エピローグ もしくは此処がプロローグ
第40話 地上移住 ~第3段階の始動
エリとマキと結ばれて、そして1年が経過した。
今では海までの道も開通して、しかも自転車で行けるようになった。
だから時々海鮮なんてのもメニューで出てくる。
米はまだ無いけれど、マキがクスクスという食べ物を検索で発見。
澱粉を米粒くらいに練って丸めたもので、割と御飯っぽい。
これを主食に刺身を食べると何となく和風という感じがして好きだ。
食料はほぼ自給出来るようになった。
澱粉は月に1回、あの巨大シダを採取すれば大丈夫。
野菜になる葉や茎、根っこも生えている場所をひととおり把握。
更に果物に類するものも結構採れる事が判明。
あちこちに罠をしかけたので肉類も定期的に確保出来る。
3人なら充分以上だ。
更に海で魚や貝を捕ったりなんて事もしているし。
3人しかいないけれど、それでも満ち足りた生活。
このままのんびり暮らしていくのかな。
そう思ったのだけれど……
◇◇◇
何かを感じて目が覚める。
一見いつもの部屋だ。
しかし何かが違う。
何かというか全てが違っているような気がする。
気配で気付く。
エリとマキも目が覚めたようだ。
「外です! 外にいます!」
マキのこんなに興奮した様子を見るのは初めてだ。
エリなら時々あるのだけれど。
しかし外とはどういう意味だろう。
どう見ても家の、寝室の中にいるのだけれども。
『エリの言うとおりです。此処は本当の地球上となります』
「本当です! 外です! 来る事が出来たです……」
エリも何やらわかっているようだ。
僕だけがわかっていない。
何が起きて、エリとマキがどうしてこんなに驚いているのか。
『今までハルト達がいたのは地球上を模した仮想世界です。条件が揃いましたので第一陣定住者として、地球上へと生活拠点を配置し、送り込ませて頂きました』
今までの世界が仮想世界だった?
言われてみれば確かに何もないところに部屋が出来たり、風呂等の改装があっさり出来たり思い当たる節がある事はある。
しかしそれなら、今までの実験と称するあの生活は何だったのだろう。
エリとマキの様子を見た限りでは、どうにも悪い事が起きているという感じではない。
むしろ喜んでいるというか感激しているというか、よくわからないけれどそんな感じだ。
『これまでと出来るだけ環境は変わらないような場所を移住先として選定したつもりです。それでも今までと違う点が幾つもあります。
ですので着替えてリビングに集まっていただけますでしょうか。説明をさせていただきます』
確かに今の格好は説明向きではない。
場所が寝室のベッド上で、3人とも全裸だ。
相手が
まあ今更なのだけれども。
「ハルト、早く行きましょう」
エリは真っ先に服を着始めている。
「地球は逃げませんよ」
そう言いつつマキもベッドから出た。
思わず身体に視線が行きそうになるのを堪えて、僕もベッドの足側からよいしょと床へと降りる。
真ん中に寝ているとベッドから出るのも面倒なのだが、まあこれはいつもの事だから置いておいてと。
『室内用の服一式を出してくれ』
『わかりました、どうぞ』
習慣的に
服が出てから気がついた。
ここは今までの場所と環境が違う。
同じよう
しかし出たのは今までの服とほぼ同じもののように見える。
しかし手に取ってみると違った。
色と形は同じだが明らかに新品だ。
手触りや使用感等、全てでそう感じる。
しかしその辺の追及は後だ。
服があるならまずは着て、そしてリビングへ行こう。
ささっといつも通りに服を着て、エリとマキと一緒に部屋を出る。
リビングの広さはほぼ同じだ。
扉の場所は多分同じだし、壁も天井も床も謎素材で白色のところも同じ。
家具もほとんどは同じ色、同じ素材っぽい感じ。
しかし明らかに別物だ。
明らかな違いは窓があること。
あとは壁際に今までに無かった43型くらいのテレビっぽい物が置かれていること。
テーブル上にキーボードとマウスらしきものがあること。
窓の外は明るく、朝っぽい感じ。
刈り込まれた草原の向こう側に森が見える。
部屋の造りから考えると、窓があるのは以前は南側だった方向だ。
なら草原の向こうに森が見えて、その先に山が見えないのは正しい。
本当に南側なのかは確かめないとわからないけれど。
なんとはなしにテーブルのいつもの場所に腰掛ける。
プチン、わざとらしい音をたててテレビ画面が明るくなった。
20代後半くらいのアナウンサー風女性が画面上に現れる。
『
どうやらこのテレビ越しに説明をするようだ。
『まずは注意事項です。エリとマキ、元
具体的には元巫女同士の共通意思伝達の全て、
可能な意思伝達は
これはエリとマキの
それって巫女では無く普通の人間になったという事だろうか。
ただ説明はまだ続くようだ。
それに気になった事があれば後で直接
僕と
服を出した時に
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