第7章 狩猟生活の確立?
第33話 罠猟開始(1) ~まずはくくり罠から~
翌日の朝食はやや固めのクレープみたいなものにおかずを包んだものだった。
おかずの中身は肉と葉っぱを炒めたもの、肉と根っこのキンピラ、根っこと葉っぱのサラダの3種類。
「昨日とは味付けも形も変えてくるのが凄いです。今日もやっぱり美味しいですし」
「でもこれで肉と澱粉が無くなりました」
「その分は今日、これから行って探してきましょう。
今日は8時30分になったら出ようと思います。装備は昨日と同じです」
「わかりました」
「わかりました」
朝食後、個室へ戻って着替える。
別に昨日風呂に一緒に入ったのだから今更ではある。
しかし風呂で見えるのと着替えを見るのとは別の衝撃なのだ。
自室へ待避し装備一式を出す。
『
『わかりました。なお連絡があります』
連絡? 何だろう。
出てきた着替えセット一式を見ながら思う。
『
『ハルトが
ですので以降は『
なるほど。という事は。
『つまりこんな感じで呼びかけても通じる、そういう事か?』
『その通りです』
大丈夫だろうか。
思考ダダ漏れ、もしくは思考と呼びかけがごっちゃになるという可能性は無いだろうか。
でも
そう考えると思考が漏れる方はあまり気にしなくていい気がする。
別に
魔法こと
その程度に考えることとしよう。
『それ以外に違いは無いか』
『その通りです』
僕も物資の提供をお願いできれば楽だと思ったのだけれども、そういう事は無いようだ。
時間通りに3人で部屋を出る。
まずは草地を横切って昨日出てきた所へ。
『昨日通った場所を歩きやすいように、できるだけ凹凸が無いように均して、更に均した地面を固めてくれ』
『わかりました。ハルトの前方5mを目安に
ただし刈り払いが行われていない場所を歩く場合で、歩くコースが不明確な場合は処理を自動的に行えません。その場合はどう進むかを別途指示するか、刈り払いだけに留めるかを選んで下さい』
『わかった』
これで昨日行ったヌタ場までは歩きやすくなる筈だ。
歩いてみると案の定、昨日とは大違い。
ただし周囲が森で何かが居そうという雰囲気はやはり好きになれない。
近くでガサガサ音がする度にどきっとする。
木の枝から糸を延ばして虫がぶら下がっているのなんて見ると、勘弁してくれという気分になる。
それでも思った以上にあっさり昨日のヌタ場が見える場所へと到着。
『道つくりや刈り払いを停止してくれ。あと今は何時だ?』
『8時46分です』
昨日は此処から草地に出るまで30分近くかかった。
今日はリビングから此処まで16分。
やはり歩きやすい道の効果は大きい模様だ。
なお道を作るのを止めたのはやりたい事があるからだ。
「エリ、マキ、ここにイノシシやシカを捕まえる為の罠を仕掛けておこうと思うんです。
そこでエリ、イノシシやシカ用くくり罠の完成品、概ね直径20cmのものを
そう、やりたい事とは罠の設置。
猪や鹿あたりが1頭でも獲れれば、当分の間は肉に困らない。
「わかりました。手伝いましょうか?」
エリからごく自然にそんな声がかかった。
「いや、最初だから自分でやってみたい」
「わかりました。それではどうぞ」
ワイヤーつき本体、塩ビの筒、踏み板等がセットになったものをエリから受け取る。
さて、それでは木が生えていて、足跡が重なっている場所を……此処かな。
「私も罠を仕掛けてみていいですか」
エリがそんな事を聞いてきた。
「勿論です。御願いします」
「わかりました」
エリも積極的になったなと思う。
これはきっといい事なのだろうと思いつつ、筒に重さ設定用の爪楊枝を6本長さを揃えて刺して、目的の場所の土の上に置く。
『この筒がすっぽり埋まる程度に穴を掘ってくれ』
『わかりました』
穴に仕掛けを埋めて、ワイヤーを近くの木にくくりつけ、土と落ち葉でカムフラージュすれば完成だ。
これを踏んでくれればいいのだけれど、最初からそう上手くはいかないかな。
まあ沢山仕掛けてある程度日数が経てば、1箇所くらいは引っかかるだろう。
とどめ刺しや回収、解体を全て
気軽に行こう。
立ち上がって周囲を確認。
カムフラージュは上手く出来ていると思う。
なおエリは僕より3メートルほど先に仕掛けていた。
現在カムフラージュ作業中。
もうすぐ出来そうだ。
『手を綺麗にしてくれ』
『わかりました』
手袋があっという間にきれいになる。
『昨日エリと行程を考えた地図を出してくれ』
『わかりました』
地形と地図を見比べる。
これから進むべき方向は、エリがしかけた獣道をそのまま辿ればいいようだ。
ただし、ここで残念な事を僕から言わなければならない。
「鹿や猪に警戒されない為には、道を作らないで歩いた方がいいでしょう。ですからここから先は道を作ったり、
何か意見はあるでしょうか?」
本当は出来るだけ幅広の安全な道を作って歩きたい。
その方が少なくとも僕の精神安定上いい。
しかし罠に獲物がかからないのは悲しすぎる。
「私もその方がいいと思います」
エリが肯定してくれた。
思います、か。
これも今までに無かった表現だなと思う。
マキも頷いて同意を示してくれた。
これもやっぱり今までに無かったなと思う。
残念ながら道を切り開く作業、停止だ。
「わかりました。ありがとう。それではここからは獣道をそのまま進みます」
でもこのくらいはいいだろう。
『僕の進む方向に直接ひっかかりそうな虫や爬虫類や不快害虫等、及びそれらの生成した糸とかは凍らせたりした上で排除してくれ』
『わかりました』
虫は苦手だ、生理的に。
芋虫なんて目の前に突如出てきたら心停止してしまう
なんてのは言い過ぎかもしれないけれど、これが僕なりの最大の妥協点。
「この道は帰りも通りますか」
エリの質問に、頭の中で地図を確認する。
「かなり大回りになっていますから、帰りは直接帰れるルートを考えるつもりです」
「なら罠を見えにくい場所に沢山仕掛けても大丈夫ですね」
エリ、やる気満々だ。
「ええ。むしろ御願いします」
「わかりました」
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