第3話 初期説明(2) ~食料の提供可能量と巫女の処遇、名前について
さて、今の回答で少し気になった事がある。
確認してみよう。
「食料や水は充分にありますか?」
「水は制限なく使う事が可能です。食料は1人で食べた場合、60年分となる量が提供可能となっています。後程食べて頂くのと同じ、
茶髪が食料の量について微妙な言い方をした。
1人で食べた場合に60年分か。
もう少し深く突っ込んでみよう。
「その1人で60年分は僕1人だけの分ですか。それともあなた方2人の分も含んでいますか?」
「全てを合わせて1人で60年分となります。完全栄養食パック1人前が65,745食提供可能という意味です」
「配分は遣わされし者の任意です。私達にも1食ずつ与えるのも、私達に一切与えないのも。
ただ与えないを選んだ場合、私達が稼働可能なうちに全ての食料を提供させて、遣わされし者が使用可能にしておくべきでしょう。
茶髪が無表情なままとんでもない事を言った。
2人を餓死させるという選択肢もありのようだ。
ただ『私達が稼働可能』という表現に微妙なひっかかりを感じる。
そこを少し確認しておこう。
「貴方たち
「身体の構成は遣わされし者とほぼ同じ、現在の地球に適応した人体を基本にしています。
違う点の主なものとしては、
○
○ 同じ
○ 生殖機能を停止されている
等です」
「
性的な目的に使用するのも自由だと!
ならどんな
生殖機能を停止されているなら、子供が出来る心配は無い。
アレしてコレしたら、2人の無表情も変わるだろうか。
ならば……
思わず思考、いや妄想が暴走しそうになるのを慌ててくい止める。
考えるべきはそっちではない。
今の言葉に対してはこう聞き返すべきだろう。
「貴方達にこうしたい、ああしたいという個人的な感情は無いんですか?」
「私達は
「ただし身体構造が回復不能なまでに破壊された場合等、減損に対しての補充はありません」
何をしてもかまわないけれど、殺しても補充はない。
ただし感情はあるという事のようだ。
回答が『ない』ではなく『考慮する必要はない』なのだから。
2人とも全くの無表情だから読み取る事は出来ないけれども。
それなら少しでも仲良くしておいた方がいい。
個人的打算というか欲望を抜きとしても。
彼女達がいないと情報を引き出せないし、物も手に入らないのだ。
心証を良くしておいた方が何かと便利だし効率もいいだろう。
彼女達にも食事を与えるなら20年分しか食料は無い。
一生分としては足りない量だ。
何らかの方法で
外はどんな状況になっているのだろう。
食糧となるものを得る事が可能な環境なのだろうか。
また狩りや採取に使用可能な道具なんてのはあるのだろうか。
焦る必要はない。
3人で分けても20年分の食料はあるのだ。
今聞いた事が全て真実ならば。
差し当たって今後の為に必要だと思われる事をしておこう。
巫女と名乗る2人には人格や感情があるらしい事はわかった。
あと、会話でいちいち『遣わされし者』や『
金髪と茶髪を区別する呼称すら今は無い。
だから次はこんな質問をしようと思う。
「ところで僕に対する呼び名、名前はありますか? 『遣わされし者』以外で。
あと君達2人の名前も教えて欲しいです」
「遣わされし者、巫女、それ以外の呼称はありません。必要なら遣わされし者が設定してください」
予想通りの返答だ。
あとやはり言葉が機械的だなと感じる。
ひたすら無表情だし話し方や言葉遣いが2人ともそっくりだし。
いちいちこだわると先に進めなそうだ。
今は話と状況を進めるのが先だろう。
僕自身の名前は今までと同じでいい。
下手に格好いい名前をつけると後で黒歴史になる可能性がある。
フルネームだと長いからハルトでいいだろう。
2人の名前はどうしようか。
どうせならわかりやすく、忘れない名前にした方がいい。
ただ僕が決める前に一応聞いておこう。
「何か名前、自分達がこう呼ばれたいという希望はありますか?」
「遣わされし者が決めて下さい」
やはりそんな返答か。
なら仕方ない。
「それでは僕の事は以降、遣わされし者ではなくハルトと呼んでください。
そしてこちらの君はエリ、こちらの君はマキとこれから呼びます。エリとマキも以降、そうして下さい」
金髪がエリ、茶髪がマキだ。
出典はかつて課金したゲームから。
仕事に忙殺されて、スマホゲーくらいしか癒しがなかったからなあ……
なんて思うと少しばかり遠い目になってしまう。
「わかりました。以降は貴方の事をハルトと。そして私はエリ」
「私はマキと呼称します」
やはり話し方が機械的だし無表情だ。
でもまあ、今は気にしないようにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます