勿体ないけれど澱粉を使うとしよう。
『
その後、澱粉を100g、この皿に出してくれ』
『洗浄の件、わかりました……洗浄完了です。澱粉も提供しました』
『ありがとう』
さて、この澱粉はどういう性質だろう。
小皿をひとつ出して澱粉の粉を入れ、水を加えてみる。
サラサラで練る事は出来ない感じだ。
片栗粉に似た感じかな。
『
『わかりました』
僕は皿の中の水と澱粉を箸で混ぜる。
熱を加えるとすぐに粘りがでて、そして固くなってきた。
これくらいでいいだろう。
『
『わかりました』
味や固さ、食感を確認。
このままだとねっとりしているだけで食べにくい。
味も基本的に無い。
ほんの少しだけ塩を加えた方がいいだろうか。
いや、どうせなら中に何か入れてみよう。
残っている素材は、ドクダミとオオバコか。
ドクダミは少し怖い気がする。
味つけしたオオバコの葉を刻んで入れてみようか。
ならば……
『
『わかりました』
全部アジシオ味では面白くない。
だからオオバコの葉は甘辛く、佃煮っぽく煮てみよう。
醤油が無いからうまくいくかわからないけれど。
刻んだオオバコの葉を深皿に入れ、砂糖とアジシオを溶かした水を入れて加熱、汁がほぼ無くなれば佃煮風の完成だ。
味は……これだけを食べるのでないなら、まあいいかと言う感じ。
このオオバコの葉を、澱粉と水を加熱したネバネバの中に入れて練り練りし、全体に混ざるまでかき混ぜる。
中に具が集中して入っている饅頭方式ではなく、全体に混ざっている草餅方式だ。
あとはこのねっとりしたものを整形して表面を焼き、べたつかないようにすれば完成。
フライパンをイメージして作った鉄鍋の上に、ねっとりした代物を温泉饅頭くらいのボリュームで入れる。
スプーンで入れるがなかなか難しい。
上手く乾燥させ、手で持てる形になってくれるだろうか。
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