第7話

レイルは自室のベットで眠っていた。

そこにはベットに腰掛けレイルを優しく撫でるミザリーが居た。



「レイル…ごめんなさい。

もう行かなければならないの…本当ならもっと成長を見守って居たかったのだけれど、

せめてこれだけは貴方に…」



そう言って取り出したのはミザリーがいつも身に付けていたブレスレットだった。

それを眠っているレイルの腕に取り付けた。



「きっとこれが、貴方を守り導いてくれるわ。

辛い事もあるでしょうが元気でいてね…レイル。」



そう言い残しミザリーは部屋から出ていく。

この日ミザリーが失踪した。


ミザリーが消えた後レイルは目を覚ました。


「うぅん………母上?

母上どこに行ったのですか?」


レイルは周りを見渡しミザリーを探すがそこには誰も居ない…

ふと、右腕に違和感を感じ見てみると、

そこには見覚えのあるブレスレットがあった。



「これは…母上のブレスレット?

…なぜ、僕の腕に??」


レイルは困惑した。

何故ならこのブレスレットは誰にも触らせずミザリーが肌身離さず付けていたものだったからだ。


その時、廊下の方からグランの声が聞こえて来た。


「ミザリーは何処へ行った!まさか誘拐されたのではあるまいな!?」


それを聞いたレイルは取り乱し


(母上が誘拐っ!?そんなっ!さっきまで僕と居たのに!)


ふと自分の腕にあるブレスレットに気がつく。


(いや、母上が誘拐されるはずがない!

きっと自分から出て行ったんだ!でなければ大切にしていたブレスレットを手放すはずがない!)


レイルはすぐにミザリーが出て行ったと悟りそしてショックを受けた。


(母上…なぜ僕も連れて行ってはくれなかったのですか?僕がいては迷惑だったのでしょうか…?

何故なのですかっ…!?)

 



…その日からレイルは自室に籠りがちになった。



数日ほどレイルが部屋に籠っていると、部屋の扉が急にドンドンドンッ!と激しく響いた。



何事だろう?と思って返事をし扉を開けると、レイルの兄ロイドとエルが居た。


レイルは困惑しながら


「兄上どうなされたのですか?何か御用ですか?」


と尋ねると

ロイドがニヤニヤしながらレイルに



「よぉ〜出来損ないのレイル!元気にしてたか?」


そしてエルが蔑んだ目で



「僕達が魔法の使えないレイルに魔法を教えてあげようと思ってね!…一緒に修行しようじゃないか」



レイルは額に汗をかき


「い、いえ、僕は遠慮しておきます。兄上達の修行の邪魔にしかなりませんので……」


と断りを入れたのだが、ロイドが鋭い目つきで


「あぁっ?お前俺たちの好意を無駄にしようってのか?ふざけんじゃねぇぞっ?

良いから広場に来いっ!軽く揉んでやる…」



レイルは半ば強引に連れて行かれたのであった。



……………

………

……


「おいっ!レイルこんなもんか!まだまだこれからだろう?ハッハッハッ!」



屋敷にある広い中庭の真ん中、そこにはボロボロになりながら横たわるレイルの姿があった。


「うぅっ……すみません兄上。もう立てません。許してください。」


レイルの息も絶え絶えの声を聞きながらエルが



「レイルゥ〜ダメだよー?こんなのでへばっちゃ。

ちゃんと落ちこぼれのレイルに合わせて初級魔法しか使ってないんだから。はい!立って!しっかり僕らの実験台になってね!」



「うぅ…ゆ、ゆるして………」



許しを乞いながら気絶してしまったレイルを見て


「チッ!気絶したか。……まぁ良い、これからは良い的当てになってもらうぜ!

じゃあな、出来損ない」



「ハハッ。またね、レイル。

次もいっぱい遊ぼうね!次は何の魔法の練習しようか兄さん!」


そう言い残し2人は屋敷に戻って行ったのだった。

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