第9話 初期確認(3) ~屋外の植物、気温、湿度等
『提供可能な範囲についてはその都度質問してください。例にあげられた自動車やオートバイ、その他動力付きの移動手段となる機械類は提供不可となっています』
動力付きは駄目か、それならば。
『
『自転車は可能です』
乗り物系は動力付きかどうかで判断が別れるようだ。
あと乗り物ではないがこういうのはどうだろう。
『
『ほぼ可能です。ただし内容によっては提供できないものも存在します。個別に問い合わせてください』
内容によってか。
駄目な内容とはどういうものだろう。
調べてみたい気がするが、まずは実用面の方から聞いておこう。
『
『動植物図鑑については提供可能です。巫女に依頼して下さい。
なお地図については現在地から1,000km以内のものについてのみ、現在は提供可能となっています。必要があればこれも巫女に依頼してください』
これな結構な収穫だ。
動植物図鑑があれば食料採取の参考になるし、外出時の対処もしやすくなる。
地図があれば外出計画だって立てやすい。
右へ見える海への距離もわかる。
此処を出て部屋に戻ったら、エリかマキに頼んでおこう。
右側、視界の端で何か動いた。
来たな、僕は振り向く。
「双眼鏡です。倍率25倍、口径120ミリとなります」
ごつい三脚にビール中瓶2本分くらいの筒が2本ついたような大型の双眼鏡が置かれていた。
そう、まさにこういう物だ。
「ありがとう」
早速使ってみる。
まずは鳥がいるあたり、空と森の境あたりにあわせて、はっきり見えるように調整して……
はっきり見えるようになった。
ただ葉の形とかは無理だ。
それでも鳥の形や色は概ねわかる。
ムクドリに似た感じの鳥だ。
あれなら食べられるだろうか。
残酷と言われるかもしれないが、最初に思った事がそれだった。
ディストピア飯はやはり早期に脱却したい。
勿論食べるものが無い状態よりはよっぽど有難いのだけれども。
他に動物はいないか。
適当に見てみるが見つからない。
おそらく森のもっと中にいるのだろう。
海の方は遠すぎて風景がぼやけ、望遠鏡でもよく見えない。
ならばという事で手前の草原を望遠鏡で見てみる。
不自然な位に高さが揃った草原だ。
草の種類は何種類かあるようだが、皆全く同じ高さになっている。
地面が見えないので草の高さそのものはわからない。
これは下に行って確認してみた方が良さそうだ。
望遠鏡をしまおうか。
そう思って、思いついてその前にエリとマキに聞いてみる。
「何ならこの望遠鏡で外を見てみますか?」
「私達は大丈夫です」
何となくそんな反応だろうとは思っていた。
でもまあいい。
「わかりました」
『
『わかりました』
望遠鏡が消え失せる。
ごつくて重そうだったので、持ち歩かなくて済むのはありがたい。
「この部屋で何か説明その他する事はありますか?」
「ありません。この部屋は見た通り、高所から外部を観測する為だけに設定されています」
「わかりました。ありがとう。
それでは下に降りて、地上の近い部分をよく見てみたいと思います」
階段を降りる。
やはり途中で違和感を覚えた。
きっとここで空間が短絡なり何なりされているのだろう。
そんな事を思いつつ1階へ。
そのまま窓際へ行き外を観察。
草の種類はよくわからない。
地面から高さ10cm程度でばっさりと切りそろえられているからだ。
「この草の高さが同じなのは、何か刈り揃えている等あるんですか?」
「その通りです。周囲の見通しを良くする為、
周囲の警戒の為とさっき聞いた。
ならば何から警戒しているのか。
人間とか、それに近い危険な何かがいるとか。
「何かが近づいた際、攻撃したりして排除する事はありますか」
防衛系の可能性について聞いてみる。
「それはありません。管理するのはあくまで一定の距離にある草だけです。外にいる動物は一切管理をしていません」
動物、と言った。
ならその動物には人間は含まれているのだろうか。
「この施設直近で生活している人間はいるのでしょうか?」
「この施設から30km圏内で人間の反応は、現時点ではハルトとエリとマキ、合計3名だけです。
草を刈っているのはあくまで外に出る際、野生動物等に対する警戒等がしやすくするのが主目的です」
なるほど。
とりあえずそういう事にしておこう。
あと外についてもう少し確認。
『
『現在時25℃、湿度74%。なお冬至を12月22日とした場合の太陽年では、本日は5月13日相当となります、時間は16時15分です』
つまり僕がいた頃の日本では5月13日頃だという事か。
そしてまもなく夕刻。
それで25℃なら暖かいというか暑い気候だろう。
外に出る服装を作るにはその辺も考慮する必要がある。
まあ作るなら動植物について調べてからだけれども。
よし、部屋に戻ろう。
部屋に戻って図鑑を出して貰って、この環境の勉強だ。
「この部屋について、何かエリやマキから説明した方がいい事ってありますか?」
出る前に一応聞いておく。
「ありません」
「わかりました。それでは向こうの部屋に戻ります」
扉を開け、僕達のリビングへと戻る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます