第6章 自発的意思と言動の変化
第29話 心身消耗? ~美味しい食事と、二度目の●●●●
タオル1本と10分程度の時間を犠牲にして何とか復活。
しかしあそこまで色々やった後だ。
何となく顔をあわせ辛い。
しかしもうすぐ昼食だ。
潔く覚悟を決めてリビングへ。
自室の扉を開けた瞬間気がついた。
これは食事の匂いだ。
あのディストピア飯とは違う、本来の食事の。
マキ、どんな物を作ったのだろう。
期待しつつテーブルの上を見てみる。
これは凄い。
焼き肉っぽいもの、スープっぽいもの、サラダっぽいもの、そしてパンに見えるもの。
僕が試作した物よりよっぽど食事っぽい。
どうやって作ったのだろう。
そして味はどうなのだろう。
「凄いですね。全部マキが作ったんですか、これは」
「ハルトがいた時代の料理や調味料を調べてみました。製法はともかく、成分はかなり近い物になっている筈です」
製法はともかく、か。
どうやって作ったのだろう。
でもまずは食べてみよう。
好きなのは肉だが、まずはパンから。
そもそもパンを作るためには小麦粉だの酵母だのが必要な筈だ。
当然ながらそんな物、此処には無い。
食べて見るとパンよりはやや固く、ざらっとした歯ごたえ。
ビスケットとパンの中間くらいだろうか。
味は薄い塩味。
中にしっかり気泡が入っていて、僕が作った団子もどきとはまるで違う。
これなら主食として常食できそうだ。
「凄いな、中にしっかり気泡が出来ている。どんな材料でどうやって作ったんですか、これは?」
「主材料はキビ類の根から作った澱粉です。少量の塩を混ぜお湯で練った後、
なるほど、酵母菌ではなく
「美味しいです。
「良かったです」
なら澱粉の調達も今後は考えないとな。
何か適当な植物が無いか、今度の外出で調べてみよう。
そして次は肉と行きたいが、調べるべきはサラダという気がする。
葉が数種類入っているが、これが目当てでは無い。
かかっているドレッシングっぽいものが気になったからだ。
ツユクサのまだ柔らかい葉をドレッシングにつけて食べてみる。
これは……醤油ドレッシングとしか思えない。
酢はともかく醤油と油はどうやって手に入れたのだろう。
わからないからこれもマキに聞いてみる。
「このドレッシングもよく作りましたね。材料はどうしたんですか?」
「ハルトのいた地域では醤油という調味料が使われていたと情報にありました。ですので今日捕ったトカゲの脂肪分が少ない肉を高温高圧で塩酸で溶かし、水酸化ナトリウムで中和しました。
塩酸と水酸化ナトリウムは食塩水を分解して作れます。材料があれば
油はトカゲの皮下に着いている脂肪分材料に
これは化学式を確認して、
僕は化学は苦手だ。
特に有機系統は何が何だかわからなくて、高校3年でぶん投げた。
まさかこんな所で使うとは思わなかった。
というか……
「マキ、よくそんな方法思いつきましたね」
「検索しました」
今の顔、無表情なようで無表情じゃない。
変化が小さくてわかりにくいがおそらくドヤ顔。
でもここはしっかり褒めておこう。
それだけの事をしたと思うから。
ただ褒める前にお肉も食べてみよう。
これは照り焼き味、もう間違い無い美味しさだ。
「パンも驚きましたけれど、このサラダも肉も美味しいです。僕が試作したものと比べて段違いの出来だと思います。
これならあの提供されたものよりずっと食欲が出ます」
思い切り本音で言わせて貰う。
「ありがとうございます。ただ今回の食事で材料をかなり使ってしまいました。だからあと3回程度が限界です」
「これだけ出来るとわかった事だけでも大きな収穫です。それに外の調査がすすめばもっと採取出来る物が増えると思います」
「なら御願いがあるのですが、食べた後にいいですか?」
何だろう。
わからないけれど、まあいいだろう。
「わかりました。昼は予定が無いので大丈夫です」
それにしてもマキ、一気に雰囲気が変わった気がする。
言葉数も多いし、会話もちゃんと会話になっているし、表情もある。
エリとの風呂での会話がマキの態度にまで影響しているのだろうか。
そう考えるとかなり恥ずかしいというか、何と言うか……
そんな事を思いながら久しぶりに、いやこの身体ではじめて食べた食事らしい食事を食べ終わる。
「ご馳走様でした」
「それは……私達も言った方がいいですか?」
そう言えば此処へ来てから今まで、ご馳走様なんて言った事は無かったなと気付く。
ディストピア飯だったからかもしれない。
「つい何となく出てしまいました。久しぶりに美味しい、食べた気がすると感じたからだと思います。
そうですね、これからは食事が終わった後には言うことにしましょうか」
「わかりました」
「わかりました」
これでいい。
「あとマキ、夕食も御願いしていいですか? 材料が足りればですけれど」
「わかりました。3食分は大丈夫です。それ以上の場合、肉が足りなくなります」
『
『まもなく雨が降ります。この雨は明け方までには止んで、以降は晴れる予報です』
なら問題無い。
「なら明日、また食材採取を兼ねて探検に行くことにしましょう。その時はまたエリに食材採取を頼む事になります。宜しくお願いします」
「わかりました」
よしよし、これでいい。
「それでは食器を片付けます」
ディストピア飯ではない場合、片付け作業が必要。
しかし
「それではハルト、私の御願い、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
どんな御願いをされるのだろう。
どちらにせよ断るという選択肢は無いのだけれども。
「先程ハルトは、エリと一緒にお風呂に入りました。
私も歩いた上食事を作ったので疲れています。だからエリと同様、ハルトとお風呂に入りたいです」
まさかそう来たか!!!!!
◇◇◇
約1時間後。
色々な意味でぐったりした僕は自室のベッドで倒れていた。
エリと同様という事で、最後に抱き合うところまでやったのだ。
「今日は雨が降るそうなので、午後の外出はなしにしましょう。夕食まで自由時間にします」
何とかそう言って自室へ辿り着き、処理した後が現在の状態だ。
この状況だと2人に手を出してしまう日が近いかもしれない。
僕の理性も童貞力もそろそろ限界だ。
とりあえず今は寝て回復しよう。
色々燃え尽きて真っ白になったから。
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