第11話 自由時間 ~1日目の終わり
つまりエリとマキは『知識もあるし、思考能力もあるけれど、何をしたらいいのか判断出来ない状態』という訳か。
だから指示が無いと、何もしない状態のままとなる。
ならば『何もしない状態』のままにならないよう、時間つぶしの道具を与えるなんてのはどうだろう。
根本的解決ではない気もする。
でもそういった道具があり、それを使用して時間つぶしが出来る。
そういう選択肢が存在する事が何かに繋がる可能性はある。
ならばまず、こういうのはどうだろう。
『
『そのものを取り寄せるのは無理ですが、当時のデータをもとに複製した物で良ければ可能です。ただしオノデラ・ハルトの生存していた年代に閲覧可能であった物に限ります』
僕がかつていた時代より未来の本は取り寄せ出来ないという事か。
余分な知識を与えない為だろうか。
でも今はそれで構わない。
それではエリとマキに頼むとしよう。
「エリ、申し訳ないけれどまた取り寄せをお願いします。僕がいた時代の本の複製です。○○○○……」
有名どころのラノベ、漫画、一般小説を思いつくままに30冊ほど。
更に有名どころの大百科事典、外を探検する際の衣装や靴を注文するのに参考になりそうなアウトドアグッズの本も注文する。
「……以上です。あとこれらが全部入る本棚もお願いします」
「わかりました。それでは提供を受け次第、本棚に入れていくという形で宜しいでしょうか」
「それでお願いします。あと先ほどお願いした地図や図鑑も同じように本棚に入れておいてください」
「わかりました」
エリを指定して話し掛けた場合、回答はエリだけから来るようだ。
エリとマキが交互に回答するのではなく。
これはエリが僕からの話しかけに、回答せよという指示を感じたという事なのだろう。
ならば今後はお願いをする時は、出来るだけどちらかを指定してみよう。
そうすれば
「あと本棚に置かれた本は、エリもマキも僕に断らず、自由に読んで下さい」
「わかりました」
「わかりました」
本を取り寄せたのはエリやマキに読んでもらう為。
ここで僕は『何もしない』以外の選択肢として、『本を読む・読んでいい』という指示をした訳だ。
これが意味のある行動なのか確信はないけれど。
さて、ひととおりやる事はやったかなと思う。
しかしまだ夕食には早い。
だから少し考えを整理したり休憩したりするとしよう。
『
『16時30分です』
夕食は19時くらいでいいだろう。
『
『可能です。今の情報通信のように行う事、近くで任意の音や言葉を発して知らせる事、巫女に通知させる事が可能です。どうしますか』
なるほど、それならば。
『
『わかりました』
これで時間がくればわかる。
それではエリとマキに言っておこう。
「エリ、マキ。19時になったら夕食にしましょう。それまで僕は部屋で休んでいます。エリとマキも自由にしていてください」
「わかりました」
「わかりました」
それでは休憩だ。
僕は自分の部屋へ。
6畳くらいの空間に、シングルサイズのベッドと事務机があるだけ。
窓が無いので圧迫感を感じる。
閉所恐怖症には向かないな。
そう思いつつ、ベッドに横たわる。
エリとマキはどういう存在なのだろう。
それとも実際は意志のない、単なる
確かに端末のように感じる事が今日は多かった。
説明を2人で交互にしたり、受け答えや口調が2人ともまったく同じだったり。
しかしそうでない気もするのだ。
指示が無いと動かないけれど、それなりに自分達で物事を考えているような気が。
僕がそう思いたいだけかもしれないけれど。
そんな事を考えていたら唐突に2人の裸を思い出してしまった。
2人の、それぞれのおっぱいなんてのも。
しまった、見栄を張らずに素直に触ったり揉んだり吸ったりしておけばよかった。
そうしても、それ以上の事をしてもいいと言っていたのだから。
あ、いかん、悶々としてきた。
これは……自家発電していくか。
しかしティッシュが無いな、そう思って気付く。
そう言えば洗濯が必要ない世界なのだ。
タオルで拭いて、そしてタオルを
なら……
◇◇◇
その後アラームに似た音で起こされて夕食。
昼食と全く同じディストピア飯を食べた後、風呂に入る。
蛇口をひねればカランやシャワーからお湯が出る。
浴槽は空だけれどお湯を入れるのは簡単。
『
『わかりました』
これで指定した温度のお湯が浴槽に入ってくれる。
さっと身体を洗い、浴槽に浸かる。
身体を思い切り伸ばすと眠くなってきた。
それほど動いていないのだが、精神的に結構疲れたようだ。
無理もない。
何せ記憶と全く違う場所で、違う生活が始まったのだ。
何もわからない事ばかり。
ただ、ある程度の衣食住が保証されているのはありがたい。
食の方はディストピア飯だし、20年という期限付きだけれど。
本格的に眠くなってきた。
これはさっさと風呂から上がった方がいいだろう。
浴槽から出て、洗面所兼脱衣所でバスタオルで拭いて、服を着てリビングへ。
見ると本棚に本が大分増えていた。
寝る前に読めたら読むか。
少し考えて、『当拠点付近の動植物』と背表紙にある図鑑っぽい本と、僕の世界の複製本である米軍系サバイバルの本を手に取る。
「エリ、マキ、それじゃ僕は寝ます。
明日は8時にご飯にしましょう。それまでは自由にしていてください。それぞれの個室にいてもいいし、寝てもいいです。風呂場も洗面所も自由に使っていいですから。本も良ければ自由に読んでください。
それじゃおやすみなさい」
こう言っておけば、言った範囲の行動をしていいという指示としてとってくれるだろう。
そう期待して。
「わかりました。おやすみなさい」
「わかりました。おやすみなさい」
2人の声に送られ、僕は自分の部屋へ。
机に本を置いたがとにかく眠い。
これは本を読む余裕は無いかな。
そう思いつつもサイズが小さめのサバイバルの本を持ってベッドへ。
あ、駄目だ。
あっという間に睡魔に襲われる。
『
『了解しました』
よし、これで寝ていいだろう……
◇◇◇
目を開けて違和感、いつもの部屋じゃない。
数秒経って状況を思い出してきた。
そうだ、此処は
不意にエリとマキの全裸を思い出してしまった。
いかん、このままでは出ていけない。
いやそれ以前に今は何時なのだろう。
『
『4時35分です』
早く寝過ぎたせいで早く目が覚めたようだ。
なら問題ない。
しかしこの隣や、隣の隣の部屋でエリやマキが寝ているのか。
そう思うとむらっとしてしまう。
待てよ、2人はちゃんと寝ているだろうか。
昨日ああ言ったから大丈夫だと思うけれど。
わからない時は聞いてみるに限る。
『
『その通りです。昨日は午後8時ちょうどにそれぞれの個室で就寝しました。起こしますか?』
『
『わかりました。それなら本日6時30分に起床予定です』
取り敢えず寝ているようで一安心。
しかし寝ていると知ると、またむらむらしてくる訳で……
我ながら性欲がサル化していると思う。
身体が若返ったせいだろうか。
取り敢えず解消してから起きるとしよう。
と、言う事で……
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