第34話 水場到着 ~澱粉原料も確保成功

 エリやマキと、所々で罠をしかけつつゆっくり前進。

 エリが罠6個目を仕掛けようとしたところでもう一度現在地を確認。


『書き込みをした地図に現在地までのルートと時間を書いて、出してくれ』


『わかりました』


 ある物に書き加えて出す程度は僕が依頼しても大丈夫な模様だ。

 現在地までの工程と時間までが記された地図が僕の手の上に出る。


 見ると現在地から目的の谷間まで20mも無い。

 ただし僕がいまいるのは稜線というか尾根っぽい場所。

 目的の谷とは3mくらい高さの差がある。


 谷間側は少々植物相が違うようだ。

 今まで生えていたのはよくある感じの常緑広葉樹だった。

 しかし左側の谷に生えているのはシダっぽい。

 それも小さな樹木位ありそうな巨大シダだ。


 耳をすましてみるけれど大型の動物がいそうな音は聞こえないし気配もない。

 風で草木の葉が音をたてたりはしているし、小動物のガサガサという気配、そして鳥の鳴き声なんてのは聞こえたりするけれど。


「向こうに生えている木生シダは幹部分を刻んで水に晒すと澱粉が取れるようです。収納しますか」


 罠を仕掛け終わったエリが聞いてきた。

 澱粉が取れる植物か。

 ある程度確実に取れるなら主食化出来る。

 こんな樹木みたいなシダからならさぞかし大量に取れるだろう。


「お願いします。まずはお試しで1本でいいですから」


「わかりました」


 このシダから大量に澱粉が取れてそれが使い物になるのなら、主食問題はそれだけで解決だ。

 どうやらこの先、谷側には結構生えているようだから。

 ご飯が欲しいとか贅沢は言うまい。

 ディストピア飯でない事を感謝するべきだろう。


 さて、それはそれとして、ここからどう進もうか。

 地図と地形を見てこの先の移動を判断する。

 でもその前に確認しておこう。


『僕から100m以内に鹿や猪等、狩猟対象になりそうな大型の動物はいるか?』


『把握していない動物等を通知可能なのは50m以内のみです。現在、50m以内には体重5kg以上の哺乳類はいません』


 つまり獲物はいないと。

 いや待てよ。


『50m以内に大型の爬虫類や両生類、あるいはそれ以外の動物は?』


『2kg程度までの爬虫類はそこここに生息しています。ただし現在時危険と判断されるものはいません。また体重1kg以上で30m以内まで接近した3匹についてはマキが処理して収納しています』


 僕が気付かないうちにしっかり確保していた訳か。

 ありがたい反面申し訳ないというか情けない。

 先頭を歩いている僕は全然気づけていないのだから。


 ただ今は情けながっていても仕方ない。

 取り敢えずルートを考えないと。


「採取終わりました」


 エリの言葉に僕は頷く。


「ありがとう。それでは先に進みましょう。目的地はこの左側の谷ですが、ここから直接降りるのは大変そうです。今の獣道をもう少し先へ進んで、左側に入りやすそうな場所が無いか見てみます」


「わかりました」

「わかりました」


 再び前進。

 こういう場所は苦手だが大分慣れて来た。

 ExtエクステンディッドUQユビキタスのおかげで虫や不快害虫には直接遭わずに済むし。


 足元に注意しつつ少し進むと道が下り始めた。

 そしてすぐ、左後ろ側に獣道の分岐がある。

 これだな。


「この獣道に入ってみます」


「わかりました」

「わかりました」


 足元が濡れていて滑りやすい。

 ゆっくり確実に歩いていく。

 下草はシダ類がほとんどとなった。

 そして。


 沢っぽい場所に出た。

 ちょろちょろという程度の流れだが水も流れている。


「流れの上方向に行ってみます」


 沢というか水の流れの中の方が草が無い分歩きやすい。

 滑らない様少しへっぴり腰になりつつ歩いて10mも行ったところが終点だった。

 水が湧いているらしい小さな池がある。

 正面は岩で左右は2m程度の崖という地形だ。


「ここですね、地図で見た目的地は。確かに水場になっていますね」


「はい。足跡や食み跡もあるので、動物が水場として使っているのも間違いないと思います」


 確かにそんな感じだ。


『今は何時だ?』


『9時30分です』


 ほぼ1時間経過というところか。


「罠を仕掛けようか」


「そうですね。此処もくくり罠がいいと思います」


 そんな訳で、僕とエリ・マキ組とで1箇所ずつ罠を仕掛ける。


『この地図に今歩いたルートを追記してくれ』


 世界樹ユグドラシルが追記してくれた地図を確認して帰りのコースを考える。

 先程歩いてきた獣道とは別に北側に尾根っぽい地形がある。

 そこを辿れば恩恵の地の周囲にある草原に行けそうだ。


 今まで来た道はあちこちに罠を仕掛けた。

 だからあまり近づきたくない。

 罠に自分がひっかかるからというより、あまり歩いた跡を残して警戒されたくないという意味だ。


「エリ、マキ、帰りはこの沢に入った場所まで行って、来た時と反対側に続いていた獣道を辿り、そこから恩恵の地に戻る道を探そうと思います。それでいいですか?」


「わかりました」


「わかりました。おそらく大丈夫だと思います」


 マキが微妙な返答をした。

 どういう意味だろう。


「何か危険な事がありそうですか?」


「北東側、ExtエクステンディッドUQユビキタスで確認出来るぎりぎりの場所にサルらしい動物がいるようです」


 サルとついに遭遇か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る